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ちしきの金曜日
 
行田フライは無料自転車で行くに限る


老舗を3店舗ばかり訪ねてきました

JR高崎線・行田駅には無料で使える自転車がおいてある。

あれに乗って行田名物のフライとかゼリーフライを食べに行ったら楽しいんじゃないだろうか。

暑さも落ち着いて来て、天気も良いし。

斎藤 充博



無料自転車


新宿から1時間くらいで着いちゃう。行田駅

自転車の借り方はとても簡単だ。行田駅の隣に観光案内所があり、そこで申し込めば良い。申し込み時間は9時から16時半まで。

首都圏に住んでいる人だったら、なんの準備も無しですぐに自転車の旅にありつけてしまう。この手軽さが心地良い。


このピンポイントな欲望をスピード解決

この中から好きなのを選べる。全部頑丈そうなママチャリ


自転車のカギ用ポスト

行田駅の自転車貸し出しシステムは色々と便利に作られている。

観光案内所は16時半までしかやっていないのだが、その時間に返せなくても良い。過ぎた場合は外のポストにカギを入れておけば良いのだ。

また、行田市には観光の要所要所に「自転車返却スポット」が用意されている。そこで乗り捨てていっても良い。

例えば、途中でフライをつまみにビールを飲む。酔っぱらったので自転車は返却、そこからは市内巡回バスで駅まで戻る、なんていう使い方もアリ。

 


毎回タイヤの空気圧をチェックするのが楽しみ

この感触!

僕は行田の無料自転車にこれまで何度か乗っている。

整備が行き届いているのか、いつ来ても自転車の空気はパンパンだ。こういう部分で自転車の旅へのテンションが高まってゆく。


行ってきまーす


周りの風景と自分が溶け合うかのような

行田駅から市の中心部まではだいたい5キロくらい。

天気のいい日に自転車でゆっくり走っていると、なんだか自分がどんどんバカになってゆくような気がする。気持が良過ぎて何も考えられなくなるのだ。

 

水辺で食べるゼリーフライ

ゆっくりと30分くらい走ると、お目当ての一軒目が見えて来た。


「駒形屋」というゼリーフライの老舗


一目で手作りと分かるフォルム

ゼリーフライとは、おからを主体に作ったコロッケのような食べ物だ。

口の中でコロッケの味を想像して欲しい。そこからジャガイモの風味と、衣のサクサク感を引く。それがゼリーフライの味と思ってもらって間違いない。

「引いたら、揚げ油とソースの味くらいしか残らないよ!」
という声もあるかと思う。それも一つの正解だ。


駒形屋は水城公園に臨しており、でかい池を眺めながら熱々のゼリーフライを味わう事が出来る。「でかい池の眺望」も「ゼリーフライの味」も、どちらも非常にぼんやりしたものだ。

必然的に自分もぼんやりとしながら食べた。


しかしこのぼんやり感がまたうまいのだ。不思議

このゼリーフライ、行田独特のB級グルメということで雑誌やテレビに登場する機会も多い。儲っているんじゃないですか?とお店の人に聞いてみたらこんな答えが返って来た。

「B級B級ってね…盛り上がってるけれど、ゼリーフライ屋ばっかり増えちゃって、ウチの売上は減ったよ。ウチは40年前からやっているのに!」

そうなんですか。こんなにぼんやりしていて美味しいのに。しかしそんな話をしているうちに、お店はお客さんで満杯になってしまった。


売上減ってるなんて嘘だと思う

 

地元情報を獲得

次のフライ屋に向かおうとして、道端で観光マップを見ていたら地元のおばあちゃんに話しかけられた。

「どこ行こうとしてんの?」
「×××屋ってところなんですけれど…ここから遠いですかね」
「×××屋は美味しくないよ…薄いしなァ…あんた、遠い所から来たんだろ?そんならもっと良い所行った方が良い。近いとこにあるから。ちょっと来な」


