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フェティッシュの火曜日
 
新宿でナナフシを見つけられなかった
 

生まれ育った土地に生息していない昆虫に憧れる。 地元は北海道なので、主なところだとカブトムシや カマキリが有名どころか。

ただ自分の中ではナナフシが見てみたい。小枝に似すぎな虫、ナナフシ。 図鑑で見てもその小枝具合が半端なく、ほんとにこんなのがいるのかと子供ながらに思っていた。

そんな折り、先日新宿でナナフシを見たという話を小耳に挟んだ。 えっ、そんな超都会にいるの?

ただそんな行きやすい場所にいるのなら好都合。 会社の昼休みにパンを買いに行くような感覚で、 カジュアルにナナフシを見つけたい。

そして見つけられなかった一部始終です。

小柳 健次郎



新宿でナナフシ見たよ

その情報源はバイト先の社長だった。

私事だが、最近バイト先の事務所が新宿中央公園近くに引っ越し、窓を開けてたらやたらでかい虫が入ってきて困る、意外と新宿って虫いるね、という話をしていた時の発言だ。初めて有益なこと聞いたと思った。

なお会社でこういった会話の輪に参加してるように思われたかもしれないが、自分は完全に輪から外れて盗み聞きしてただけである。


ここにナナフシがいるらしい。

ただ社長の発言ひとつで行動するほど信頼してるわけではない。ということでもないが、 ネットで調べてみるとナナフシは意外と都心部でも生息しているらしい。

また生息数もかなり多く、擬態してるから普段は目に付かないが探せば容易に見つけられるとの 記述もあった。

大人の虫取り

こういった数々の情報から新宿にナナフシがいることは間違いないと判断。 万全の装備を調えて、新宿中央公園でナナフシを探しを開始した。


万全の装備。

虫網と虫かご。虫取りと聞いて思いつく限りの装備である。 しかし大人は子供とは違い、もっと万全を期す。


蚊対策に虫除けスプレーを忘れないのが大人。
デジタル機器でナナフシの種類と生息場所を確認する大人。

少年漫画だとテクノロジーに頼りすぎてあっという間に悲惨な目に遭い、 野生の勘だけを頼りに活躍する主人公(下駄履き)に見下されるタイプだ。

しかしこれは漫画ではなく現実なので、使える物は使うのが正しい。 そこら辺の冷静な判断も大人ならではである。

新宿にナナフシ絶対いる

新宿中央公園は都庁隣の超高層ビル街にありながら、 緑が深く、都民の憩いの場というよりもはや憩えないぐらい鬱蒼としている。


箱根と言ってもいい(箱根に行ったことはありません)。

生息数が多く、都心部に多数いると言われているナナフシである。 この若葉香りすぎる公園なら当然いてもおかしくない。むしろいない方がおかしい。 ナナフシ捕まえるなんて楽勝だ。


梅雨時なのに晴れ渡った気持ちの良い午後。 世界は希望に満ちている。
子供時代以来の虫取り楽しい。

ちなみにナナフシは夜行性で、昼間はサクラやバラなどの 葉っぱの裏あたりにジッとしてることが多いそう。

都合が良いことに中央公園にはサクラが多い。ジッとしてるなら捕まえるのも容易だろう。 いよいよもってして、ナナフシが見つからない理由が見当たらない。

まず見つけた物、靴下とハエ

探し方としては、とにかく公園にある草木を片っ端から見て回るしらみつぶし作戦だ。 特にサクラなどのナナフシが好きな木や葉っぱはよく見ることにする。


こういったいかにも虫のコロニーが形成されてそうな場所も探す。

まず靴下を見つけた。

新宿の大きい公園という場所からか、居住者も多く、日用品がそこかしこに転がってるのも目にする。 この靴下もそういう類いだろうか(ひょっとしたら新種のナナフシの擬態だったかもしれない)。


