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土曜ワイド工場
 
学研の「◯◯のひみつ」が超進化している


ひみつシリーズといえばこういうイメージ

「学研のひみつシリーズ」といえば我々団塊ジュニア世代にとってはひときわ思い出深い書籍だと思う。

ぼくたちが小学生だったころ、学校の図書館にあるマンガといえばタンタンの冒険旅行、はだしのゲン、そしてこのひみつシリーズぐらいのものだった。 そんなひみつシリーズが、いますごいことになっているのだ。

西村まさゆき



そのテーマで大丈夫なのか?

まずはこのひみつを見ていただきたい。

中身はどうなんだろう?

明太子。まさかの魚卵。
そう来たかぁと、ぐっとくるタイトルだ。

昔のひみつシリーズに慣れ親しんだぼくたちのイメージでは、「ひみつシリーズ」といえば宇宙や恐竜、お金や切手といったように、子供が興味を持ちそうでかつ、ひみつの種類が豊富そうな分野を取り上げているものばかりだと思っていたけれど……明太子。魚卵で大丈夫なんだろうか?

 

ハイテンションで明太子のひみつに食いつく小学生

ドーン、明太子でーす!! 

家庭科クラブにおじゃまして食べた明太子が美味しかったため、「ひみつ研究クラブ」の研究テーマとして「明太子」に注目したトオルとありさ。 料理に注目するのではなく、いきなり素材そのものの明太子に興味が到達するその着眼点はたぶん理系だ。

二人は明太子のひみつを探りに福岡に向かう。

明太子のルーツは朝鮮半島!
ジャンプ漫画の主人公ばりにワクワクしているが、対象は明太子の調味液だ。
おいしさの本当のひみつを見つけたトオル

明太子の工場見学や「やまや」会長との出会いを通して、明太子のおいしさの本当のひみつを知ったトオルとありさ。 そして、最後に先生はそんな二人にこう諭す。

あなた達も明太子を見習わなきゃね!!

普段、なかなか見習おうという気にはならない明太子。しかし、トオルとありさは違う。なぜなら明太子のひみつを知ったから。「明太子を見習わなきゃね」というセリフは、普通の生活を送る中ではめったにお目にかかることができない味わい深いフレーズだ。

ちなみに、野暮を承知で先生のこのセリフの意図を解説させていただくと、世界へチャレンジを続ける明太子の、そのチャレンジ精神を見習いなさいということが言いたかったのだ。

 

まだまだある予想の背後から襲ってくる強力なラインナップ

すごいのはこれだけではない、次はこちらを見ていただきたい。

八ツ橋のひみつが詰まった一冊 

京都土産の定番とも言える銘菓、八ツ橋。確かにお土産で貰ったとき、気にはなる。なるけれど、一冊の本として成立するのか? 他人事といえどもちょっと心配になってくる。

「やだマモル、知らないの?」八ツ橋と言えば京都のお菓子ナンバーワン。常識です。

修学旅行先の京都で迷子になったマモルとユキは地元の小学生スズカと仲良くなり、スズカのお母さんが働く「聖護院八ツ橋」にやってくる。そこで八ツ橋のひみつを色々と教えてもらう。

なお「まめちしき」情報によると“聖護院八ツ橋総本店社長の鈴鹿家は、代々吉田神社社家(神職の家がら)である” だそうだ。スズカという名前はそこからきているのか。

まめちしきのアイコンが八ツ橋。芸が細かい。

八ツ橋や京都の文化を守ること、それが会社の使命! やっぱりキラキラする社長。
砂糖が使われるようになって和菓子が変わった。ということを伝えるページ。キラキラする社長。

工場見学や聖護院八ツ橋社長との出会いを通して、伝統や文化を受け継ぐことの大切さに気づくマモルとユキ。工場見学→社長と遭遇。というのは明太子でもそうだったのだけど、このシリーズのよくあるパターンのようだ。

「ビシッ!」と力強くメモを取るマモル。

マモルは聖護院八ツ橋にふれて気づいた「大事なことを見失わない!」をメモする。

しかし、八ツ橋というかなり限定されたテーマにも関わらず、最後は京都の文化や歴史、そしてそれを守っていく大切さ、というふうに普遍的なテーマへと着地するストーリー展開は実に見事で、ぼくの心配は杞憂に終わった。

