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コラボ企画
 
ドバイの砂漠で干物を作る

砂漠である。

バスを降りた途端、目の前に広がる光景に愕然とした。

リアル砂漠である。こんな場所まで市内を走るバスで来られるのがすごい。

そしてさすが砂漠だけあって暑さのレベルが違う。巨大なドライヤーをターボで吹き付けられているような暑さである。暑い、というか熱い。風が吹くと熱さが痛い。

着いてすぐ、同行の地主さんが吐いた。荒野を走るバスに酔ったのに加え、熱風にやられたのだ。これにはさすがに不安になった。

このとき、手元の温度計では48度を示していた。もう人の住むところじゃない。まあ砂漠だから人どころか生き物自体あまりいないわけだけれど。

気温としてはあまり見ない数字である。暑さもさることながら、湿度の低さもかなりのものだ。さすが砂漠。
遠近感がおかしくなっているので、すぐそこに見える木がまったく近づいてこなかったりする。

ちょっと歩くと体から水分が蒸発していくのを肌で感じる。持って行ったペットボトルの水がほどなくしてお湯にかわっていた。それでも飲まないと、と必死で飲む。

これはまずい。ミイラ取りがミイラに、というたとえがあるが、このままでは干物干しが干物になってしまう。あまり時間を無駄にはできない。

口数の減った地主さんを木陰に休ませ、目的の干物作りを開始した。

木陰といっても45度あるわけですが。
そんな中、いよいよ魚を干します。

恐怖を伴う暑さ

砂漠ではほとんど汗をかかないこともわかった。

すぐに蒸発してしまうからかもしれない。おかげでべとつかない。さらさらしたパウダー状の砂は粒が細かく、しわの一本一本、毛穴の一つ一つにまで入り込んできた。日本でいうところのきな粉みたいな砂だ。その後三日くらいずっと体のどこかから砂が出てきた。

魚を干す作業を終え、持っていた温度計を見たら表示が88度になっていた。振り切ったのだ。怖さと面白さが混在したゆらゆら揺れる感動を味わった。いまおれ、すごい場所にいる。

熱すぎて壊れた。
まあ壊れるわな。

しかしこれ、干物を作る条件は完全に満たしているではないか。水分はほとんどない(砂漠だから)。吹きすさぶ風は熱風(砂漠だから)。雨なんてたぶんあと2ヶ月くらいは降らない(いま酷暑期だから)。干される側にとってはまさにパーフェクトな環境といえる

 

だろう、地主さん。

地主さんはたまにふらふらと遠くに行ったかと思うと。
何度も吐いていた。すまない。

しかし暑さの恐怖に反して、砂漠の美しさには感動せざるを得なかった

すばらしい。

この光景を見るためだけにドバイに行くのもありだ思う。べつに魚を干さなくたっていいのだ。市街地から1時間くらいバスに乗ると360度この景色である。見たことのない景色の中に自分の足で立つということは、心から達成感と感動があるものです。

立っているだけで干物になりそうな温度ではあるけれど。
肝心の干物のできはどうだろうか(写真の左右が欠けているのは砂でカメラが壊れるのを恐れた地主さんがタオルで覆いながら撮っているからです)。
みるみるうちに乾いていった。
わずか1時間半でこの出来である。

結局砂漠で1時間半、魚を干した

大きく息を吸うと肺が熱くなるような環境に1時間半である。地主さんには「明日の朝食はバイキングを予約していますから!」という情報を伝えてなんとか持ちこたえてもらった(実際には予約できていなかったのでスーパーでパン買ったのだが)。

水をたくさん飲んで徐々に元気を取り戻した地主さんも最終的には楽しんでいたようなので、まあ結果オーライである。

ふらふらしているように見えるのは砂が熱いせいもある。

こうして出来上がったのがこの干物である。

さっそくホテルで焼いて食べた。

砂漠で干すと干物にも感動できる

味に関して言えば、小田原で食べた干物の方がうまかったかもしれない。

でもそういうことではないのだ。僕らはこれを砂漠で作った。その重みを、ぱりっと乾いた干物の一枚一枚に感じることができた。

ほぼ思いつきだけでやってきたドバイの砂漠だったが、帰ってきて思うことは、かなうことならもう一度行きたい、である。次は干しブドウでも作ってみたいものだ。あそこまでの非日常は旅に出なければ絶対に味わえないだろう。


魚を干すなら砂漠

さすが砂漠、干物を干すには適しているといえた。虫もいないので干し網がなくても大丈夫かもしれない。

なにより僕たちは今、やる気さえあれば次の日にだって地の果てのような場所に立てるようになったのだ。今回の旅でそれを実感することができた。これはすばらしいことだと思う。

旅に出ると世界が広がるというけれど、砂漠に行くと多かれ少なかれ人生観が変わると思います。行くときは大量の水を持って行くのをお勧めしますが。

生きてるとこに感謝するようになる。

この旅の日々の出来事はリアルタイムで更新していました。その記録はこちら(ドバインド!)。航空券・ホテルの予約サイト「トルノス」ならばこんな旅も思いついたらすぐに行けます。



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