コウモリが見たい。
あいつら、ほんとにマンガで見たみたいに、逆さにぶら下がっているんだろうか。あと、どんな顔をしているのか。その姿を一度見てみたくて、探しに行きました。
(text by 石川 大樹)
とまってるところをみたい
といっても、東京にすんでいる僕にとってすら、コウモリってそんなに珍しい生き物ではない。夕方になるとどこからともなく飛んできて、空中を舞っているのをよく見る。
昔は鳥だと思ってました
でも見かけるのは飛んでいる姿だけで、あれがどこから来ているのか知らないし、そしてどんな姿をしているのかじっくり見たこともないのだ。
調べてみると、その辺で見かけるのはアブラコウモリ(イエコウモリ)という種類で、どうも街中の民家や物陰に棲んでいるらしい。それなら見つけられるかも。
飛んでるところじゃない、オフのコウモリを見てみたくて、奔走しました。
駅前コウモリ
最初にやってきたのは、横浜市の東急駅。以前、このサイトの月間総集編でコウモリについて書いたことがあり、そのときに読者の方から情報をいただいたのだ。(どうもありがとうございました)
ストリートビューで示された場所は駅を出てすぐ、交差点脇の街路樹。その場所はすぐに見つかった。
ここだ
時刻は18時ごろ。日没を少し過ぎて、もうあたりは暗い。夜行性のコウモリは活発に動き回っている頃だろう。遅刻、遅刻ー!という感じでやってきたのだが。
闇夜
頭上の空は深い闇が覆っていた。「シーン」という擬音語がよく似合う何もなさ。実際は駅前でにぎやかな場所ではあるのだが、僕の心は無音。
今日はお休みですか
なにを隠そう、この企画、一年くらいずっと暖めていた企画なのだが、やらなかったのには理由がある。見つける自信がなかったからだ。
これから4ページにわたりいろんな場所を探しに行く予定だが、こういう手探りの企画は初日が大事で、初日に何も起きなかったら大抵ずっと何もおきない。最終日にギリギリ見つかりました!みたいなドラマチックなことはまず起きないのだ。
夜の暗がりに気持ちが飲まれたか、そんなことばかり考えていた。
写真に写らないアイツ
そんなとき、ふいに、頭上を何か黒いものが掠めた。
いた!
こっちも!
「いた!」とかいって全然写真に写ってない。ここはどうか信じてください、と哀願するしかないのだが、頭上3mくらいのところを鳥とは違うカクカクした翼の生き物が飛んでいた。鳥みたいにスイスイ飛ぶ感じではなくて、蝶や蛾みたいにバサバサと羽ばたいて飛んでいる。間違いない、コウモリだ。
暗いわ速いわでまったく写りません
コウモリはだいたい2分おきくらいのペースで次々やってきては横切っていった。山手線くらいの頻度である。
どこから飛んできてどこへ行くのかはよくわからなかった。
木の中にいるのか
それっぽいものは照らしてみるとたいてい枯葉である
タレコミをいただいた木の中を捜索してみたが、それらしき動物は見当たらない。
人はなぜ上を向いていると口が開くのか
そうこうしているうちに雨がポツポツ降り出したかと思うと、見る見るうちに豪雨になった。
不運のダメ押し
コウモリも最初は山手線くらいの感覚で飛んでいたのが、しだいに東海道新幹線くらいになり、ついにうちの実家付近のバス(つまりほとんどこない)くらいになったときに雨が降りだした。
雨が降ることを知っていたのか、それとも偶然か。どちらにしろ僕はもうずぶぬれなので、今日の捜索はこれで打ち切りである。