2階に玄関がある家に憧れる。 ふつう、地面が基準で、その上の階が2階で、その下が地下だ(日本の場合)。 ところが、斜面などに建つ家の中には、2階に玄関があり、その下に1階があるというケースがある。 そういう家に、僕は憧れるのだ。
(工藤 考浩)
郷里は坂が多い
僕の生まれた北海道室蘭市は、平地の多くを工場が使用していて、一般の住宅は残った斜面に建っている。 そのせいで、小学校時代の友人が上記のような2階に玄関がある家に住んでいた。 「ごめんください」と玄関を入るとそこが2階で、居間や風呂やトイレがあり、階段を下りて子供部屋に行くという、僕の住んでいた家とはまったく正反対の環境に、とても驚きを覚えた。 なにせ、ぜんぶ逆なのである。 おそらくこれは、個人の人格形成に何らかの好影響を与えるにちがいない、というようなことを子供ながらに思った。
地面とは、基準とは何か
この2階が玄関住宅、何がすごいって、基準となるべき文字通り「ベース」が、僕の暮らしとは異なっているのである。 人間の思考にはかなりの部分で「地面」という概念が影響していると思う。 地に足がつく、という言葉があるように、地面というのは生活の基本だ。 そこから、例えば高層マンションだったらエレベーターに登って部屋に入ったり、地下鉄だったら階段を下って改札をくぐる。 2階に玄関がある家は、その基準が根本から違うのだ。 それに僕は大きな魅力を感じる。
まずは見物
そんな2階が玄関住宅がずらりと並んでいる場所が上野にある。 いぜんライター大山さんの記事「みんなで「GPS描き初め」をやった」に参加したときにたまたま通りかかって発見し、大興奮したのだが、“好き者”が多いはずの同行のみなさんには僕の興奮は伝わらなかったようで、じっくり見物しようと再訪した。
道路にはさまれていると出現しやすい
斜面に対して平行な道路が二本並んでいると、2階に玄関がある家が建ちやすいようだ。 この写真のお宅は2階部分に玄関があり、1階は駐車場と、その奥にも部屋があるようだ。
他の家も
この通りには7〜8件の家が並んでいるが、そのうち3件ほどが2階を玄関として使用しているようだ。
裏か表か
道路の幅が広いのは坂の上の方、つまり2階部分になる。 そのばあいこっちが「表」になるべきであるはずだが、最寄り駅にあたる根津駅に近いのは道幅の狭い方、つまり1階部分になる。 建て主はどちらを表ととらえるか、おそらくかなり悩んだだろう。 もちろん僕なら迷わず2階に玄関を作るが、それが便利であるか問われると、答えに窮してしまう。
うらやましい
もし僕がここに住むことができたら、出かけるときは1階で帰宅するときは2階とか、偶数日は2階から出入りして奇数日は1階から出入り、など、いろんなバリエーションで楽しむことだろう。