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フェティッシュの火曜日
 
美容師じゃない人が他人の髪を切るとこうなる

続いて地主さんをカッティング

続いては地主さん。地主さんにもリクエストを聞くと

「半年くらい美容院行かなくて済むように、ガッツリ短髪にしてください」

と言う。どうやら地主さん、本気で美容院代を浮かしにきている。

思う存分切らせてもらえるのはとてもありがたいが、ここまで全面的に信頼を寄せられると逆にプレッシャーがかかる。


そんなに親しくないのにゴミ袋かぶせちゃってすみません

ちなみにbefore 半年カットしていないだけあって書生のように伸びきっている
後ろもかなりボリュームがある

「あ、あとバングは流すように仕上げてください」

知らない言葉が出てきた(地主さんが読んでいたヘアカタログにそういう言葉が書いてあったらしい)。

これは困ったぞ。


「バングは攻撃的に遊ばせてください」

あ〜はいはい。バングね。といいながらインターネットへ正解を求める

バングってなんすか?

インターネットの情報によればどうやら、バング=前に垂らした髪ということらしい。ちなみに左右非対称にバングを垂らすことをアシメバングという。

へえ、勉強になった。おれも美容室で今度使おう。

さあ、気を取り直してカットに入ろう。

今回は「短髪」というオーダーなので、先に普通のハサミで大きめにカットしてから、細部を梳きバサミで整えていくことにした。


まずは大胆にカットし、後から細部を整える作戦

地主さんの髪は直毛でサラサラしているので、とても切りやすい。先ほどのカットで自信を付けていることもあり、ハサミを持つ手も滑らかに動く。

悲劇が起ったのはその時である。


・・・・・・・・・・

…バングがえらいことになってしまった。


あまりのことに一瞬、僕も撮影係の安藤さんも息をのんだ。


「え、どうなってんの?」

目の前に鏡はあるが、地主さんは眼鏡を外しているため、自分のバングがどんな状態になってしまっているか見えていないようだ。

前髪は慎重に。分かっていたはずなのになあ。

何事も慣れてきた頃が一番危ないと小さい頃母親によく言われたが、他人様の不幸でそれを実感することになるとは。


悲劇の決定的瞬間。明らかに気を抜きすぎ
ここから、集中のスイッチを再び入れなおした

まあアレだ、失敗しても最終的にモテバングになればいい。

そう思い、もう片方のバングは慎重に切って左右のバランスを整えてみた。


いとうせいこう?

いよいよまずいことになった。

失敗をカバーしようとして、さらなる失敗を上塗りしてしまったパターンだ。

ここで眼鏡をかけて鏡を見た地主さん。衝撃的なおもしろバングにもはや笑うしかないといった様子。

・・・本当に申し訳ない。


理想とのギャップに愕然とする地主さん

「これ、モテますかね?」
「ええ、モテますとも!(23世紀くらいに)」

とは言ってみたものの、申し訳なさとおもしろさで地主さんの顔を直視できない。

この惨状を何とか打開しなくては。


とはいえ、もうどうにもならないかもしれない

見ようによってはアーティスト

気鋭のアーティストとかに、こういうアバンギャルドな髪形の人がいた気がする。キャンドルとかに詳しいあの人はこんな髪形じゃなかったけ。

いっそ、そっちに方針転換してしまおうか。試しに

「この髪形、アーティストっぽいですよ、地主さん(地主さんは美大卒)」

と褒めてみたのだが


・・・・・・・・・・・

まずい。怒っている。

とりあえずバング問題は先送りして、頭頂部やサイドなど全体のフォルムを仕上げていくことにしよう。


とりあえず得意な後ろから攻める

もはやどうにもなりません

しかし、バングのインパクトが凄まじすぎて、何をしても帳消しにできない。「モテ」からはどんどん遠ざかり、逆に変態度がグングン急上昇してくる。

ただ、まだ地主さんが電車に乗って家に帰れるだけの社会性はギリギリ保っている。ここらでハサミを置いたほうがいいかもしれない。

傷が深くなる前にハサミを止めるのも、美容師スキルのひとつだろう。


「あ、完成です」
「え?」

「完成・・・ですか」

before
after

before
after

「そんなに悪くないんじゃん」と思ったら大間違い

写真で見るとそんなに悪くない気もするが、何を隠そう実物はこれの5倍変態っぽい。

そんな変態っぽい地主さんは12月23日のイベント「紅白ネタ合戦」で見られると思いますのでチェックしてください。


なるべく鏡を見せないのもスキル

「キャラが立ちました」と喜んでくれた地主さん。本当にいい人

人の髪を切るのは相当楽しかった。

ジョキジョキと心地よい手の感触が忘れられないのだ。今でも街中で、もっさりした髪形をしている人を見るとウズウズしてくる。

どうしても我慢できなかったので、翌日自分の髪をジョキジョキ切ったくらいだ。でも、もっともっと切りたい。

さて、最後に大富豪のわがままみたいなお願いを聞いてくれたお二人に心から感謝をしたい。特に地主さんには本当に申し訳ないことをしてしまったが、笑って全てを許してくれた。本当にありがとうございました。


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