文香作り、魔術っぽい
文香は、山田松香木店さんが普段から実施している調香体験の中で作ることが出来るそうだ。調香。何をするのか分からないが、大丈夫だろうか。
案内された小さな部屋は締め切られ、おそらく調香の材料が入っているであろう引き出しだらけのタンスと瓶で埋め尽くされている。何とも怪しげな部屋。
漢方薬とか魔法の薬とか作れそうだ。 一体文香はどんなものから作られているのだろうか。
その材料がこれだ。白檀、丁字、桂皮、大茴香、龍脳、山奈、甘松、(かっこう)これだ!と言われても全くピンと来ないものばかり。知っていたのは桂皮=シナモン、大茴香=中華料理の八角くらい。
なんだか分からない材料を一つ一つ触って、嗅いで、感じながら説明してくれる。今回使うものをおおざっぱに言うと、良い香りのする植物を乾燥させたもの。そんなにシンプルなもので出来てるのか。
香りを表す言葉は辛い、酸っぱい、甘い、苦い、しょっぱい
そして作り方はと言えばとても簡単で材料を混ぜ合わせるだけ。特に手を加えることもない。それだけに奥が深かった。
まずはベースとなる香りを作るために一つ一つ素材の匂いを嗅ぎ、指示通りの量を入れていく。その説明の言葉が面白い。
「これは苦いですけれど香りに幅を持たせるために使います」 「酸っぱいので香りに広がりが出てきます」 「辛いものを入れると骨格がしっかりしますよ」
などという感じで香りの表現が独特で聞いていて面白い。混ぜ合わせると複雑で奥深い香りが多いためだろうか。
その的確でユニークな表現にうなったのだが、香りを楽しむ香道の世界では普通の事らしく「辛酸甘苦鹹」の味覚と同じ、五味で表されるそうだ。
日常生活を送っていれば接する様々な匂いが香道をたしなんでいる人には甘い、辛い、しょっぱい、酸っぱい、苦い。で表現出来る。香りにも普段感じているのと違う切り口がある事に驚かされる。
でも、甘い香りや酸っぱい香りはまだ想像できるが、しょっぱい香りというのは全く想像がつかない。しょっぱいのって具体的にはどんな香りなのかと伺うと
「よく言われるのは手ぬぐいに汗がしみこんだ匂いですね」との事。
食事だけでなく香りも塩分控えめで生きていきたいと思う。