生肉弁当の夢
---Nさんは焼肉で起業しようとして参加されたんですか?
「僕はお弁当屋さんを始めたいんです。実は生肉が大好きで大好きで。あの感動をお弁当にしてランチにサラリーマンの人に提供できたらな…と思ってるんですよ」
---え?生肉弁当?
「そうです。だから今日の展示会も生肉のブースばっかり行っていました」
---生肉弁当って聞いた事ないですよ。本当にできるんですか?
「今日、メーカーの人に聞いてみたんですよ。問題は『凍った生肉をどうやって解凍するか』というところになりそうですね。僕は軽自動車に道具をつめて、オフィス街でやりたいと思ってます。でもそれだと解凍のための電子レンジが使えるかどうか難しいそうなんです。電力が足りないだろ、って言われちゃって」
え?問題は電力とかそういう部分でいいんだっけ?と頭の中にハテナがいくつも浮かんだ。
しかし、よく考えたら世の中には「持ち帰り専門のお寿司屋さん」があったりする。あれもある意味、生の物をお弁当にしているわけだ。生肉弁当もアリ、といえばありなのかもしれない…。
「今、工作機械の業界って不況ですごく厳しいんですよ。それなら自分のやりたいことやるのも良いかな、って思ってるんです。」
ちょっと大丈夫かな、と不安になる。しかし、こうして展示会でリサーチをかけるくらいだから、彼の気持は本物であることは間違いない。成功して欲しい、と強く思う。
「あ、ちなみに来週ここでミルクとチーズの業者の展示会もあるんですよ。牛乳飲み放題らしいです。もし良かったら斎藤さんも一緒にどうですか?」
…ん?ただ単に展示会好きの人なのか?わからなくなってきた…。
肉を食べるとポジティブになれる
とにかく良い雰囲気の展示会で楽しかった。色んな人の努力で僕たちは美味しい焼肉を食えるのだ。
しかしその一方で、最後にやったインタビューはイマイチよく解らなかった。でも、そんなことは別にどうでも良い、とさえ思う。たくさん肉を食べると、うまくいかなかったインタビューにさえ寛容になれるのだ。