桜の葉の裏を丹念に調べるも、ナナフシ見つけられず。
代わりにハエが勝手に虫網の中に入ってた。

新宿にナナフシはたぶんいる

小一時間ほど探し回った結果、ナナフシは見つけられなかった。 見つかるのは載せるのをためらうような地を這う虫ばかりで、 テンションも下がってくる。

しかし中央公園は広い。 くまなく探し回ったら2、3時間はかかる。そのうちの4分の一が終わっただけだ。 まだまだ焦る段階ではない。


バラなど探してない植物はまだたくさんある。

しかし葉っぱを一枚ずつ見ていく方法は効率が悪く、 ナナフシの擬態もすごいから、いるのに見逃してる可能性も否定できない。

そこで同行してくれた編集部の安藤さんが提案した方法が、 傘を逆さにして茎を叩くことで、落ちてきた虫を傘に集める作戦である。 なるほど!


こういうときとっさに策が出る人は出来る大人って感じするよねー。

結果→葉っぱが傘に溜まっただけ。

人としてやってはいけないこと

さらに一時間ほど経ち、公園内の4分の3ほどを探し終えた。

そしてナナフシのナの字もないほど見つけられてない。 探し始めた当初はあんなに余裕で見つかる見つかる思ってたのに。 ひょっとしたら見つからないんじゃないか、そんな不安が頭をよぎる。


もはや虫取り遊びではなく、仕事である。
そんな中、安藤さんが不穏な動きを見せた。

安藤さんが遠くに離れてがさごそ葉っぱをいじり始めた。 なにをしだすのかと思ったら、


「ナナフシ隠したから見つけて」

いきなりなにを言い出すのか。言ってることが理解できない。 まさか既に見つけて隠し持ってたのか。 それかもしかして、ナナフシっぽい小枝を置いたとか。 それだけは、それだけはやってはいけない・・・。


まさか・・まさか・・まさか・・・。
そのまさかだった。

とりあえず見なかったことにしていただきたい。

 

もうなんでもナナフシ

さらに一時間が経過。もう公園の4分の4、一度見たところもまた見て回ってるので 4分の7ぐらいは探した。 それでもナナフシは全然見つからない。


大人は疲れると虫網を杖代わりにする。

それにしても、ナナフシが小枝に似てるということは、 ナナフシに似てる小枝もあるわけで、 いくつもの枝を見ているともはや区別がつかなくなってくる。


信じられないでしょうが、なんとこれはナナフシではありません。 バナナでもありません。

特にこういったナナフシが仕掛けた罠としか思えない小枝があると 精神にくる。もうなんでもかんでもナナフシに見えてきてしまう。


もうほとんどナナフシ。
むしろどこがナナフシじゃないのか理解できない。

新宿にナナフシはいない

もうどれくらいの時間が経ったかも分からない。 いまだに日も暮れかけて薄暗くなった公園で、最初に探した場所をまた二度三度見て回る。

もう完全に見つかる気がしてないが、事前情報だとナナフシは夜行性だそうだから活発に 動き回ってるかもしれない。もう一度最初に来たサクラの木周辺を探してまわろう。


ナナフシが見つからないため、犬に吠えられる。
植物に人生相談してるように見えてくる。

そして結果は、


見つけられませんでした。

ナナフシは幸せのように、探そうとすればするほど見つからないものなのかもしれませんね。

目撃したのは新宿御苑

その後も暇を見つけては中央公園でナナフシを探してみるも、 やっぱり見つかる気配が全然しない。

あまりに見つからないので本当に新宿で見たのかと 朝イチで社長に聞いたところ、ナナフシを見たのは新宿御苑だったそうだ。 あーあったそんなとこ。いるわ、そこにナナフシいるわ。

聞いたときにはもう時間がなく、 御苑周辺を10分ほど探すことしか出来なかった (当然見つけられなかった)が、中央公園の何倍も広い新宿御苑である。 ナナフシがいることは間違いないの、 代わりに誰か探してください。

相変わらずナナフシみたいなものしか見つけられない。

 
 

 

 
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