徐々に本領を発揮する亀たち
かわいい亀を見て体もあったまってきたところだろうか。もう少しかわいい系の亀を見ていこう。
うん、まだ平気だろう。かわいいかわいい。大丈夫、だよね。
人によって感じ方の違いは少々あるだろうが、このあたりは最大公約数的に「かわいいゾーン」に位置する亀ではないかと思う。亀頭でありつつ、社会的な健全性を保持しているスタイルだ。
また別の角度からの意味で、かわいい亀もいた。
スッポンモドキという亀だ。「ブタハナガメ」という別名もあるそうで、確かに鼻が特徴的な形をしている。ブサカワイイという系列だろうか。
こういうかわいさもあっていい。今回の記事全般に通じるメタファーの対象とははっきりと形状が違っていて、そのことを一旦忘れてかわいいと思える亀だ。
今回の取材では写真をたくさん撮ってきたので、原稿を書く前にまずその整理作業をしている。写真はいくつかの名前をつけたフォルダに分けて特徴ごとに分類しているのだが、こちらの写真も「かわいい系」というフォルダに入れておいたもの。
それでいいだろうか。分類したときの自分はそう判断したのだと思うが、たくさんの亀を見ていることで基準があいまいになってはいないだろうか。
左の写真の亀は皮がだぶついているリアリティがありながらも、その表情の雰囲気からはかわいい系としていい亀だと思う。そのことはいい。
異論はあろうが、自分の分類としてはそうなってくる。ただ気になるのは、同じ水槽の奥に横たわっていた亀だ。
陸地部分にぐったりとしている亀。それはもう、亀を超えた存在感。くたびれ果てた河童のようにも見える。各地で目撃情報のある伝説の生き物だが、こういう亀を見間違えたという可能性もあるのではないだろうか。
さて、続いては「リアル系」と名付けたフォルダに入れた写真を見ていってみよう。
なぜこれらをリアル系としたかについては、言葉を費やす部分ではないと思う。それぞれの鑑賞者が胸に湧いてくるものと向き合ってほしい。小さいながらも皮と頭部の構成がリアルな左の亀、そしてひたすら猛々しさを誇る右の亀。
…うっかり言葉を費やしてしまった。沈黙に浸りながらも、つい口を開きたくなってしまうたたずまいが亀にはある。
それでもここまで来ると、もう本当に言葉を失う。美は人を沈黙させるというが、人を沈黙に至らしめるのは必ずしも美だけではない。
いや、言葉を失うというよりも、「これは誰が見てもアレだろ」という普遍性に圧倒されると言うべきだろうか。見る者の気持ちを貫き通し、謎の笑いにまで昇華させる力 がある亀だ。
亀頭にはいろいろな表情がある。どちらかと言うとかわいいものが多いのだが、こちらは珍しく怒ったような表情。こういう扱いで紹介されることに納得していないのかもしれないが、色味は肌色に寄せてきている。
通常の水槽が並ぶ中、一つだけ神社風の装飾が施された展示があった。賽銭箱やおみくじの販売機もあって、ここだけ結構な気合いが入っている。
掲示を見ると、ここにはインドハコスッポンという亀の白変種がいるらしい。
ここまで紹介してきた亀も十分にリアルだったが、こちらはまた形状以外の部分で一線を画すもの。リアルを超えて、なまめかしいという表現の方がしっくり来るだろうか。
亀を人種に例えるのもおかしな話だが、「どうみても白人」と思わざるを得ない。ここまでの存在感だと、神様扱いされるのもわかる気がする。
ここまで、かわいい系・リアル系に分類した写真を見てきた。次のページではもう一つの分類とした亀たちを見ていこう。