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フェティッシュの火曜日
 
高級ことわざ「焼けアメジストにエビアン」

浅草ののれん専門店『べんがら』

次なる高級ことわざへ

つづいてのことわざは「のれんに腕押し」である。ということは高級のれんが必要となる。高級のれんってなんだ?ということで浅草の専門店におじゃました。

のれん専門店『べんがら』

〒111-0032 東京都台東区浅草1-35-6
TEL/FAX 03-3841-6613
https://www.bengara.com/


まずは普通ののれん。夏は麻素材がよく腕押しされるとのことである。

次なる高級ことわざへ

「そもそもなんで高級ことわざなんですか?

電話で取材を快諾いただいたものの、訪問時には開口一番で(いや、ほんとの開口一番は「なんで蝶ネクタイなんですか?」だった)企画の不透明度をあらわにしていただいた。

だってほら、おもしろいじゃないですか。

正直に言うことは時に紳士でない。ジェントルマンは黙ってのれんに腕押しだ。


そっと腕押し。つくづく手ごたえのないムダな行為である。

高級のれん

普通ののれん。腕押したな、ああ押しましたとも、といった腕押し加減だった。要は普通だ。

お店の方は「珍しい人が来た」と写メールを撮っていた。のれん屋で腕押しする人は珍しいのか、それとも、タキシードが、だろうか。

そして高級のれん。350種ほどあるというのれんから、今在庫してるもので一番高いものを見せていただいた。


高級のれんはお値段三倍の3万5千円

高級のれんは3万5千円

オーダーメイドで一番高いものとなると30万円程度のものもあるらしいが、現在在庫してる既製品のものだとこれ。3万5000円。ウール地の作家ものだそうだ。

なかなかいい値段だが、例えばお店にかかってるものはどれくらいするのだろうか?

「居酒屋なんかだと大体4万円くらいのものが多いですかね。職業病なんですが、どこのお店行ってもどんな素材を使ってるのかとか細かく見ちゃいます。」

おお、居酒屋に負けてしまった。しかしそれはオーダーメイドで高くなってるのであって、素材や染めの技術ではこちらの勝ちだろう。なんせウールの作家だ。

私は、バリカン片手に羊を追い回しているイササカ先生のような人を想像しては納得した。


なるほど、立派だ

のれんってそもそもなんだ?

そもそものれんってなんでかかってるんですか?

「昔は商売の種類をのれんの色で分けてたんです。それと自宅と店が一緒になってるところが多かったので、そこを分ける結界のような役割を果たしてたようですね。」

なるほど、結界か。タキシードで腕押されるためにあるのではないのだな、とつくづく思い知らされる。

すいませんでした。ここらで一つくらい謝っておくのがジェントルマンである気がした。


そして唐突に高級のれんにタキシードの腕押し…ほぅ。

高級ことわざ「高級のれんにタキシードで腕押し」

話もそこそこに高級ことわざ「ウール地の作家物のれんにタキシードの腕押し」を実行した。

うむ。感触はない。…しかし、肌触りがちがう。そうか、ウール地か!


「ウール地はやわらかく、発色があざやかなのも特徴ですね」

手ごたえはないが発色はいいじゃないか

のれんに腕押し。やわらかなウールで手ごたえはさらになくなった。

しかしそのモサモサとした感触になつかしさのような気持ちを覚え、そして染めの良さ。これは…もしかして名のある作家さんではないのか?はい、そうです。作家物です!

感極まって自問自答ばかり繰り返していた。


のれんも高級だが、軽やかにつまむ私もエグゼクティブだなあ

高級ことわざは敏感になる

「三万五千円です」と聞くと感覚も冴え渡るのが人情。高級のれんに腕押しの手ごたえはまったくなかったが、肌触りはいい。そして発色もいいし柄もいい。なにより、優雅だ。

教訓はなんだろう。もとより教訓というより慣用句であるが、意外な良さを発見することではないだろうか。


高級ことわざ
「ウール地作家物のれんにタキシードの腕押し」

意味…手ごたえはないが染めの良さなど別の喜びを見出すこと


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