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ちしきの金曜日
 
ダンボールで再現された国宝に入る


これ。

ダンボールで茶室を造った人たちがいるという。

それ、同じようなことを当サイトでもやっていなかったか。

そのくらいの気持ちで見に行ったのですが、これがすごいものでした。

安藤 昌教



住宅展示場にある

ダンボールで作った茶室は住宅展示場にあるのだという。

どういうことか。

ダンボールの茶室というと、当サイトでもかつて作ったことがある。こんなやつだ。おもいっきりポータブル。ダンボールで作った建物というとこのくらいのイメージがあるのだが、それをわざわざ住宅展示場に置くとは、もったいぶりすぎじゃないか。


とかなんとか思いながらも、考えてみると住宅展示場ってまともに行ったことがなかったのでちょっと新鮮でした。

よく仕組みがわかってないんですが、家を買う人が「これください」って来るところなんですか?

住宅展示場はとにかく広くて、もはや一つの町と呼んでもいいくらいの規模だった。そしてここに建っている家、すべて空き家なのだ(そういう表現はどうなのかわからないが)。なんだか不思議な気分になる。


オムライス屋さんの店舗カー。その隣は富士宮やきそばのお店。注文してから焼いてくれる本格派だ(そしてうまい)。

普通に楽しいから行くべきだ

どの家も基本的に入り放題なので、目についた家にいくつか入ってみた。内部は家具なんかが揃っていて本当に誰かが住んでいるように作られているのだ。中には食卓に皿が並んでいる家まであった。

そういえば子供の頃、近所の住宅展示場に勝手に寝泊まりしちゃってるおじさんがいる、って話を聞いたことがある。それは快適だろう、新しい家なんだから(だめですよ)。

会場内には移動販売のカフェやB級グルメの屋台なんかもあって、もう言うことない。僕自身これから家をどうこうする予定など毛頭ないのだけれど、そんな人でも普通に楽しんでしまった。


地下室のある家ってあるんですね。幽閉とかできる。
敷地内のビルがまたえらいことになっていた。

ビルの中には内装のサンプルとか設備の体験ゾーンなんかがびっしり入っている。
なんとここのレンガや石、自由に持っていっていいのだ。なにかの企画で材料に困ったら来ようと思う。

家具のアウトレットショップなんかもある。40万円のソファが20万円で売っていたりするが、半額とはいえ縁のない商品たちだった。
ライブラリでは建築関係の雑誌や資料をゆったりとした空間で読むことが出来る。ここ一日いられるぞ。いや二日三日いられるぞ。

ん?なんだ、あれ。

いきなり登場、ダンボール茶室

ライブラリーの一画にちょっと異質な空気をまとったものが置かれていた。なんだろう、あれは。

まわりくどい紹介の仕方をしてしまいましたが、これこそがダンボール製のお茶室だったのです。


かなり浮いているのでみんな興味津々だ。

こちらが内部。すべてダンボールで出来ています。

まごうことなきお茶室です

それは一瞬ダンボール製であることを忘れるくらいよくできたお茶室だった。でも近づくとアマゾンの箱開けたときの匂いがする。やっぱりダンボールだ。

ダンボール製と聞いて、子供が作る秘密基地みたいなものを想像していたのだけれど、しかしこのお茶室はなんというか、ダンボールなのにちゃんと気品があるのがすごい。


中にも入れます。ダンボールで出来ているんだけど、入ると神妙な気分になるのはなぜだろう。
目をこらすとハニカム構造が見えて(あ、ダンボールだった)と気づく。

制作にたずさわった建築士(そう、建築家が作っているのだ!)の松田さんにお話しをうかがった。


松田さん。この日は「茶室空間の可能性」と題してシンポジウムが行われていた。

---なぜダンボールなんでしょう。

(松田)建築の世界では図面だけではどうしてもわからない部分があるので、原寸大の模型を作って確かめることはめずらしいことじゃないんですよ。ダンボールは安いのでよく材料として使われるんです。

---でもなぜ茶室を?

もともと建築家・山田幸司先生が始められたプロジェクトです。原型は愛知にある「如庵」という国宝の茶室です。

国宝ともなるとなかなか一般の方が入ることはできないんですが、ダンボールならば原寸大で同じ物に触れてもらえますからね。


制作にはダンボールならではの苦労もあったのだとか。たとえばこの細くなった部分はダンボールの重みで変形してしまったりした。

---作るのにどのくらいの日数かかったんでしょう。

8人で作業して7〜8時間といったところでしょうか。ダンボール自体はCADで設計してあって、別の場所でユニット毎に作ったものを運び入れて組み立てています。

---ということはまたバラバラにして他に持っていける、と。

いちおう設計的には可能です。これまでにも4、5回すでに他会場で展示していますから。

でも実は次の行き先が決まっていないんですよ。なにしろ輸送費がかかってしまうので。

バラバラにして運ぶためには10万円単位の費用がかかるのだとか。

それを負担してもいい、という人が期間中に見つからなかったため、この茶室は「たぶんこのあと壊してそれっきりですね」ということだった。国宝なのに(ダンボールだけど)もったいない話だ。勢い、妻に電話したら「もらってこい」って言ってたが、確かに置くところないですわ。


これが国宝の如庵。

内部はこんな感じ。

織田信長の弟、織田有楽斎によって京都のお寺に建てられ、後に愛知へ移設されました。

そんな貴重な建築をダンボールで完コピ。

先にも書いたが、ダンボール如庵はダンボールなのだけれど、中に入ると不思議と神妙な気分になるのだ。ほどよい広さ(実物と同じ二畳半)と左右非対称の落ち着いた造形が本能に響くのだろうか。

しみじみとした気分に浸り、立ち上がると障子の枠が歪んでいたりする。なにせダンボールだから。


強いとはいえ限界がある。

床下には補強のためビールケースが入っているが、壁は完全にダンボールだけで作ってあるらしい。触ると確かにダンボールなのだけれど、少々押してもびくともしなかった。

この日は茶室についてのシンポジウムが行われていたこともあってか、ダンボール茶室にはひっきりなしに見学のお客がおとずれていた。みんな驚いた様子でいちど外から眺め、落ち着いた顔で中に座る。

ダンボールだろうがなんだろうが、お茶室はやっぱりお茶室なんだなと思った。

国宝を3Dで

国宝を手軽に体験できるダンボール茶室を、さらに手軽に体験できるよう3Dで撮影してきました。ざらざらした質感も伝わるかと思います。


ここから中に入ります。(クリックで3D表示)
ダンボールのお茶室、内部です。(クリックで3D表示)
別アングルから。(クリックで3D表示)

そのはかなさもダンボールならでは

ダンボールのお茶室は国宝を身近に体験できる貴重なものだった。この後の身の振り方が決まっていないというのが心残りだったが、やはりそれはどうにもできないところなのだろう。

こういうはかなさもまた、お茶の世界の「わびさび」に通じるものなのでしょうね(適当に締めた)。

着物の女性とよく合う(ダンボールだけど)。

ハウスクエア横浜(HP

〒224-0001
横浜市都筑区中川1-4-1
営業時間10:00-18:00(水曜日休館日)


 
 

 

 
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