スタートまでが一番こわい
いよいよ我らがデイリーチームのいかだが出艇する番がまわってきた。
待機場所からスタート地点まで乗組員でいかだを運ぶ。道場主石原さんはいつの間にか道着に着替えていた。
多摩川へと下るスロープは見ているより急で、下りている間担いだいかだを水平に保つのが難しかった。
その結果、いかだは真っ二つに折れた。
折れた、というか初めから二つのいかだをひもで結んでいるだけなのでV字になっても構造上問題はないのだが、その割れ目には手を挟んだらケガするぞ、という予感を感じさせる迫力があった。みな、ナーバスになっていた。
バリバリ豪快な音を立てながらも我々のいかだがスタート地点についた。あれほど重かったいかだが、今や川の流れにとどまるのに必死だ。
もう、乗らずにそのまま流れちゃってもいいんじゃないかと思った。神様、(あと乗組員のみなさん)ちゃんと設計しなくてごめんなさい。
いかだに触れると水面下に力強い川の流れをビシビシと感じる。あんなに大きかったいかだが大自然の中では心もとなく見えた。
もう後には引けない。総員意を決して乗り込む。
「バリバリバリ…」
ベニヤだか下のペットボトルだか、果てはガムテープの避ける音だかわからない音と衝撃が足元に走る。
「うわ!」
いかだは全員乗ってもまだまだ余裕があるくらいの浮力を保って流れ始めた。大丈夫だ、いける!
一度乗ってしまうと、これがびっくりするくらい安定しているのだ。さっきまでの不安はスタート地点に置いてきた。
流されている10分くらいの時間に、いろんな苦労が思い出された。
うまくいったら全てがいい思い出になるかと思っていたが、そうでもなかった。
でも来年になったらそんなことすっかり忘れて「また出ましょう!」って言い出すのだろう。そうやって人は進歩していくのだ。
僕たちの作ったいかだは壊れながらも最後まで持ちこたえてくれた。
ゴールのラインをくぐったとき、夏の終わりを感じた。
もうこれ以上楽しい出来事はたぶん無いんじゃないかと思ったのだ。
単純に楽しかったです
こうしていかだ下りは誰もけが人をだすこともなく無事に終了しました。
浮力は体重の2倍もいらなかったかもしれない、それから甲板部分はベニヤじゃない方がよかったかもしれない、などなど。いろいろと反省すべき点や気付いた点があったので、これはぜひ次に生かしたいと思っています。
次はペットボトルで空を飛びたいですね(そういうこと簡単に言うもんじゃない)。