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ひらめきの月曜日
 
究極のチャーシューメンを食べてきた


究極=物事を突き詰め、極めること

数か月前のこと。東京都文京区のとある交差点で右のような垂れ幕を見つけた。「究極のチャーシューメン」とある。

「究極」。自信があっても中々言えない言葉だ。しかもこの垂れ幕のデカさが究極とうたうその自信の大きさを表している。

究極のチャーシューメンは本当に究極なのか。実際に食べて確かめてみることにした。

榎並 紀行



本当に究極なのか確かめたい

都営三田線の白山駅を降り、白山通り方面に歩くとすぐ見えてくる巨大な垂れ幕。ビルの4階層分にまたがって「究極のチャーシューメン」と大きく書かれている。

道の往来に「究極」をこれだけ大々的に打ち出してくるなんて、すさまじい自信家じゃないか。店主はきっと腕は立つが傲慢でいつも不機嫌なラーメンの鬼に違いない。

だが、もし実際に出されたチャーシューメンが究極じゃなかったら、鬼にガツンと言ってやるつもりで店を訪れた。


地下鉄白山駅からほど近い「白山下」の交差点に
この堂々たる宣言

その垂れ幕のすぐ下に店がある
ここにも「究極のチャーシューメン」の文字

「究極のチャーシューメン」を出す店「火風鼎(かふうてい)」は今年1月にオープンしたばかり。すでにテレビや雑誌のラーメン特集でちらほら取材も受けているようだ。早くも伺える究極の片りん。


開店半年ながら、すでに注目され始めているようだ
「究極のチャーシューメン」は「AKB48も食べたチャーシューメン」でもある

究極のチャーシューメンは醤油味の白河ラーメン

1階部分はカウンターが10席程度でそれほど広くはない。店主と背を向ける位置の席に座りチャーシューメンを注文。もし究極じゃなかったらこっちは鬼の店主と喧嘩も辞さない構えである。鬼が逆上した場合、すぐ立ちされるよう入口付近を確保した。


そして5分後「究極のチャーシューメン(950円)」が登場

これが究極のチャーシューメン。もしかしたらチャーシューに「究極」って書いてあるとか、そういうオチも予想していたのだが、見た目はいたって正統派の醤油ラーメンの佇まい。

何はともあれ食べてみる。


まずは麺から。湯気で曇ってしまった

柔らかすぎず硬すぎず、程よいゆで加減のちぢれ麺。麺がしっかりスープを持ち上げ絶妙な絡まり具合だ。手打ち麺らしく太さや長さは不ぞろいで、色んな食感を生んでいるのも楽しい。これはうまいぞ。

だが、問題はチャーシューだ。恐る恐る口に運ぶ。


薄いピンク色の美しい断面

いわゆる口の中でとろけるタイプではなく、しっかり弾力を残した薄切りながら食べ応えのあるチャーシュー。脂身が少ないのにパサパサ感は感じられず、食べた後にはスモークの香りが鼻から抜けていく。風味があってかなりうまい。

夢中で食べた

究極のチャーシューメンは確かにうまい。しかし、正直なところイメージしていた「究極」の期待値までは届かなかったのも事実。会計を済ませ、厨房にいる店長を呼び出した(実際は名刺を出して取材のお願いをしました)。

店長の小白井さん

どんだけ傲慢なヒゲ親父が出てくるかと思ったら、店長はさわやかで物腰の柔らかい超ナイスガイ。

若干27歳。高校生の頃から実家の本店で厨房に入り、この若さで10年以上の職人歴を誇るという。


師匠でもある父は高田純次似のダンディガイ

福島にある「火風鼎」本店は創業約30年という白河ラーメンの老舗。じつは全国のラーメン通にもその名を知られるかなりの繁盛店のようだ。そこで10代からひたすら麺を打ってきた小白井店長は「ラーメンのことしか頭にない」というほどのラーメン馬鹿。

また、物腰が柔らかく微笑みを絶やさない好人物である。違う場所で出会っていれば僕らは友達になれたかもしれないね。

だが、ここは心を鬼にして言わねばなるまい。そう「究極のチャーシュメン」についての正直な感想を。


瞬間、店内の空気が張り詰めた気がした

「究極」は1日限定20食

恐る恐る切り出すと「ああ、じつは本当に究極のチャーシューは1日20食くらいしか出せないんですよ」と店長。何でも、チャーシューにもマグロの「大トロ」のような希少部位があり、そここそが究極的においしいというのだ。なるほど。

数に限りがあるため「究極」を所望するお客さんに優先的に出しているとか。そうだよ、そういえばさっき「チャーシューメン」としか言わなかったよ、おれ。そうか、究極を求めるものしか究極にはめぐりあえないのか。

ぜひ究極のほうを食べてみたいが、チャーシューメンを立て続けに食うほどもう若くない。落胆していると店内の張り紙に思わぬ情報が。


「究極のチャーシュー」限定販売中

なんとテイクアウト用に究極のチャーシューが限定販売されていた。て、店長、これください。

無事、1ブロック購入

普通の紙袋に入れられているところが逆に究極っぽい究極のチャーシュー。早速自宅で味わってみることにした。

自宅キッチンにて御開帳

心なしか風格さえ漂わせる究極のチャーシュー。身に余るゲストをお迎えしたまな板(100円)から緊張感が伝わってくるようだ。

はたして、どれほど旨いのか
普段は買わないプレミアムなビールとともに究極を味わう

いただきます

究極でした

一口食べてすぐ分かった。あ、究極だわコレ。

さっき食べたのとぜんぜん違う。風味をしっかり残したまま、さらにコクとうまみが凝縮された感じ。鼻に抜けるスモークの余韻はビールとの相性も抜群だ。噛んでいる間、口の中がもうずっとうまい。

脂身の多いトロトロ系のチャーシューは食べ過ぎると気持ち悪くなるが、これはあっさりしているため何枚でもいける。


ひと切れに換算すると100円くらい。700、800円分くらい一気に食った

たとえこれより旨いチャーシューが世の中にあったとしても、このチャーシューを「究極」と呼ぶことに何ら異論はない。

究極のチャーシューは10月まで店頭で販売されているらしいので欲しい方はお早目にどうぞ。


チャーシュー丼にしても抜群にうまいっすよ

ラーメン道を突き詰めた末の究極

「究極」とは「ある物事を推し進めて最後に到達するところ」らしい。店長の小白井さんはラーメン作りに本当に熱い情熱を持った人で、火風鼎本店の味を継承しつつ独自の味を追い求めている。

その努力の末に到達した「究極のチャーシューメン」は本当に旨かったです。

ラーメン王もお墨付き

店名:火風鼎
住所:東京都文京区白山1丁目31番地9号 小林ビル1F・2F
TEL:03-3812-5008
営業時間11:00〜21:00(日曜は〜19:00)

 
 

 

 
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