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はっけんの水曜日
 
豚の足一本分のハムを買ってしまった

さあ切るぞ

ざっくりと説明すると、ハムを買いにいって食べるだけの話なのだが、食べる前に3ページ目に突入してしまった。
しかし、実際に僕が経験した時間の流れもこれくらいの感覚だ。
生ハムを買うかどうか悩み、購入し、目の前にあるのに食べることができない。
そして、ついにようやく生ハムを食べることができるのだ。


これが生ハム専用ナイフ。うちにある包丁で一番高価だ

購入してから3日、待ちに待った瞬間に緊張感も高まる。
なにせ2万4千円もしたのだ、失敗してしまったら失うものがでかすぎる。


失敗は許されない

まず足首に切れ目を

生ハムの原木は、皮の部分を取り除かねばならない。
足首のところに切れ込みを入れて、そこから皮をそいでいくよう教わった。


いよいよ入刀
切れ目からじゅわっと油がしみ出した

V字にカットする

お! ハムだ


不要な部分をそぐ

足首の切れ目から、生ハム用ナイフを使って皮をそいでゆく。
皮は思いのほか固く、うまく切るのには少しコツがいた。


皮を削ぎきる
うまそうな気がするが、食べられない

つづいて脂をとりのぞく

皮の下には脂がある。
スペイン語ではラルドというそうだ。
皮に近いところの脂は酸化している(黄色味がかっている)ので食べることはできないが、表面を取り除いた下の部分は料理などに使うことができるので、ラップにくるんで冷凍しておくといいらしい。


酸化した部分の脂をとりのぞく
柔らかいのでスイスイと切れる

肉じゃ!

数pわたってたっぷりと乗った脂をとりのぞいていくと、中から赤身が顔を出した。
よく見る生ハムが見え始めた。
ぬほー! っと思わず声が出た。
ハムですよみなさん。
ハムだ、ハムだ、ハムだよハムだ。


ほらハムが見えてきた

すいません、味見してもいいすか

鮮やかな赤身の部分は脂に比べると少し固めで、しっかりとしている。
ちょいとその部分をスライスして、大変申し訳ないのですが味見をさせていただいてもよろしいでしょうか。
恐縮ではございますが、何とぞご理解のほどを。


ここんところをちょっとだけ

新しい時代の幕開け

僕は、改めなければ。
豚の脂に対する認識を誤っていた。
脂、脂といっていたが、こんなにまろやかに香りが広がるとは。
そして赤身のしっとりとした味わい。
この生ハムは16カ月熟成されているそうだが、その歳月がそのまんま肉に凝縮されているようだ。
時間というのはこういう味がするのか。
これまで「肉」に感じていたのとはまったく違う世界が僕の目の前に広がった。


つまみ食いはお行儀わるいですが
ひゃー

どんどんカット

本当はこのまま切ったそばから食べてしまいたいのだが、ちゃんとお皿に盛って、姿勢を正して味わうのがこの素晴らしい食べ物に対する礼儀だろう。
つまみ食いへの欲望を抑えて、カットを続けた。


一口大に切ってゆきます

この艶はただ鑑賞するだけでも美しい
どんどんカットします

でも欲望は抑えられず

きちんと皿に、とは思うのだが、あまりにも美しい生ハムを見ていると、ついついつまみ食いに走ってしまう。
僕は弱い人間だ。
いや、この魅力を前に平常心でいられる人間はこの世に居るまい。


我慢できずにつまんでしまう
なるほど、僕の唾液はこのために存在していたのか

思う存分生ハムを

欲望に誘われつつも、お皿がいっぱいになるくらいの生ハムをカットした。


山盛り生ハム

生ハムというのはこんなに綺麗なものなのか。
眺めているとうっとりしてしまう。
しかも食べるとうまい。
僕はいま贅沢の海を泳いでいる。


ため息がでるほど

サラダにした

カットした生ハムはモッツァレラチーズとトマトとルッコラのサラダにして食べた。
いうまでもないが、うまかった。
どれくらいうまかったかというと、食べている写真を撮るのを忘れるほどだ。
前のページまでは2万4千円と何度も書いていたが、これを食べている間は金額のことをまったく忘れていた。
いろいろ忘れてしまうほどに、生ハムのうまさを味わった。


もうコメントの必要なし


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