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ひらめきの月曜日
 
初めての遠征〜名古屋タイフェスは雨だった

「遠征」…それは、自分の生活圏外で行われるイベント・コンサートなどに、新幹線や夜行バスで乗り込んでいく、思いきった行為。これを、やったことがなかった。

「フリッパーズ・ギター(私が好きだった伝説のお洒落アーティスト)が、大阪のイベントで、マメカラ(手持ちカラオケ)で歌って、ファンが喜ぶのを面白がって、自分の持ち物をプレゼントしだして、最終的には財布を取り出して、レシートを配ったりしてたんだけど、あげるものがなくなって、お金をファンにあげようとして、スタッフに止められてた〜」なんて話を聞くと、ああ、行きたかった! っていうかレシート欲しかった! とは思ったけれども。

当時は高校生で、全然お金が無かったので、仕方がない。しかし私も、今は大人。活動中のアーティストで、大ハマリしている人はいないけれど、毎年毎年、楽しみにしているイベントがある。代々木で行われる「タイ・フェスティバル」だ。タイ料理の屋台、タイ雑貨の屋台、タイ文化のステージなどがあって、それはそれは楽しいフェスである。

通って10年以上になるが、4、5年くらい前からは、大人気イベントになって、身の危険を感じるくらいに、みちみち激混みになった。でも今年は震災の影響で中止…。大阪と名古屋では開催、というのを知り、「年に1回、タイフェスに行かないと、生きていけないかも〜」と思い、「遠征」することにした。

計画してから、ずっと楽しみにしていた。「遠征」ってどのくら楽しいんだろう、と。ヤバイくらい楽しいんじゃないかな、って。だって「朝の新幹線で行って、一泊して、翌日の夕刻まで楽しんじゃう、一泊二日タイフェス満喫コース、もちろん全食タイ料理(予定)」だ。豪華。そして当日。あいにく台風2号が、そろりそろりと北上していた…。

大塚 幸代



とりあえず、新幹線に乗るとテンションが上がる。さっそくアルコールをキオスクで購入。そりゃ飲むよ、ああ飲むさ。

つまみ(朝食)はチキン弁当。テンションの高さが伺えるチョイスだ。車窓を眺めながら唐揚げをモソモソ食う。

東京から名古屋までは、新幹線だと2時間ほど。あっけな〜く到着。とくにお酒を飲みながらだと、「え、もう!?」という程の時間感覚。「遠征」にしては近過ぎたかなあ、と思いながら下車する。


駅のスタンドが「きしめん」になっている。うむ、名古屋だよ。実感ないけど。

目的地は名古屋の中心街の公園。デパートが並んでいるところの向かいあたり…。

あ、タイフェスだタイフェス! やってるやってる!すぐに会場に着いた。

しかし。えーと。えーと。えーと…。
思ったほどテンションが上がらない自分に驚いていた。
しとしと降る雨と、代々木のフェスより、ずっと小さい規模だったせいかな、と思う。


屋根のあるところには人がいるけど、ないところには全然いない。雨だから当たり前か。

とりあえずビール飲もう! と思って買ったもの。タイ語ばっかりで、成分表示がわからん。ビールかどうかもわからん。でも飲む。

そしてタイソーセージにかぶりつく。

ん、やっぱり、うまいねえ〜。ソーセージをもぐもぐ、ビールをぐびぐびやっていたら、じょじょにテンションがあがってきた。
しかし、何かこう…「遠征」な感じがなかった。名古屋の中心地っていう都会なロケーションのせいだろうか、旅情ゼロ。晴れていたら違ったんだろうか、どうなんだろう、と悩みながらウロウロしてみた。


東海地方や大阪からの出店が多かった。東京よりも、看板表示が分かりやすく出来ていた気がする。「トリラーメン」とか、「豚足のせライス」とか、タイ語での呼び方の併記がなかったり。

なんかものすごいスムージーマシーンが並んでいた。これ、晴れた暑い日だったら、大人気だったろうになあ。
豚の皮を揚げたおやつ。試食でひとかけらくれたんだけど、甘辛い味でした。試食しなければ「どんな味だろう?」と思って買ったのにな…。

