猪木と馬場どっちが強いのか？

貧乏性なもんで、仕事などで地方に行く機会があると「ついでにどこか変なスポットを取材できないかなー」と思い、事前にめぼしい珍物件やへんてこショップを調べておくのだが、やはりネットなどでちょこっと調べて出てくる程度の場所は、まあ観光地レベルというか……イマイチ爆発力に欠けるケースが多い。

その点、タクシー運転手や飲み屋のおっちゃんたちなど、現地の人たちから教えてもらうネタは信頼できる。漁師が食ってる魚料理が一番美味い的なことだろう。ま、時々「面白い場所？　……えーっと、ジャスコ！」みたいなどーでもいい情報をつかまされることもあるけど。

この前のゴールデンウィーク、大阪でイベントがあったので、例のごとく面白情報をゲットしようと宿泊していた十三の飲み屋に入った。

その店自体が「こだわりは味より量！　出せるメニューはその日のノリ！　会計はどんぶり勘定！」といった雰囲気ビンビンの"いかにも"な感じだったので、ここならいいネタを仕入れられるのでは……という期待感を持って突入。

しかしボクが入店して早々、そこの店長とイイ感じに酔っぱらった常連らしきお客さんが延々と

「猪木と馬場、戦ったらどっちが強いのか？」

という、プロレスにあまり興味がないボクにとってはもちろん、最近のプロレス・ファンにとってもイマイチ食いつきづらい議題でエキサイトしており、とても面白スポットの話を聞けるような状況ではなかったのだ。

それでも一応、スキがあらば情報を聞きだそうと、なんとなーく店長＆おっちゃんの討論に加わりつつ、話を振られたら、

「いやあ、やっぱ馬場さんは大きいですからねぇ……えへえへ。猪木さんもアゴすごいですけど……」

などとテキトーに答えるという戦法で話題が途切れるのを待っていたところ、結局「猪木も馬場もどっちもスゴイ！」ということで猪木VS馬場論争は終結した。よっしゃこのタイミングだと面白スポット情報を聞こうと思ったら今度は、

「アブドーラ・ザ・ブッチャーは出血しやすくするために、試合前に額を紙やすりで削っていたらしい」

という話が開始。

……その話、ちょっと面白そうだけど最後まで聞いてたらボク、泥酔して寝ちゃうと思うので、目の前のウーロンハイをグイッと飲み干し、気合いを入れて会話に割り込んだ。

貧乏神神社だか幸福神社だか

「あのー、ブッチャーもいいんですけど……この辺に面白いお店とか場所ってありませんかね？」

話をさえぎられ激怒した店長にフォークで頭をぷっ刺されるんじゃないかと若干心配していたものの、意外とご機嫌のまま店長が答えてくれた。

「おー、それならアソコいったらいいんじゃないの。貧乏神神社！」

び、貧乏神神社!?　もう名前からしてステキなサムシングの予感しまくりだ。早くも完全に行く気マンマンで話に食いつくと、今度は常連のおっちゃんがこんなことを。

「えー、アレでしょ？　加島にある……アレは幸福（しあわせ）神社って名前でしょ」

ん？　貧乏神神社なの？　幸福神社なの？　かなり酒が入ったふたりの証言なので、どっちも信用しづらいところ。まあいずれにしても面白そうな神社ではあるけど……。

どうもふたりの話を総合すると、もともと「貧乏神神社」という名前だったへんてこな神社が、なんらかの理由で改名して今は「幸福神社」となっているようだ。

神社が改名するっていうこと自体、あまり聞いたことがないし、貧乏神→幸福という真逆ともいえるアプローチによるリニューアルもナゾ過ぎる。これは行かなくちゃ！

というわけで翌日、さっそく貧乏神神社だか幸福神社だかに行ってみることに。宿泊していた十三からバスで約15分。最寄りとおぼしき停留所が近づくと「幸福神社へお越しの方はこちらでの下車が便利です」というアナウンスがバス内に流れた。

え、そんなにメジャーなスポットなのか？　……と思ったけど、降りたのはやはりボクひとりだった。

アナウンスまでされていたのだから、この辺に神社があるのは間違いないんだろうけど、見渡す限り完全なる住宅街。こんなところにへんてこな神社なんてあるんだろうか。

……あ、あった！　「幸福神社」っていう看板が。閑静な住宅街の中、やたらと異様なオーラを放ちまくりの看板。幸福神社ってどんな神社なんだろう!?