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コラボ企画
 
1000年分の歴史を瓶詰めにする
日本史、詰まってます

瓶詰め標本、というものがある。
有名なのは理科の授業に登場するホルマリン漬けだろうか。

理科室に並んでいるようなカエルやらヘビやら、は好き嫌いもあろうが、それはさておくとしても透明な容器の中に何かが封じ込められている様はなかなか美しい。

これ、要は空のガラス瓶さえ用意すれば簡単に作れるのではないだろうか。何を閉じ込めてはいけないという制約もない。自由な発想で、自分だけのオリジナル標本を。

早速実践してみたい。
例えば理科ではなく社会、日本史であればこんな瓶詰め標本はどうだろうかと思うのだ。

四方静香
(よもしずか)
1983年石川県能登半島生まれ。得意なことは透明樹脂を用いたアクセサリー製作。今後の人生でも何かしら「ものづくり」に関わっていけたらいいなぁと考え中。
> 個人サイト capria

瓶ウィークとは
ビタミン飲料の「C1000」とのコラボで瓶を使った企画記事を連続公開する1週間です。
瓶ウィーク記事いちらん


瓶に入れると少し良いものに見える理論

瓶詰め標本、要は透明なガラス瓶に好きなものを詰め込んだらいいのだ。

しかも、ガラス瓶に詰め込めば大抵のものはちょっと良いものに見える。という説を今ここで唱えたい。


実証しよう。適当なペンのキャップも、
一気に標本と化す。ガラス瓶マジック。
ごく普通の飴なのだが
あらあら、一粒500円の高級キャンディーかしら? となる
輪ゴムはどうだ
フランスからやって来ました(嘘)
じゃあこれは? さすがに無理か?
いや、少なくともゴミよりは一歩上の存在に見える。私には見える。

こういう類の現代アート(言い切れば何とかなる気がする)

やっぱり間違いない。瓶に入れただけなのに何だか素敵なものに見える。

「馬子にも衣装」の現代版で「小物にガラス瓶」という新ことわざはどうだろう。(どうだろうって言われてもね)


1000年分の歴史を

さてガラス瓶のポテンシャル確認ができたところで、肝心の瓶詰め標本制作だ。

使用する瓶はこちら、C1000ビタミンレモンの空き瓶である。


封を開ける前のC1000。これがガラス瓶という名のキャンバスになるのだ。
はい、なりました。ラベルをはがして準備万端。

さて、では中に詰め込むものを用意しよう。今回は日本史1000年分の標本を作りたい。なぜ1000年か、といえばもちろん「C1000」の文字からのひらめきである。

Cは「Century(世紀)」のCということでどうだろう、ちょっと上手いこじつけが言えた気がするぞ、と一瞬思ったがそれは1000年ではなく1000世紀だ。じゃあ「Ceireki(西暦)」のCというのはどうか。または「Nihon-C(日本史)」のCということで。(どんどん苦しくなっていくのでそろそろ黙りたい)

ともあれ1000年分の歴史をガラス瓶に詰め込みたいと思う。その頃何が起こったのか、西暦1〜1000年頃の日本史年表を辿りながら封入するモチーフを用意しよう。


縄文時代〜弥生時代。この頃に勾玉が多く作られていた。
その後、三世紀中頃〜の古墳時代。埴輪の登場。

この辺はパテ(粘土みたいなもの)で作ってある
形を整えて、色を塗って、埴輪の完成

塗料とシンナー(筆洗い液)の香りにくらくらしながらも、更に歴史は下って飛鳥時代。

603年、聖徳太子によってかの有名な「冠位十二階」が制定される。


冠の色は紫が最高位。黄色は真ん中あたり。

つまり、こうすると地位の高い埴輪
なんだよあいつばっかり出世しやがって…(という確執もあったかもしれない)

更にその後794年、鳴くよウグイス、で知られる平安京が誕生し、ここから華やかな平安時代が始まる。


十二単のお姫さまをイメージ
恋文は和歌でお願いいたします

そしてちょうど西暦1000年の辺りで、「枕草子」「源氏物語」といった名高い書物が生まれている。


絵巻物を再現。パテで大まかな形を作り、本物の和紙を貼る。
本文には当サイトのイメージキャラクターを起用。

こうして、約1000年分の日本史を代表する小道具たちが揃った。(簡単そうに見えるが実は制作に丸二日かかっている)

早速ガラス瓶に閉じ込めて標本にしよう。


完成、日本史の瓶詰め標本


まずは背景として、草むら+木の枝を配置

これだけでもジオラマ感が漂ってうっかり満足しそうになるが、主役たちの登場はまだこれからだ。

では古いものから順番に。


一番下に勾玉。隙間は透明樹脂で埋めていく。

瓶の口が細いのでボトルシップの容量でパーツを置くしかなく、しかも一度配置したらもうほとんど動かせない。理想の位置に勾玉を固定するのはなかなか一苦労だ。

おまけに今回使用した樹脂は気温が低いと固まらないタイプのものだったので、制作期間中に雪が降ったりした日にはかなり焦った。じりじりしながら硬化を見守り続けた数日間。収穫間近に台風が接近してきたリンゴ農家ばりの緊張感だった。

その末の完成品がこれだ。


このガラス瓶には歴史が詰まっています(文字通り)

無事に完成したのが嬉しくてつい近所の公園まで撮影に飛び出してしまったが、冷静に考えればわざわざ公園で撮る必要はない物体である。おかげで舞台設定がよく分からない写真になってしまったが、それはそれとして中身を一つずつ見ていこう。


勾玉より少し上に埴輪。なかなか可愛く造形できたと思う。愛着が沸きすぎてなかなか瓶に入れる踏ん切りがつかない、という謎の葛藤を経たりもした。
その斜め上あたりには2つの冠が浮かぶ。
平安美人は御簾越しならぬ枝越しに、この角度から眺めるのが気に入った。

一番上には絵巻物。
笑うZくん(配役は光源氏あたりだろうか)

これは楽しい。ガラス瓶の中に好きなものを詰め込んでぷかぷかと浮かべれば、それだけで簡単に標本となる。

身の回りの要らないもの、でも捨てるには忍びないもの、そういった小物を片っ端から瓶に詰め込んで標本化したくなった。(ますます捨てられなくなりそうだけど)


今こうして、1000年の歴史が手の中に

透明なものは良いものだ

全くもって個人的な話だが、「透明な中に何かが閉じ込められているもの」が好きで好きで仕方がない。ガラス瓶+透明樹脂でそれが手軽に作れてしまうのだ。できればもっと色々なものを封入したい。

例えば文字を閉じ込めて、「メッセージボトル」というのもいいかもしれない。作ってみようかしら、しょうもないダジャレとか浮かべてみたりして。

ビフォーアフター

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