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フェティッシュの火曜日
 
マウスのあの玉を日常にカムバックさせたい


 

パソコンの進化は速い。ということを改めてここに書くまでもないほどにものすごく速い。

特にここ数年で変わったのはマウスだと思う。 ちょっと前までは底のボールをコロコロ転がすのが当たり前だったのに、 いつのまにか光学式が当たり前になっていたからだ。

いまではすっかり見なくなったあの玉。 ほんの4、5年前までは欠かせないものだったはずなのに不憫に思う。 マウスとしての立場は光学式に譲ってしまったが、他の用途で日常にカムバックさせられないだろうか。

小柳 健次郎



まず探すのが難しい

あのマウスの玉をマウス以外で役に立つようなシチュエーションを探してあげよう。

それにはまずあの玉が使われているボール式マウスを手に入れないといけないわけだが、 これがなかなか売ってない。


秋葉原の電気街でワゴンセール品狙い。
しかしこんなでも光学式という最先端。

古いマウスを売っていてもそれすら光学式。 何件か回ったけどどこも同じだった。もうそんなところまでボール式マウスは駆逐されているのか。

秋葉原なら古いパソコンパーツもあるだろうと思ったけど、 ことパソコンに関しては最先端の街。そこでボール式マウスなんて古代のオーパーツみたいなものなのだろう。 意識してなかったけど、歳を重ねたことを否応なしに実感させられる。


なんて思ってたらありました。

売ってた。さっきあんな感想を抱いた瞬間に見つけたのでかなり表紙抜けてしまったが、 ボール式マウスは回った中では一軒だけ、POPもなにも書いてない箱の中にゴミのように重ねって売られていた。

1つ税込み210円。

くすんだ玉

底の蓋を回して玉を取り出すとかなり懐かしい物体が出てきた。これこそがマウスの玉である。


あーこれこれ、これだわー。
非常に地味に色が違う。

数年ぶりに手にとってみると、表面はゴムのようで固くそれでいて弾性がない、 そしてこのサイズしては重量がある。

そしてなによりも特徴的なのはこのくすんでるとしか言えない配色。ネズミ色と言うにも地味すぎる。 少し使い古した練り消しゴムの色だ。


玉は右です。

それでどうしよう

手に入れたはいいけど、ここからどういう風に活用するかは見えてこない。

企画の趣旨としては日常に取り入れて、この玉が生活に不可欠だった過去を取り戻してあげたい というものなのだが、いざ手にして考えるとこんな玉が必要になる生活シーンなんて見あたらない。


とりあえずサイズを測ってみた。直径2.14cm。
手近にあったものを計って同じサイズのものを探してみる。これはだいぶ違う。

ゴリラの顔幅にピッタリ!

偶然か運命か、ゴリラフィギュアの顔幅と直径が一致した。

いやだから別にどうしたというわけでもないですが。

次は趣向を変えてカッコイイ写真を撮ってみた。


その丸さは職人が九十九日磨き続けないとでないという。

確かにカッコイイ。カッコイイけど写真を撮ったらすぐいらなくなってしまうので、 日常にはカムバックできてない。写真もどことなく過去の思い出みたいな雰囲気でもうこの世に存在しない物みたいだ。

 

そっくりなもの発見

やはり似ているものを探してその用途に置き換えてみるのが一番確かな方法かもしれない。

だからといって練り消しゴムにならないのは確実だから・・・と悩んでいたら、おもちゃ売り場で そっくりなものを見つけた。


アンパンマンの鼻ではない。

それはシロフォンを叩くばち(マレット)の先端。ここの丸いのがマウスの玉と形も大きさも まさにピッタリなのだ。


直径は2.17cm。あの玉と0.3mm差しかない。
並べるともうどっちか分からない。

こんなに似てるなら良い音が鳴るかもしれない。 マウスの玉をマレットのようにして叩いてみよう。

そう思い立って三分で作った。


なんか、すいません。

ほとんど音が出ず、聞こえてくるのはボコボコ叩く音だけ。 これでは打楽器じゃなくて単なる打器である。叩くだけ。


チュッパチャップスとして子供に売りつけよう。

スーパーボールにしてみる

実用性という点ではいまのところ一切希望がないマウスの玉。

だからもう日常に不可欠とかはこだわらず、別になくてもいいじゃない、でもあったらちょっとうれしい。 そんなポジションを狙うのはどうだろう。

そのポジションで玉と言ったら、スーパーボールしかない。


スーパーボールらしく明るい色に塗る。
どことなく秋を感じる風合い。小さい秋見つけた。

派手めなオレンジに塗ったのに、下地のくすみが強すぎるのか 明るいのに地味。道ばたに置いたら何かに実と間違えてカラスが集まるかもしれない。 (その場合カラスをゴミあさりから遠ざけるのに利用できる)

ただスーパーボールで重要なことは高く弾むこと。 弾みさえすればもうなんだっていいじゃない。


弾みませんけど。

なんとなく分かってた、というか家で何回か落としてたので確信的に分かってた。 それでも土の上なら変わるかもと僅かな希望をかけてみたが、枝の間に置いて なにかの実に見せるぐらいしかできてない。

なにかの実。

これはこれでフィットしてる。 でもやってることは植木の隙間にゴミを捨てているだけなので玉の立場が全然回復してない。 むしろ下がってる。

しかしそういった窮地に立たされるとグッドアイデアが浮かぶもの。 手持ちの道具を使い即席でこんなおもちゃを作ってみた。



筒の中に玉を入れると、
おもしろい動きをするおもちゃに!

で?

この半端なくクオリティの低い物をどうすればいいのか。 勢い余っておもしろい動きとキャプションで書いちゃったけど、そんなにおもしろくもないんです。

こんなので喜ぶ人はいないだろう。 しょぼくれながら適当に転がしていると、藪から犬が現れた。


本当にいきなり現れたので写真が遠い。

どうやら転がってる様子に反応してきた模様。 驚いてすぐ取り上げてしまったが、なるほど確かに人はダメでも動物なら楽しめるかもしれない。

玉には悪いけど、もう人間社会はあきらめてもらおう。

犬にとってのマウスの玉

そんなわけであの玉を使ったおもちゃ(らしきもの)でどれだけ動物の気を引けるのか、 ちょうど当サイトライターの小堺さんが犬を飼っていらしたので協力してもらった。


Love,Beauty,Peacefulと書かれた服を着ています。
最初の印象や良し!

さすが素直で好奇心旺盛。人間の子供だったら見向きもしないようなものにも 興味を示してくれてうれしい。

これは遂に玉の居場所を見つけたんではないか。

10分後の状態。

興味を持つのも早ければ失うのも早かった。 この後も筒の中に餌を入れたりしたけど、ものの見事に相手にされない。

僕はムツゴロウさんではないけれど、いま彼らがなにを思っているかは確実に分かる。

犬結論:実生活においてマウスの玉は一切役に立たない

そもそもマウスの玉はマウス用に作られたのだから仕方ないのかもしれない。

ただそのマウスとしての立場が消えかかってるからなんとか日常に取り入れてみたかったわけで、 そういう結論が出たらもうどうしようもない。 光学式マウスに使われているLEDもいつか同じような末路を辿るんだと思うことで慰めよう。

でもLEDは既に生活で役立ってるから、やっぱり玉はどうしようもない。

犬に連行される人。

 
 

 

 
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