ちなみに、加賀屋は外見は普通の居酒屋なので、「全く何の予備知識が無い人」が時々入ってくることもあるらしい。
「すぐ近くに出張用のビジネスホテルがあるからね。表の看板に『ほのぼの料理』って書いてあるからさ、それを見た真面目そうな初老のおじさんが一人で来たことがあったよ」
しかしそんな時も、マスターは一歩も引かなかったそうである。
「アンパンマンでオシボリ持って行ったら、固まっちゃってさ。その後、ブラジル風の持ってき方、てことでサンバでビール持っていったけれどね。無反応だったよ。あの時は、やっている方も地獄だったなー」
その情景、簡単に想像がつく。そしてそんな地獄を見てまでも、ヘンテコなスタイルを貫くマスターが、なんだかカッコ良くさえも見えてしまうのだった。 |