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かくし芸
 
おっさん3人に佐々木希が宿った夜
東京カルチャーカルチャー「ドリームジャンボかくし芸大会」オープニングより

去る12月29日、東京お台場のカルチャーカルチャーにてデイリーポータルZの年末イベント「ドリームジャンボかくし芸大会」が催された。

そこで僕、榎並と当サイトライターの小野法師丸さん、安藤昌教さんは栄えあるオープニングアクトを務めさせていただいた。演目は「ダンス」である。

榎並紀行
(えなみのりゆき)
1980年生まれ埼玉育ち。東京でフリーの編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。


佐々木希を踊りませんか?

イベントの2週間前、編集部の安藤さんから一通のメールが届いた。

榎並さん
安藤です、お世話になっております。29日のかくし芸についてです

私と小野さん、榎並さんの3人で、佐々木希を踊る、というのを考えているのですが、お願いできますでしょうか

佐々木希 MAHALU PV - YouTube

↑これです

かくし芸というからテーブルクロス引きでもやるのかと思ったら、まさかのダンス。しかも、人気モデル佐々木希のキュートなナンバー「パペピプ♪パペピプ♪パペピプポ」 。

この直球ド真ん中のアイドルソングを、おっさん3人で踊ろうというのだ。


メンバー@小野法師丸(おっさん


メンバーA安藤昌教(おっさん)

メンバーB榎並紀行(おっさん)

やりたくない

うん、これはきつい。断わろう。正直言ってやりたくない。


だってそうだろう。なんせ3人合わせて105歳のユニットである。こんな昭和レトロなメンツで踊る佐々木希を誰が見たいというのか?


どう断ろうかと悩みつつ、とりあえずその日は就寝

すでに2人はやる気満々

なかなか返事をしない僕に業を煮やしたか、安藤さんから催促のメールが届く。

私と小野さんはすでに心を決めておりますので、榎並さんさえよければユニットが出来上がります

また、別のメールに添付されていた画像には必死で練習に励む2人の姿があった。


教則ビデオを見ながら反復練習する小野さん
進行表まで手作りしてしまう力の入れよう

(なぜか)寒空の下、練習に励む安藤さん
自動販売機の灯りを頼りにハッスル

何がそこまで2人を突き動かすのか、僕にはまったく分からない。分からないけど、僕だけが逃げるわけにはいかないということだけは理解した。2人の熱にあてられて、突如として沸き起こる謎の使命感。2011年の仕事納めが佐々木希に決定した瞬間だった。

そして、覚悟を決めたその日から猛特訓を開始した。


雨の日も

風の日も

最初にビデオを見た時には簡単そうに見えたこのダンス。じっさいにやってみると早いテンポで次から次へと振付が変わり、かなり難しい。まずはひとつひとつの動きを体に染み込ませるため、毎日朝と晩、1時間ずつ踊り込んだ。


クリスマスも

ただただ踊る。全ては29日、最高のステージを見せるため

そんなダンス中心の生活が始まって1週間。8割方仕上がった頃、安藤さんから合同レッスンのお誘いが届いた。

小野やん、ノーリー

イベントで披露するダンスの合同練習のおさそいです。個々の練習で精度をあげていくのが先だと思いますが、本番前に一度二度集まって合わせたいですよね。ご都合はいかがでしょう。

アンディ

ちなみに「小野やん」「ノーリー」「アンディ」とは3人で決めたそれぞれのニックネーム。「僕らはしばらくの間チームなのだからニックネームで呼び合おう」という小野やんからの提案で、これが結果としてチームの連帯感を高めることになった。

縮まっていく距離

その証拠に、呼び名を変えてからというもの、3人の間で交わされるメールもどんどんフランクになっていく。ちなみに、2人からクリスマスイブに届いたメールの書き出しはこうだった。