 

そこに絞ったかーと、思わず唸り声が出てしまう渋いテーマばかり

この他にも、さまざまなタイトルがあるので、ざっと紹介してみたい。 まずは「自転車駐車場のひみつ」

全く意識の外にあった自転車駐車場にがぜん興味が湧いてきた

自転車駐車場、よく「駐輪場」と言われているものだ。ものだっていうか誰でも知ってると思うけれど、誰も注目してなかった分野ではある。 少なくともぼくのまわりで自転車駐車場について一家言もってるひとはいないので、今のうち自転車駐車場マニアになれば自転車駐車場マニアのパイオニアになれるかもしれない。

1万はどの程度多いのかピンとこない……

自転車駐車場の数を質問する主人公に1万ヶ所とこたえる自転車駐車場のおじさん。はたして1万が多いのか少ないのかよく分からない……。

 

SFで下着の話

そして次は「下着のひみつ」

内容はマジメです

女性用下着。とくにブラジャーについての本だ。保健体育関連の本はわりとあると思うけど、ブラジャーに注目した本は珍しいのではないかと思う。

ちなみにYahooオークションを検索すると、なぜか3500円ほどで出品されているけれども、内容は初めてブラジャーを選ぶときは、自分の体型にあったものをきちんと選ぼう。という至極真っ当なものだ。よこしまな心を持った大人が期待するようなものは何も無い。

自称「魔法使い」の保健の先生と電脳空間にダイブするふたり 

主人公の女の子ふたりは、保健の先生と一緒にワコールのウェブサイトの電脳空間へとダイブする。このへんの設定はトロンとか攻殻機動隊みたいでカッコイイ。と言っても女性用下着について調べるだけなんだけど。

 

エレベーター・エスカレーターのひみつ

メンテナンス作業員ってカッコイイよね

エレベーター・エスカレーターは当サイトでもかなり注目している分野ではあるけれど、それそのものについて書かれた子供向け書籍はおそらくこの本以外ないと思う。もっとも大人向けの書籍でもなかなかないのだが。

寛容になったのです。大人になったんだな。

内容は、エレベーターやエスカレーターが大嫌いだった少年、太一が、エレベーター・エスカレーターに関わる人々と交流するにつれて、その大切さに気づく成長物語だ。 エレベーター・エスカレーターの大切さに気づくこと。それは大人の階段をエスカレーターで登ったということか。大喜利センテンス申し訳ない。

以上、図書館にあった「◯◯のひみつ」を駆け足で紹介したが、じつはこの他にもまだまだ沢山ある。 いちいち紹介していてもきりがないので、これは学研に行って直接どういうことなのか聞いてみたいと思う。

 

なぜ一般の書店では販売しないのか?

というわけで、学研にやってきた。 いったい、なぜこんなシリーズが発売されているのか。株式会社 学研パブリッシングの永野さんにおはなしをうかがった。

こころよく取材に応じてくださった学研の永野さん

−−「明太子」とか「八ツ橋」など、すこしマニアックなテーマのひみつシリーズがたくさん出ていますが、これはなぜなんでしょう?

「正確にいうとこのシリーズは「まんがでよくわかるシリーズ」といいまして、ひみつシリーズとはちょっと違うんです。」

たしかに「まんがでよくわかるシリーズ」と書いてある

−−そうなんですか! たしかによくみると書いてありますね。

「このシリーズって、企業、または団体の協賛で成り立ってまして、明太子だとやまやさん、八ツ橋は聖護院八ツ橋さん……」

−−この「牛丼のひみつ」というのは……

「これはすき家のゼンショーさんですね。そもそもこのシリーズは書店では販売してないんですよ。それぞれの協賛をいただいたところに、ある程度の部数を買い取っていただくかたちで、残りは全国の公立図書館と小学校に寄贈してるんです。」

ロボット、宇宙人、牛丼。

−−たしかに書店では見かけないのに、図書館にはそろってました

「以前は書店にも卸してたものもあったんですが、書店が学校に図書を売りに行ったところ『すでに無料で寄贈してあるじゃないか』とクレームが来たんです。

そこで、企業・団体協賛だけで成り立たせて書店での販売は一切しない。そのかわり全国の小学校全てと公共図書館に寄贈しますという形でスタートしたのがこの『まんがでよくわかるシリーズ』なんです。個人で所有はできないんだけど、読める機会は幅広くということですね。

