うまそう系でも攻められたい
食べ物なんだから、ちゃんと「おいしそう!」と思いたい。そして、できたらそれに加えておいしそうな感じだけではない何かも漂わせていてほしい。
そういう観点でジャケ買いした缶詰がこれだ。
ゆであずきの缶詰だ。食べ方例として載っているのは氷あずき。確かにおいしそうだが、強いインパクトがあるわけではない。ただ、缶を手に取って別角度から見るとさらなる魅力があった。
氷あずきの逆側にはこんな写真が。ホットケーキにこんもりと盛られたあずき。
この食べ方、確かに聞いたことがないというわけではないが、誰でもやったことがあるというほどポピュラーでもないと思う。そのあたりのさじ加減が人を惹きつけるのだと思う。
裏の商品説明文の「いや味のない甘さですから」という始まり方もいい。こなれてないけど、商品のよさをなんとか伝えたいという思いが感じられる。
続く、おすすめの食べ方の説明には「このままお召し上がりいただくか」とある。あずきをこのまま? スプーンですくってムシャムシャ食べるってことだろうか。
かなりのあずき好きが書いたと思われる一文。テキストでも気を惹く缶詰だ。
続いては、デパートに出かける用事があった妻に、「気になった缶詰、ジャケ買いしてきて」と頼んだものを紹介していきたい。自分以外の人の視点も見てみようというわけだ。
いくつかある中、私も強く魅了されたのがこれだ。
デパート名入りのビーフシチューの缶詰。「デパートのビーフシチュー缶」という説明だけで既にうまそうなのだが、全体的な雰囲気はただそれだけでは済まさないぞ、というものが漂う。
さくらんぼ缶と同様、ブルー系の色は食べ物の写真と組み合わせるのが難しいようだ。そして写真そのものも、肉がゴロゴロしてるのはいいのだが、単なるうまそう感以上の迫力が漂う。
しばらくは食べないで部屋に飾っておきたい。目にする度にやってくる、期待と不安が入り混じる気持ちを楽しみたい。
続いてはすっぽんスープの缶詰。ビーフシチューはぐいぐい前に出てくるタイプだったが、こちらはシンプルなデザイン。ただもう、「すっぽんスープ」というタイトルだけでジャケ買いしたくなる存在感がある。
缶にすっぽんのイラストがないというのも、一般的なデザインの逆を突いているようにも思える。カメのリアリティを打ち出すのとは反対に、「すっぽん」の字の部分は昭和のマンガのようなとぼけた雰囲気。
しかし、その下にある説明文は「吟味育成」「丹念に」と、極めて真面目ムード。このギャップもいい感じだ。
「インデラ」という昔風の発音表記が印象的なカレー粉の缶も確かに惹かれるものがある。カレーのイラストがあるわけでもないのに、おいしそうな感じがするのは何故だろうか。
反対に、内容を絵で示しているのかと思わせたのが下のカラフルな缶。いかにも外国チックな様子がかっこいいが、よくよく見るとその実体はマグロ缶。デザインそのものに加え、結果的に意外性も感じた缶だ。
合わせて妻が買ってきたのは、このゴマ油の缶。今回想定していた缶ではないが、ジャケ買いしたくなるという気持ちはわかるデザインだ。
なんだかクリスマスムードにあふれてないか。しかしよく見ると、やはりそれだけではないディティールがある。
商品名の字体がホラーマンガ風。心に迫るものがあるのは認めるが、そういうアプローチでいいのだろうか。
ここまでやってきた缶詰のジャケ買い。続いては、自宅にたまたまあった缶詰から、どんな缶詰ならジャケ買いしたくなるかを考えてみたい。