いろいろな饅頭でお茶漬け
鴎外が愛した「葬式饅頭」での饅頭茶漬けは僕や弟にとっては美味しい物だった。マホちゃんにとっては罰ゲームのような食べ物で、「もう、いや、帰る」などと言っていたが、ここに住んでいるので帰る場所はない。
この調子でいろいろな饅頭で饅頭茶漬けを試してみようと思う。
まずは鹿児島名物のかるかんで饅頭茶漬けをしてみることにした。地主家は一時期鹿児島に住んでいたので、かるかんは身近な食べ物で好物でもある。
そのため、かるかん茶漬けへの期待値も高い。一方マホちゃんはすでに、フルラウンド戦い終わったボクサーのように燃え尽きていた。
食べてみると先の葬式饅頭の饅頭茶漬けより、御飯と相性がよく美味しい。さらに煎茶にもあう。ベストな組み合わせだ。もしこれがカップルならばナイスカップルであり、結婚したならば3人くらい子供をもうけ、休日はBBQにいそしむだろう。それくらいに美味しい。
かるかん茶漬け
感想:ベストカップル マホちゃんのみマズイとのこと
ひよ子饅頭茶漬け
ヒヨコの形で、そのつぶらな瞳はかわいく、中にはインゲン豆から作られる白アンが入っているひよ子饅頭。かわいいので、これはマホちゃんも思わず食べてしまいたくなるだろうと思う。女性は可愛いものが好きだから。
煎茶をかけたら可愛いかけらもなくなった。これは可愛いものが好きな女子としてはマイナスではないかと思ったが、そんな問題ではなく味的にまずかった。
弟がマズい! と、朝一になく鶏のように絶叫し、次にマホちゃんが「うわぁ!」とすごい電圧で感電したような声をあげた。本当に感電なら死んでいた。それほどにまずいらしい。
僕も食べてみたのだけれど、これが意外と美味しいと思うのだ。ひよ子饅頭の白アンは甘く、きめが細かいために煎茶をかけるとよく御飯と混ざる。いままでの3つの中で一番甘く、それが満遍なく甘いので、甘いものが好きな僕としては最高なのだ。美味しいと言った時の、マホちゃんの軽蔑の眼差しがすごかった。
黒糖饅頭茶漬け
どうやら一般的に白アンはお茶漬けには合わないようだ。そこで、黒いアンコがたっぷりの黒糖饅頭でお茶漬けをしようと思う。色白の子は綺麗だけれど、こんがり焼けた肌の子も健康的でいいみたいなことだ。
先に書いてしまうと、マホちゃんはすべてのお茶漬けをマズいと涙ながらに言っている。しかし、僕と弟はこれは美味しいとかマズイとかとマジメに議論を交わしている。この黒糖饅頭は星5つでとても美味しいということになった。
黒糖の上品な甘みとたっぷりのアンコが至高のぜんざいを再現している。ぜんざいには御餅が入るが、その御餅はもともとはお米。なので、黒糖饅頭茶漬けがマズいはずが無いのだ。
その美味しさは運動会のフォークダンスで好きな女子とマイムマイムを踊れたみたいな感じだ。かなり嬉しい出来事だと思う。そのくらいに美味しいのだ。
一方マホちゃんにとっては、高校時代の友達が一人もいない、休み時間になればやることが無いので、ずっとレモン石鹸で手を洗っていた僕みたいなのとマイムマイムを踊っている感じだ。それは苦痛だ。