だんだん面白くなって来た
幸太くんをからかってみたりしたりして、中だるみはあったが、僕は終盤に近づくにつれ真剣になってきた。魚の図鑑を見るのが面白くなって来たのだ。
これは別に僕がディフォルメして描いているわけではない。魚って本当にこんな変な顔をしているのだ。
たとえば、僕が今回描いた中で一番間抜けな顔をしているであろう「テングダイ」は、実物と比べるとこんな感じ。
この魚図鑑を自主的に作り続ける幸太くんも、こういうところが楽しいのだろうか。でも聞いてみたら「そういうことじゃない」って言うんだろうな、多分。
図鑑作りは佳境に
作業を開始してから5時間あまり。二人の描いてきた物も、大分たまって来た。魚の項目を増やすのはこのあたりにして、ここから製本作業に入って行く。
合作で図鑑の表紙を一緒に描こう、と言ったところ、幸太くんが僕ににじりよってきた。さっきまでは、編集部の工藤さんにばかりなついていたのに。
僕の「魚の模写は楽しい!」というポジティブな気持が、彼を引きつけたのだろうか。あまり僕が慣れていないせいかもしれないが、小さい子と接すると、心の奥まで見透かされているような気がしてくる。
こうしてなつかれると、さっきまでの毒気が吹き飛んでしまう。さっき、「良い中間管理職になれるよ」なんて、小さい子にはさっぱり意味不明なイヤミを口にしていたことがとても恥ずかしい。
子供の集中力はすごい
小1で幸太くんの集中力はすごい。今回も7割以上のページは幸太くんの手によるものだ。
でも子供がみんなこういう一途な集中力があるかというと、そんなことはないだろう。僕は小さい頃から既に、この手の力は無かった。
こういうことが出来る子供が、優秀な大人に育ってゆくのだろうなあ。最後にそんな嫉妬も軽く感じてしまいました。