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伝統芸能「猿まわし」の調教師になる方法


この記事では猿まわしを「猿芸」と言います

猿が竹馬に乗ったり、逆立ちしたりする「猿まわし」。
大昔から行われている大道芸の一種で「猿芸」と言ったりもする。お正月などのめでたい席で演じられることも多い。人間と猿の呼吸がピッタリと合った芸の数々には思わず見とれてしまう。

この猿と一緒に芸をする人を調教師と言う。
この人が猿に芸を教えるのだ。言葉の通じない相手に芸を教えるのは大変だろうと思う。

というか、そもそもどうすれば猿の調教師になれるのだ? と思っていたら「猿芸塾」なるものを見つけた。
これは行かねば!

地主 恵亮



東筑波ユートピアに猿芸塾はある

世の中にはいろいろな職業がある。
猿に芸をさせる「猿芸」もそのひとつだ。しかし、と思う。たとえば医者なら医学部に行けばよいだろうし、公務員なら公務員試験を受ければいい。では「猿芸」の調教師になるには…と悩んでしまう。答え簡単、そう「猿芸塾」に行けばいいのだ。


猿芸塾の最寄り駅「石岡駅」にやってまいりました(ここからバスで30分+徒歩50分)

「猿芸塾」は茨城にある動物園のような施設「東筑波ユートピア」内にある。「猿芸塾」に行かなくても調教師のなることは可能だろうけれど、「猿芸塾」では調教の方法を習えたり、卒業すると猿がもらえたりと、おそらく調教師になる最短ルートを進むことが出来る。また、後にも書くが「猿芸塾」は誰でも入れるのも特長だ。


今回はタクシーで「東筑波ユートピア」に向かう(矢印の辺りにあるらしい)

「猿芸塾」に行けば誰でも猿の調教師になれる。
でも、やっぱり大変なのだろうか、そこに通う人はどんな人なのだろうか、などの疑問が浮かぶ。また猿芸塾がある「東筑波ユートピア」自体もなかなか面白い施設らしいので、行くしかないと思い今回訪れたわけだ。


ということで到着です!

まずは猿芸塾について聞く

タクシーで着いた「東筑波ユートピア」はかなりの山の中。
最寄のバス停から歩くと50分はかかる健康的な場所にある。早速この「東筑波ユートピア」の社長であり、「猿芸塾」の塾長でもある小川さんに「猿芸塾」について話を聞いた。


小川さん(以下、社長)と従業員の方々(に囲まれて僕は緊張)

ここで働く従業員の方は「猿芸塾」の卒業生なのだそうだ。
塾には月10万円の月謝を払わなければならないが、ある日急に給料がもらえるようになるらしい。

数ヶ月で「ある日」が来る人もいれば、何ヶ月も「ある日」が来ない人もいる。全ては社長判断でそうなるらしい。また卒業して独立する人もいるそうだ。

ちなみに月謝の10万円には、宿泊料や光熱費なども含まれているので、その金額が高いのか安いのかは判断の難しいところだ。


ステージに立つ猿と調教師さん

塾に入るとまず猿を1頭渡され一緒に生活することになる。
そこで猿に芸を教える方法を習い、そして自ら猿に芸を教えていくわけだ。

猿に芸を教える具体的方法は企業秘密らしい。社長自らが考え出した方法で、こういう風に教える、というような万国共通の方法は無いそうだ。

社長も猿芸を始めた当時、すでに猿芸をやっているところに、その方法を聞いたけれど教えてもらえなかったと言っていた。確かに無駄にライバルは増やしたくないから仕方が無い気もする。


芸達者

日本でここだけ

「猿芸塾」は日本でココだけだそうだ。
しかも門戸が広い。誰でも入塾できるので、つまり誰でも調教師になれるのだ。唯一の制限は18歳〜30歳までという年齢だけ。

僕も入れますか? と聞くともちろん、と言われた。
来るもの拒まずらしいのだ。ちなみに今度新しく3人入塾するそうだ。でも、残るのは1人いればいい方かな…と社長は言う。やっぱり大変らしい。


深々と猿はお辞儀をするけれどこれも練習の賜物

秘密だという猿に芸を教える方法を聞いた。
すると結局は「根気」だそうだ。どんだけ粘り強く猿と向き合えるかが問題らしい。それができる人は続くけれど、そうでない人は早々にやめてしまう。飴を舐めていても、早々に噛んでしまう僕には向いていないようだ。

また数年に一度は朝になったらいなくなっている「脱走」も起きるそうだ。脱走するのは猿ではなく塾生の方。逃げたくなるほど大変なのだ。


観客席のウケを確かめながらのお辞儀

従業員の方に大変ですか? と聞いた。
全員が苦笑した。社長の前では言い難いのだろう。

でも誰も「大変じゃない」とは言わないので大変なのだ。
たとえば、今ここで売り出し中の「猿がイノシシに乗ってハードルを越える」という芸は、披露するまでに10カ月を要したそうだ。そりゃ、大変だ。僕なら最初の3時間であきらめていたと力強く断言できる。


イノシシに乗った猿が

ハードルを越える(この芸が見れるのはここだけ!)

この芸をしている調教師の牧志さんは、入塾して一年も経っていない。もちろんすでに「あの日」がやって来ていて給料をもらっている。猿とイノシシと人間で寝食を共にして、信頼関係を築きこの芸を覚えさせたそうだ。

猿との関係は「仲間」という感覚、と別の調教師さんが言っていた。ももたろうが、猿を連れ立った理由が分かった。心強い。僕だったら早々に裏切っている。仲間にするなら僕より猿だ。


信頼関係(ステージでもない普通の場面で猿から手をつないでいた)

猿は稼ぐ、僕よりも >
 

 
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