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ちしきの金曜日
 
大阪にはプノンペンがある


ほぼ出オチという気もする

プノンペンはカンボジアの首都だ。

しかし日本の大阪にも「プノンペン」があるという。

なんだそれ、ということで行ってきました。

斎藤 充博



フェニックス通りというこれまたかっこいい名前の通りの近くにある

イントロの写真でばらしてしまったが、大阪の「プノンペン」とはラーメン屋の名前だ。ちなみに、メニューは「プノンペンそば」と「プノンペン」だけ。

「プノンペンそば」、ならまだしも、「プノンペン」ってメニューは何だよ、と思う人もいるだろう。なんでも、「プノンペン」で出している「プノンペン」は「プノンペンそば」からそばを抜いた物なんだそうだ。

今、わざとわかりにくく言ってみた。


あざやかなオレンジが印象的な店構え

 


住宅街の中でもよく目立つ
自信満々な書体だと思った

テーマカラーはオレンジ×黒
この配色にはちゃんとした理由がある(後述)

「プノンペン」の2代目、平野さん

本当のプノンペンにプノンペンで出しているプノンペンそばはない

こちらで出している「プノンペンそば」だが、特にカンボジアのプノンペン由来の食べ物ではない。

「プノンペンそば」の経緯を聞いてみたら、これが非常にややこしい話だった。箇条書きで書かせて欲しい。


  • 先代がまだ高校生の頃、近所の食堂で「プノンペンそば」を食べて感動する
  • 時が経ち、先代が中華料理屋を創業する。しかしいまいちパっとしない
  • 思い切って高校生の頃に感動した「プノンペンそば」一本に絞って行くことを決意
  • しかし「プノンペンそば」を出していた店はすでに閉店
  • 先代、自分の記憶の中をたよりに「プノンペンそば」を再現する

これが「プノンペンそば(肉入り)」

ほどなくして「プノンペンそば」は人気になり、「プノンペン」はうまいラーメン屋として雑誌にたびたび紹介されるようになった。

プノンペン一本に賭けた成功譚だ。しかし、よくこんな実体のないプノンペンに賭けられたものだと思う。先代の決断はすごい。


平ザルでかっこよく麺を上げる

「プノンペン」の歴史はまだ続く。

  • 噂が噂を呼び、プノンペンからの留学生が「プノンペン」に来店
  • しかし反応は「うーん…?」という感じ
  • それじゃ一度プノンペンに行ってみるか、と二代目のご主人
  • 留学生の家にホームステイ。本物のプノンペンを感じ取る
  • でも別に「プノンペンそば」の味自体は変わらない

話はさらに複雑で曖昧になった。まるで地方の民間伝承の由来でも語っているみたいな気分になってくる。ちなみに、二代目が本物のプノンペンにステイしたのは4年前のことで、わりと最近まで不思議な歴史は綴られている。


店内もオレンジの配色がそこかしこに

店の外から気になっていた、このオレンジ色。
「カンボジアのプノンペンにちなんだ色だったりするんですか?」と聞いてみたところ、「オレンジは食欲を増す色らしいんですよ!吉野家なんかもそうでしょう!」との答えが返ってきた。

吉野家カラーだったのか!「プノンペン」でありながら、プノンペンには全然縛られていない(実際行ってるのに影響受けてないのがすごい)。どこまでも続く野原のように自由だと思った。


関係ないけど「プノンペン」という言葉の響きが良過ぎてずっと頭の中でリピートしてしまう

プノンペンそばの味は

「プノンペンそば」のスープは、鶏ガラ醤油+トマトの味+ニンニク+鷹の爪が主な材料だ。食べてみると、前面に立った辛さの向こうに、鶏ガラ醤油がいて、さらにその奥からトマト風味が顔をのぞかせる、という雰囲気。

今まで食べたことのない不思議な味なので、表現が難しいが、決してヘンな味ではない。


基本的には「辛い食い物」です。汗だくで食べる

 


野菜と肉がいっぱい入っている。完全食だ、プノンペンそば

 

こだわりの食材

プノンペンの自慢は、選び抜かれた自慢の食材だ。ご主人に解説してもらった。


メイン具材の杓子菜はなんと自家栽培
これがその杓子菜。杓子(しゃもじ)に似ているから杓子菜というそうで

そして、よく見たらこだわっているのは食材だけではなかった。


水は天然水を自ら汲みに行ってる。箸だって産地指定。すごいこだわりだ

思わずハッとしてテーブルを見てしまう。


確かにうまい
木目が違う

まさか割り箸までこだわると思っていなかったので衝撃を受けた。確かに割った時に、左右がほとんど均等に折れた気がする。しょうもない割り箸を使うラーメン屋ではこうはいかない。

アヤフヤな起源と、こだわり抜いた食材たち。なんだかアンバランスな感じもする。でも、これが先代と二代目が一途に味を追い求めた結果の形なのだ。大阪のプノンペンは不思議でカッコいいラーメン屋さんでした。

絶対頭に残る店名

取材協力:
プノンペン
大阪府堺市堺区中之町西3丁2-33
072-238-3287

 
 

 

 
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