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姉妹都市はどのくらい姉妹なのか


雪深い姉妹。

「姉妹都市」という関係。

よく聞く言葉だけれど、考えてみるとちょっとおかしい。なんだ姉妹って。そこに住んでいる人たちは「あの都市、姉妹なんだよなー」と感じることとかあるんだろうか。

実際に姉妹都市として交流のある二つの市を訪れ、その姉妹っぷりを探してみました。

安藤 昌教



姉妹都市はどのくらい姉妹なのか

「姉妹都市」という言葉がある。一般的には都市同市の自然環境が似ていたり、住民同士の交流があったりするのが姉妹都市の条件なのだとか。

僕が生まれた愛知県の大府市というところはオーストラリアに姉妹都市を持っていて、年に何度か物産展みたいなことをやっていた。

でも生活していて「実はいま姉がオーストラリアにいまして」みたいな実感はまったくなかった。オーストラリア側でもたぶん似たようなテンションだったんじゃないか。

今回、たまたま訪れた新潟県上越市と北海道室蘭市が姉妹都市であることを知った。姉妹都市の関係を暴くチャンスである。この二つの都市がどのくらい姉妹なのか、比べてみようと思う。

まずは市役所から見てみよう。


室蘭市役所。4階建ての庁舎は貫禄十分。
対して上越市役所。5階建て!

歴史的には圧倒的に室蘭が姉

室蘭市役所の4階建てに対し、上越市役所は5階建てだ。

階数だけで見ると上越が姉ということになるかと思う。しかし建物自体の貫禄で判断すると室蘭市役所の方がだんぜん姉っぽい。

歴史をひもとくと、1922年に市制施行した室蘭市に比べ、上越市が誕生したのは1971年である。室蘭が50年も年上なのだ。そんな姉妹いない。むしろ親子、いや孫くらいの年の差ではないか。

そんな年の差姉妹の特産品を見比べる。


室蘭市、臼。
上越市、酒。

臼と酒。どちらもなんとなくめでたい感じがするのも姉妹たる所以であろう。

これは観光局の展示にあったものなのだけれど、室蘭市は臼だけでなく、カレーラーメン豚肉の焼きとりなんかも有名なわけだが、これら全部でかかっても上越市の酒には勝てないような気もする。

外に出るとどちらも寒い、という共通点は言わずもがなである。


室蘭市にて。風が強くて飛ばされそうな寒さ。寒いというより、痛い。
対して上越市。室蘭のように肌を切るような寒さはないが、雪の量は圧倒的に上越が多い。歩道横に平気で2メートルくらいの雪の壁が出来ている。

気候は確かに似ている

室蘭市と上越市、今回2月の同じ時期に訪れた感想からすると、どちらも信じられないくらい寒かった。

雪の量は圧倒的に上越市の方が多いのだけれど、室蘭のハードでエッジの効いた寒さには北海道の底力を見せつけられた気がする。


室蘭市。町中がスケートリンク状態だ。
上越市役所前の歩道。歩くところだけ雪がどけてある。凍ってはいないので意外と歩きやすい。

街路樹がハードな樹氷みたいになってる。突っ込んだら車が壊れそうなほどに硬い。室蘭市。
上越市。雪の量は多いが、ソフトさを保っている。

室蘭市出身の編集部工藤さんいわく、室蘭は風が強いこともあってそんなに積雪量は多くないのだとか。おおらかに積もる妹上越を尻目に、並外れた低温で雪をも凍らす姉室蘭、という感じか。

商業施設はどうか。


室蘭市で就活するならまずここであろう、「はるやま」。
一方、上越市では「マスカット」。

半額スーツは9000円から。室蘭市、はるやま。
スーツはマスカット!2着目1000円。上越市。

紳士服=マスカットという唐突さにも妹上越市の茶目っ気を感じる。正直なところ、緑色の看板を遠くから見てスーパーだと思ってやってきたらスーツを売っていたのだけれど。


室蘭市ならばカット2100円。
上越市、3675円。これは単にお店の差、という気もする。

室蘭市のメガネ、一式4980円。
上越市、一式5000円。ほぼ互角。

室蘭市の個性は自動販売機にも色濃く発揮されていた。


室蘭市。当然のようにサッポロである。
上越市。いたって普通。
リボンシトロン。北海道を中心に飲まれている炭酸飲料ですね。室蘭市。
室蘭市のコーヒーたちは「生粋」と書かれていた。

シトロンは北海道でよく飲まれている炭酸飲料。これについても室蘭出身の工藤さんに聞いたところ、こっちではシトロンよりナポリンである、と言われた。ごめんどっちも知らない。

ここで注目したいのは、室蘭市の自動販売機がほとんど「冷た〜い」であることだ。対して上越では半分がホット。姉室蘭のどん欲な寒さ欲がかいま見える。


室蘭市のラギュラーガソリン、138円。
上越市でも同じく138円。ガソリンの価格ってあまり地方差ないんだっけ。

室蘭市で見かけたプリンセス天功さんのポスター。
上越市では戦場カメラマンだった。

上越市は僕の妻の実家があるので、義父に室蘭が姉妹都市であることを知っているかどうか聞いてみたところ。

「そういえばそんな話をきいたことがある」

いたって平温の反応だった。まあそうだろう。僕だって実家の町がオーストラリアの都市と姉妹都市だって知ってるか、って聞かれたらたぶん同じような答えしかできない。

日常の中で何かの拍子にふと思い出すことはあっても、常にいっしょにいるわけではないのだ。それが姉妹都市。

この関係性、思わず自分の姉のことを思い出してしまいました。


室蘭市役所でみつけたレルヒ少佐の象。
この人、実は上越市のヒーローなんです。日本に初めてスキーを持ち込んだ人。


遠くにいる血縁、くらいの感覚

室蘭市と上越市、姉妹都市とはいえ互いの市民生活にそれが浸透しているという実感はなかった。

でもどちらの都市に対してもよそ者である僕から見ると、町に流れる雰囲気にどこか似たところがあるように思えたのも事実だ。

自分の町の姉妹都市にもいつか行ってみたいなと思いました。

室蘭の観光スポット、地球岬。
上越市の圧倒的な積雪。どちらもいい町ですよ。

 
 

 

 
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