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ちしきの金曜日
 
口の中をマッサージしてくれる歯医者さん


 

最近の歯医者さんでは「口の中」や「歯茎」をマッサージしてくれるところがあるという。しかも、凄く気持良いらしい。

僕はこういう気持良さそうな療法には、目がない。さっそく行って体験することにした。

斎藤 充博



小さな歯医者さん

この「歯茎のマッサージ」、日本でやるようになったのはほんのここ2年くらい前だそうだ。まだまだやっているとろは少ないらしい。

今回は東京都の東大和市にある奈良橋歯科医院さんにお邪魔して、マッサージの体験をさせてもらった。

理事長の原先生
ipadを巧みに操りマッサージの説明をしてくれた

ちなみに、原先生は面白い方で「自分で自分の虫歯の治療をする様子」を動画で撮影してyoutubeにアップしていたりする。なんだかコントの設定みたいだが、リアルに歯医者さんがやっているのがすごい。



普通、歯医者さんは自分で自分の治療をするなんてことはまずないそうだ。そしてその様子撮影してyoutubeに上げたりする人は多分、原先生だけだと思う。貴重な動画である(そして単純に面白い)。

先生は気さくに「面白いと思ってyoutubeに上げたんだよねー」「再生回数これ結構多いでしょ!」なんて、楽しげに話してくれる。この先生、ちょっとだけこっち寄り(デイリーポータル寄り)の人なのかもしれない。歯医者さんなのに、親しみが湧いてくる(今までの人生で歯医者さんに親しみを感じたことなんかない)。

でも、最後にポツリと「でも、こうして自分自身でやることで、患者さんの気持や苦痛にに近づけるんですよ」なんて言ってくれたのが印象的だった。そうか、決して奇をてらってこういうことをやっているわけではないのだ。

 

これから気持よくなるなんて信じられない

さて、マッサージに入ってゆく。「マッサージする時の椅子は普通に治療する椅子よりもグレードの高いやつを使っているんですよ、リラックスしてもらえるように」とのことだ。

たしかに椅子はクッションが効いていて座りやすい。


左が通常の治療用。右がマッサージ用

しかし、正直に言おう。どれだけ良い椅子に座っても、「これから気持いいマッサージが始めるよ」なんて言われてもまだまだリラックスできない。だって視界が全部歯医者のそれなのだ(あたりまえだけれど)。


椅子に座るともう条件反射的に不安な気持になってくる

実際のマッサージは、歯科衛生士さんがやってくれます。それにしても僕の警戒した表情

歯磨きの時点で陥落

歯茎のマッサージの前に、歯科衛生士さんによる歯磨きが行われる。


口を開けると「わ!これはちょっと凄い!」と衛生士さん
「先生、歯が凄くきれいですよ!」「どれどれ。おおー、これは良い歯ですね!」

僕の歯はこの年にしては虫歯が少なくて良い歯らしい。歯茎も健康そのもの、というお墨付きが出た。こんな普段意識していないところをベタ褒めされるとなんだか嬉しくなってしまう。

そして歯科衛生士さんのブラッシングはソフトタッチでなんだか少しこそばゆいのであった。口内を褒められながら、なんだか感触はこそばゆい。これは僕が今まで知らなかった新しい種類の愉しみ、という気がする。この時点でけっこう気持いい。

椅子に座った時の警戒心はどこに行った。すっかり陥落してしまっている僕がそこにいた。しかし、マッサージが始まるのはまだまだこれからなのであった。


シャカシャカシャカ…フワー ウフフフ

実際の施術では、顔に布を被せます


アロマ効果は何にでも付いてくるなー、などと思う

そして歯茎マッサージが始める

そしてここからが本番、マッサージだ。歯茎は非常にデリケートで強い力を加えると痛めてしまうらしい。そこで、マッサージの滑りを良くするためのジェルを使用する。

ちなみに、ミントの香りのジェルとグレープフルーツの香りのジェルから選べる。オススメはミントで「歯茎のスッキリ感が違う!」そうだ。

まずは歯茎を軽くなでる

さて、僕はマッサージの類いはよく受ける方だ(自分でプロとして施術する側の人間でもある)。この歯茎マッサージの気持良さのの質感は、一般的に行われる手技に例えると「オイルマッサージ」が一番近いと思う。指の腹を面で使って、柔らかい刺激を入れてゆくやりかただ。


そして歯茎への指圧

さらにマッサージは歯茎から、口の内側の筋肉に移ってゆく。意外なことに、こんなところにもコリがあった。


本当に感心しているのだが、モゴモゴしか言えない

「歯を食いしばるクセがありますよねー」
(ああ…確かにちょっとありますね。)
「物を食べるとき以外は、上の歯と下の歯が接触していない方が良いですよ。その方が筋への負担が少ないです」
(へー、そうなんですか!これは良いことを聞いた。そうします!)

衛生士さんの解説に色々思うところはあるのだが、実際にはモゴモゴ言っているだけ。もちろん、そんなことにはおかまいなく施術は進む。

口の中から咬筋(噛む時に使う顔面の筋肉)をマッサージ

これ、ものすごく気持いい。マッサージ時間は20分くらいなのだが、施術中に寝てしまう人も多いとのことだ。多分僕も取材じゃなかったら寝る。

軽快なマッサージの様子を動画でもご覧下さい。



施術は終了。顔面全体がなんだか軽く感じる

歯科衛生士さんの手が止まり、マッサージは終了。受けている側としては5分くらいしか経っていない気がするけれど、時計を見たらしっかり20分経っていた。

凄く良かった!と感じる反面、自分の本職の立場から考えると少し悔しい。個人的には少し複雑な感情を抱かざるを得ないが、一般の皆様にはおススメ。気持良くて面白いマッサージ体験でした。

歯医者さんはイヤなところじゃない

そういえば、さっき原先生が言っていた。
「マッサージによる医療効果というよりも、単純に気持良くなってもらって、歯医者に来るモチベーションにしてもらえたらと思うんです。」

「欧米では予防検診が日本よりも普及している。日本じゃ、実際に虫歯にならないと歯医者には来ないでしょう。だけど、日本だって『検診のついでにマッサージも受けれる』と思ったら、楽しみな気分で歯医者さんに来れますよね。」

確かに、マッサージが始まる前はなんとなくイヤだった歯医者さんの設備が、今では「気持良さの記憶」とセットになって蘇る。歯も褒めてもらえたし、歯医者さん、良いところだなーと思いました。

さっきと同じ治療室が明るく見えてきます(写真は画像加工ソフトで明るくしました)

取材協力

奈良橋歯科医院
東京都大和市奈良橋5-812-12 坂本ビル2階
https://www1.m-net.ne.jp/wanko/

マッサージ料金は20分で2100円(保険の適用外)

 
 

 

 
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