「メリークリスマス!アンディ、ノーリー
半額チキンを食べてゴキゲンの小野やんです」

「小野やん、ノーリー、アンディだよ。ステキな夜だね」

ひとりで過ごすイブ。しかし、温かい仲間たちに励まされながらダンスに没頭した31歳のクリスマスは忘れられないものになった。


そんなこんなで迎えた合同レッスンinニフティ
まずは一連の動きを確認

さらにステージ上でのフォーメーションをチェック
小野やんの発案で、曲の途中でポジションチェンジを試みることに

さらに、踊りのディティールを詰めていく
小野やんお手製の進行表

みんなちゃんと覚えてきた

ちなみにこの日は編集部が大森から新宿に移転した初日。引っ越し初日のまっさらな会議室、しかも一番広い部屋をリザーブしていたあたりアンディの気合いが伺える。

初めての合同レッスンではあったが、全員きちんと振りを覚えてきたため、数回合わせただけで3人の動きがシンクロするようになった。みんな自宅でかなり踊り込んできたことが伺える。さすがは全員30代。体力では現役アイドルに敵わないが、長年の社会生活で培われた責任感と勤勉さが僕らの武器だ。

ひととおり動きやフォーメーションを確認した後は、ディティールの確認。「どうしたらもっとかわいく見えるのか?」互いに意見をぶつけ合い、細かい仕草にまでこだわって詰めていった。99を限りなく100に近付ける作業である。


「肘はもっと内側に絞ったほうがかわいいと思うのよね」「そうよね」

そんな熱いレッスンは2時間に及んだ

みんなで衣装を買いに行く

手ごたえを掴んだ我々は、その足でステージ衣装を買いに行くことにした。


レッスン室を後にした我々
衣装を買いにドン・キホーテへ

ちょっと派手かしら
あら、似合うじゃない

無事に衣装も決定。本番での健闘を祈り、この日は解散

後は個人レッスンで精度を高めていく

あとは3日後の本番に向けて個人が踊りの精度を高めていくだけ。合同レッスンで生じた課題やディティールのかわいさを意識して、さらに踊り込んでいく。

練習ではしっかり踊れても、ステージ上では緊張しておそらく多少パフォーマンスは落ちるだろう。ミスをした時にパニックにならないよう、リズムに体が勝手に反応するレベルまでダンスを自分のものにしなければならない。


ジャンプ♪ジャンプ♪ジャンプ♪

もっともかわいく見える角度を模索

いよいよ本番当日

最後の3日間も毎日欠かさず2時間のレッスンに励んだ。もはや息を吸うのと同じくらい自然に「パペピプ♪パペピプ♪パペピプポ」のリズムを刻むことができる。いよいよ、本番当日である。


「東京カルチャーカルチャー」。ここが俺たちのステージ

本番4時間前。一番乗りでリハーサルを開始した

イベント開始は17時。全体のリハーサルは15時からだったが、我々はさらに2時間早い13時から最終のリハーサルを開始した。少しでも時間をかけてステージに慣れておきたいからだ。


ワン・ツー・スリー・フォー♪
パペピプポーッ♪

最高の仲間たちと共に

小野やんもアンディも合同レッスンの日からさらに踊りが上達していて驚いた。小野やんは大きな体躯を生かしたダイナミックかつキュートなダンスを完全にモノにし、アンディはかつて氣志團のバックダンサーで培った踊りのキレに磨きをかけていた。

もう、なんていうか最高だ!おまえら。


…そして迎えた本番のステージ
輝くスポットライトの下、僕らは踊った

ワン・ツー・スリー・フォー♪
万感の…パペピプポーッ♪

こうして僕らのステージは幕を閉じた。

大人の事情で動画をお見せできないのが残念だが、僕らは自分たちが現在持ちうる最高のパフォーマンスを発揮できたのではないかと思う。ありがとうアンディ、小野やん。そして何よりいきなりおっさん3人が踊り出す悪夢のようなパフォーマンスに対し、温かい拍手をくださったみなさん、ありがとうございました。


ステージを終え、健闘をたたえ合う3人

もちろん反省点はある、アンディや小野やんは少しミスをしたという。僕もノーミスで踊ることばかりに気を取られ、踊りが硬くなってしまった。

しかし今は、最高の仲間たちとステージを成功させた充実感を噛みしめたいと思う。

 

 
 

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