ということで、親切なおばあちゃんについてゆくと

こりゃ地元の人じゃないと絶対来れないよな、というお店に。パッと見、店にすら見えない

なんだかすごいお店を紹介されてしまった。大丈夫か。そして、お店教えてくれてありがとうー、とさっきのおばあちゃんに言おうとしたら、もうそこにいなくなっていた。不思議な民話の冒頭みたいだ。


どっとはらい。タヌキかなんかだったのかもしれない

 

駄菓子屋兼フライ屋

教えてもらったお店は「福田商店」。中に入ると、駄菓子屋と住居スペースとフライ食べるスペースが渾然一体となっていた。


ぐちゃぐちゃの駄菓子スペース
非常に読みにくいメニュー。左はヤキソバで、右はフライ

フライを注文すると、店のおばあちゃんが10分以上かけて焼いてくれた。待っている間、かかっているAMラジオのトークを聞いていると寝そうになる。


これが行田名物の「フライ」。300円で凄くでかい

溶いた小麦粉に、エビや肉を入れる。それを鉄板で焼いただけの食べ物だ。こちらは「ゼリーフライ」とは違って油で揚げていない。名前は「フライ」なのに。


やたらとゆっくり流れる時間。そしてフライもでかいので食べるの結構大変

食べると懐かしい味がした。

なんというか、「美味しすぎない」感じがするのだ。よく考えたら、今どきの外食って、どこで何を食べても凄く美味しい。だからこの作り込まれていない素朴な味が懐かしく感じるのだろう。

例えば、自動車で快適に走るよりも、自転車でゆるりとまわっている方が楽しいこともある。フライの味わいは、それに似ているかもしれない…

あ、自転車とフライがうまいこと繋がった。


ちなみにお店の景気を聞いてみた所、
「今は昔と違って美味しい物がたくさんあるからねぇ…」
とのことだった。

ふと思ったのだが、「フライ」を美味しくしようとして具を増やしたら「お好み焼き」になってしまうだろう。それじゃあフライにならない。フライのさじ加減って難しい。

 

醤油味のフライ

3軒目に行ったのは古沢商店。こちらもかなりの老舗である。


いかにも地域の商店という感じ

味のある貼紙

テレビで何度も取材を受けているような店らしい。地元の人で混雑していた。

若い人はテイクアウト、おじいちゃんおばあちゃんは店内で食べるのがここの主流。

かなり高齢と思しきおばあちゃん(女性の年齢について滅多なことは言えないが、80歳くらいじゃないのか)が一人でお店を切盛りしているさまは勇ましかった。


ここのフライはソース味と醤油味を選べる。今回は醤油味を注文した。


これまたでかい

まあ、醤油をかければ醤油味、ソースをかければソース味になる、という食べ物だ。なにしろ大部分が小麦粉である。でもそれなりにうまいし、食べるとなんでか安らぐ。


ぼうっとしていると、他の席の話が耳に入ってくる

僕の後ろでは常連と思しき年配の方々が、フライを食べながら氷川きよしの話で盛り上がってた。なんでも、テレビ番組で氷川きよしが、このお店に来たことがあるらしい。そして、偶然その場に居合わせた常連のおばあちゃんの一人が、氷川きよしの食べかけのフライを食べることが出来たとのことだ。

なんだろう、小さな幸せを大切にしている人たちという感じがする。フライに似つかわしい話題かもしれない。惜しいのが、どうしても残飯の話というところだ。

 

気持ちの良い小旅行でした

ここまで食べたら物凄くお腹いっぱいになってしまったので、今回はここで終了。なにしろフライのボリューム感がハンパじゃない。小麦粉なんですぐお腹にたまってしまう。

今回はフライに的を絞ってみたけれど、行田周辺には変わった美味しい物がたくさんある。肉汁うどんとか、いがまんじゅうとか。どれも腹にたまりそうな食べ物ばかりだ。

気候の穏やかなうちに、もう1回くらい行田旅行したい。要は、僕は炭水化物が好きなのかもしれない。

良く見たらシャツが塩吹いていた。そんなにハードだったかな

 
 

 

 
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