積み上げっぷりが、すごい写真だ。こういう写真看板の過剰さは、タイフェスっぽい。祭りだ祭りだ。
プーケットビールってモンドセレクション金賞だったのか!(帰って調べたら、確かに4年連続金賞の快挙を果たしているのだけれど、現在、工場が洪水被害で停止中らしい…大丈夫かしら。)

カービング教室やタイマッサージ体験コーナーもあったんだけど、東京ならあっというまに予約が埋まってしまうのに、すいていた。やはり雨のせいだよね。
タイカレーのレトルトで有名なヤマモリが、震災チャリティの物販をしていた。中身を見せてくれて、選べたのだけれど、たぶん合計1000円以上の品を、500円で売っていた。お得。

タイ風味の焼き鶏を食う。これもまた、うまい。しかしやっぱり気分が高揚しない。

タイ料理チャンピオンが作るソムタム(サラダ)、というのを食べてみた。んー…正直、そんなものすごくウマイ! という感じじゃなかったが、歯ごたえが独特にコリコリしていた。どうやって切ってるんだろ。

身体が冷えてきたので、トムヤムクンヌードルを食べる。染みるわ〜。

現場に入って2時間後。すっかり身体が冷えていた…。
トイレはすいていたので、どんなにビールを飲んでも、並ぶ心配はなかったんだけれども…、ビールがノドに入っていかない。
ずーーーーっとタイフェス会場にいるつもりだったのに…。

体力を回復させるため、デパートに入り、地下街をぬける。
『赤福』の茶屋があったので、入ってしまった。名古屋名物ではないけれど、赤福、東京に無いし。つーかあったかいお茶、飲みたかったし。


15年ぶりくらいに食べたけど、美味しいね、赤福。そして抹茶のかき氷も絶品。

雨はこんなに人に打撃を与えるのか、屋根がある場所って素晴らしいな、と思いながら、東京から持ってきたメモを広げた。タイフェスが台風で中止になった時のために、用意したサブ企画(とあるものの食べ歩き)のためのメモだった。
えーと、タイフェス滞在を中断して、そちらの取材に行きました。次回(6月21日)公開予定。いいのか、そんな感じで。

……夕刻、ステージアクトの時間に戻って来た。タイのアーティストが歌うのだ。
ステージの前には、でーっかいテントと椅子が準備され、人が集まれるようになっていた。しかしこれが、ものすごく見にくい! テントの隙間から覗かなくちゃいけない。
でもタイ人のお客さんたちはノリノリ。ニコルさんという歌手の歌で、「ぶっさばー さばー さばー」と大合唱。その曲が、いつ、どのくらいの規模でヒットした曲なのかは知らなかったが、タイで有名な曲だっていうことは分かった(後で調べたら、『Bussaba』という1999年のヒット曲でした)。
あと、タイ人の人たちの、手拍子を打つ場所が、日本人と微妙に違うのが、興味深かった。


日本人で前のめりに見ていたのは、ディープなアジアンポップファンの方々。男性多め、高性能なカメラで写真とりまくっていらっしゃいました。

ファンの方が、花束を用意していた。そして1曲歌うごとに、1つの花束を渡して、一緒に写真をとってもらったりしていた。何個もの花束を定期的に受け取り、いろんなファンと交流するアーティストさん。タイって、こういう文化があるんだろうか? 代々木タイフェスでは、気づかなかった。
私の後ろにいたタイ通っぽいカップルが、「小さなステージだからって、有名な彼らがあんなことしてくれるなんて、贅沢だ」と言っていたけれど…。

きっと貴重なステージだったのだろう、ステージ目当てで来れば、これは充実感があるだろうなあと思った。寄り寄りで、無料でライブを見れて、隙あらば握手なんかも出来て、撮影を止められることもない。フェスだから。
私も妙な充実感を感じて、お宿にチェックインしに行ったのであった。


やっぱりタイ料理以外の名古屋名物も少し食べたくて、地元若者だらけの安居酒屋に入ってしまった。味噌カツうまし! 屋根があるところで飲む酒、うまし! 屋根最高!

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