たとえば焼け石に水。少し考えてみてほしい。石、そして水。どちらも無料だ。なんと貧乏くさいことか。
ことわざは人生の教訓であるはずなのに、そんなことでエグゼクティブな人生を送れるのだろうか。
ならばことわざをグレードアップしてみてはどうだろう。
焼け石に水は、焼けアメジストにエビアンに。
エグゼクティブな人生を送るために、そんな高級ことわざが教えてくれる新しい教訓を探ることにした。
(大北 栄人)
まずは普通の焼け石に水
まずは通常どおりの焼け石に水をやってみよう。石は川原で拾ってきた石、水は水道水を使用する。
教訓をかみしめる
パスゥー。パスゥー。水が焼け石にふれた瞬間に蒸発していく。
これが「少しばかりの助けは何の役にも立たない」という人生のありがたい教訓の実体化である。
しかし乗らない。気持ちも乗らなければ、身にも沁みない。なぜなら水も石もタダだからだ。
焼けアメジスト
宝石としても扱われるアメジスト。手作りアクセサリー用のパワーストーン材として販売されていたものを入手した。
背徳の加熱
今私は土鍋でアメジストを熱している。あれほど暑かった真夏の台所だが、気持ちにゆとりのようなものを感じる。
鍋の中には優雅がある。土鍋の孔から噴き出てくる優雅の煙。
フタを開けてみるとアメジストが焦げていた。
いかん、熱しすぎたようだ。早く冷やさなければ、エビアンで。
高級ことわざを実践
スポイトで吸い取ったエビアンを垂らしていく。これが普段ならおれってつくづく高級だよな、と思う瞬間であるが、今日は実験だ。顔をひきしめて様子を窺う。
焼け石に水は無駄じゃない
パスッと心地良い響きをたてていた焼け石と違い、パシシシッと蒸発の勢いの弱いアメジスト。やはり石が小さいのか。
しかしこのいじらしさもまた高嶺の花といった趣がある。
結果が変わってきた
焼けアメジストはその小ささからか数滴で蒸発させるのをやめてしまった。
つまりは水で焼け石を冷やせてしまったのだ。しまった、教訓はどこへいったのだ。ちょっと待て、今の状況を落ち着いて整理してみよう。
教訓はなんだ?
ちょっとまとめてみよう。
アメジストは高価だ。なので世の中に出まわっているアメジストは小さいのが普通だ。
小さいから焼けアメジストの熱量もたいしたことはない。エビアンを数滴も垂らせば冷えることだろう。
いいものを使ったことにより、見込みのなかった結果も出た。これだ、これが教訓ではないか。
高級ことわざ「焼けアメジストにエビアン」
意味…いい素材は結果をちゃんと出してくれる
次なる高級ことわざへ
第一回目は「いい素材はいい結果に」という高級ことわざ全部がそんな感じになりそうな答えだった。
不安ではあるが、次ページからは「高級のれんに腕押し」他に挑戦してみることにする。