書店での取り扱いに関して紛らわしさをさけるため、『ひみつシリーズ』は寄贈を一切せずに書店で販売するもの。『まんがでよくわかるシリーズ』は企業協賛のみで成り立たせているもの、という分け方をしているんです。」

−−そうすると「ひみつシリーズ」と表現するのはまずいですかね

「そうなんですよ(笑)ただ「◯◯のひみつ」っていうのはうちの専売みたいなもんだから、それだけはずーっと踏襲してるんです。」

 

マニアックなテーマでも意外に人気があったりする

エスカレーターの手すりを「輪っか」と言い切ってしまう女の子に胸がときめく。

−−「エレベーター・エスカレーターのひみつ」ってすごいですね。デイリーポータルZにもエスカレーターに詳しいライターがいるんですが、この本を読んで感心していました

「それは日立ビルシステムの協賛で、私も作るときに挨拶に行ったんですが、そこにはエレベーター、特に日立のエレベーターが好きだという小学生の男の子からの手紙が社内に飾ってありましたよ。やはりそういうのはメーカーとしてはうれしいんでしょうね。」

−−ものづくりをしているひとにとってはうれしいでしょうね。

「けっこう『こんなものが喜んで読まれるのだろうか?』と思うようなネタが人気が出たりするんです。寄贈した学校の図書館の先生から「段ボールのひみつが大人気です」というようなお礼の手紙が来たりすることもありますね。」

なぜか人気のある「段ボールのひみつ」

小学生にしっかりとした情報を伝えるちょうどよい「媒体」

−−きのう「下着のひみつ」を読ませて頂きまして、ぼくは女性の下着に関して全く興味も知識もなかったのですが、実際読んでみると知らない事ばかりで、まあ当たり前なんですが、素直に勉強になりました

「下着というと、作り手の意図ではない方向でとらえられてしまうこともあるんですが、ファーストユーザー、つまり小学生が最初にブラジャーを選ぶ時は、あまり安易には考えられないというところがあるんです。ワコールさんもそういう考え方なんですが、かと言ってそれを小学生に伝える適当な媒体ってなかなかない。

そんな中、このまんがでよくわかるシリーズは、コマーシャルではなく、ある程度情報量を持ってきちっと物事を伝えるには適切な趣向だと、クライアントさんにも評価していただいています。」

コマーシャルでもない、企業パンフレットでもない、丁度いい媒体なんですね。

ネタ切れしそうでなかなかしない

−−今後、どんなタイトルが出る予定でしょうか?

「そうですね、現在進めているものとしては『漢方のひみつ』『タイヤのひみつ』なんてのがあります。」

−−漢方、タイヤですか、これは楽しみですね。

「そのうちネタ切れになりそうと思いながらも、結構あるんですねー(笑)実は企業としては立派で大きいけれど、よく知らない会社ってありますよね。段ボールのひみつなんかそうですけれども、段ボールに目を向けることってなかなかないと思うんですよ、でも無くてはならない物、陰ながら役立っているというような、そういうものを拾っていけて、紹介できればいいなと思ってます。」

−−なるほど「普段注目されないものに注目する」というのは大切な事だと思います。こういう視点があるからこそ、大人が読んでも面白い内容に仕上がっているということもありますね。今日はありがとうございました。

見過ごされがちなものに熱いまなざしを! 

ぼくたちが子供の頃、図書館で順番待ちまでして読んだあの「◯◯のひみつ」が、信じられない進化を遂げていることが今回の取材でわかった。

存在が当たり前すぎて、みんながその大切さを忘れてしまっている物にたいする視線。そういうものを一つづつ拾って丁寧に紹介していく。これはそのままデイリーポータルZの姿勢にも共通するものがあると思う。そういう意味で、先日の割り箸に注目したぼくの記事は間違いではなかったと自信を深めた。アクセス数はパッとしなかったけれども。

取材協力:株式会社学研パブリッシング


 
 

 

 
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