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フェティッシュの火曜日
 
美容師じゃない人が他人の髪を切るとこうなる

最初のターゲットは安藤さん

僕が切り方を学んでいる間、安藤さんは用意しておいたヘアカタログを熱心に見ていた。

いちおう「何かリクエストありますか?」と聞いたところ、とある人気アイドルの写真を指差した。


「ニノみたいにしてください」

たぶんニノの髪は腕の立つ超一流の美容師がカットしていると思う。昨日今日(というか今日はじめて)ハサミを握った新米美容師にはハードルの高いオーダーだ。

でも、全力でニノみたいにします。


まずは髪をとかす

梳きばさみで少しずつ切ります

今回は普通の髪切り用ハサミと梳きバサミを用意。

小堺さんの記事には少しずつ減らしながら切れる梳きバサミの方が素人には使い勝手がよい、とあった。

それに倣い、僕もまずは梳きバサミを使うことにする。


不安から全身をこわばらせる安藤さん。その気持ちはよく分かる

最初のハサミを入れるのはかなり緊張したが、覚悟を決めてジョキジョキ切ってみると、これが思ってた以上に気持ちいい。


あ、気持ちいい

こりゃ楽しいぞ

ジョキジョキという軽やかな音と、手に残る感触がとても気持ちいいのだ。どれくらい気持ちいいかというと、この原稿を書いている今も、また髪を切りたくてウズウズしてくるくらいだ。やみつきになる感覚といっていい。

最初の不安がウソのように、次第にリズムが乗ってくる。


左右のバランスを整えるのが難しい
けっこう切りました

怒ってる? ねえ安藤さん

しかし、安藤さんの体は固いままだ。美容師らしくお客様を会話でリラックスさせてみようと試みるが…。


「お仕事忙しいんですか?」
「…」

「お休みの日とか何してるんですか?」
「…」

思ったより盛り上がらない。そして、心なしか安藤さんの表情も険しい。やはり怒っているのかもしれない。

さっき安藤さん「この記事、失敗して僕が榎並さんをぶん殴るっていうオチが面白いですね」なんて軽口叩いてたけど、あれってもしかしてマジだったですか?(もちろん、安藤さんはこれからかっこよくなるのでそんなオチにはなりようがないわけだが)

その時、安藤さんが静かに口を開いた。


「あの…榎並さん。痛いんですが…」
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