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ちしきの金曜日
 
ネギだけでバーベキュー

例えば焼き肉屋さんでカルビを頼んだとしよう。肉にネギが添えられていたりして、肉と一緒に焼くことがある。大抵肉に夢中になってしまい、ネギは端っこの方で焦げていく。焦げたネギはやがて炭化していき網を取り替えるタイミングで捨てられてしまうのだ。

これではネギがかわいそうである。

たまにはネギを主役にしてあげたい。ネギしか焼かないバーベキューはどうだろう。

住正徳
(すみまさのり)
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。
> 個人サイト すみましん


色々なネギを築地で買い出し

肉を焼いたり魚介を焼いたり、栄養のバランスを考えてたまに野菜を焼いてみたり。ビール片手に男女で談笑しながら、歌ったり踊ったりおどけてみたり。本来バーベキューとはそういうものなのだと思う。

でも、今回は肉も魚も焼かない。焼くのはネギだけだ。想像しただけでも地味である。

さすがに飽きてしまうことが予想されるので、色々な種類のネギを集めることにした。ネギと一口に言っても色々な種類があるはずだ。そして種類が違えば味も違うだろう。ネギだけ、という縛りの中でもバリエーションを変えていけばきっと楽しいはずだ。

普通のスーパーにはそれほど種類を置いていないだろうから、築地市場へ買い出しに行った。築地には青果を扱うお店も沢山ある。


平日の午前中から多くの客でにぎわう築地

しかし平日のお昼前なのに築地市場は買い物客でごった返している。年末か、と思えるほどの混雑だ。青果店をいくつか回ってネギだけを買っていく。せっかくの築地だから新鮮な魚介類を買いたい気持ちが高まるが、ここはグッとがまんしてネギだけを探す。


形に惹かれて購入しそうになったバターナッツ

小一時間築地の場外市場を回り、最終的に7種類のネギを手に入れた。


今回の主役。ネギたち。

上の写真右から、普通の長ネギ、あじさいネギ(千葉県産)、九条ネギ(京都産)、やっこネギ(高知県産)、福じいさんのネギ(九州産)、下仁田ネギ(群馬県産)、京丸姫ネギ(静岡県産)。

以上が今回のバーベキューの主役たちだ。
他の食材は一切用意していない。

ネギだけで満足出来るのだろうか? 
バリエーションを揃えてみても不安がない訳ではない。

 

バーベキュー会場はお台場のカルチャーカルチャー(バルコニー)

今回のネギだけバーベキューの参加者は3名。僕と林さんとひよせさんだ。

林さんは無類のウインナー好きな訳だけど、今回、ネギだけで耐えることが出来るのだろうか? しかし、そこは心配無用である。そもそもネギだけでバーベキューをやってみたいと言い出したのは林さんなのだ。最終的な責任は林さんにあると僕は思っている。

そして、ピロリ菌の歌を作ってくれたひよせさんもご招待した。歌手は喉が命だと聞いている。風邪を引いた時などネギを喉に巻くくらいだから、きっとネギは喉にいいのだと思う。今回のバーベキューで美声に磨きをかけていただければ幸いだ。


特設バーベキュー会場(カルカルのバルコニー)

カルチャーカルチャーのバルコニーをお借りして机と椅子を用意した。あとはネギをどんどん焼いていくだけであるが、まずは買ってきたネギたちを切らないといけない。

この日、カルチャーカルチャーでは玉袋筋太郎さんの「スナック玉ちゃん」というイベントが開催される予定で、店員さんたちがその準備を始めている。忙しい中申し訳なかったのだが、カルカルの料理人さんにネギを切っていただいた。


職人さんの見事な包丁さばき

手際良く準備してくれた

料理人さんはネギを5センチ大に切り分けて、種類毎にビニール袋に入れてくれた。

ビニール袋越しでもネギの匂いが分かる。ぷんぷん匂ってくる。私はここにいます、というネギの心の声が聞こえたような気がする。大丈夫。今日は焦がして捨ててしまうようなことはない。


今日のおかずはネギ

7種類のネギを食べ比べ

さあ、ネギだけバーベキューの準備は整った。

早速、普通の長ネギから焼いていこう。


まずは普通の長ネギから

網の上で焼いていく

網の上に長ネギが3本。想像していた通り地味なバーベキューである。肉のようにジュージューという音もしない。何より、焼き上がるまでのワクワク感がない。

いやダメだ。

見た目の地味さなんて関係ないのだ。大事なのは味だ。ネギの味を楽しめばいいのだ。
普通の長ネギが焼き上がるのを待とう。


ネギが焼けるのを待つ

しかし、ネギはなかなか焼けてくれない。

「結構時間がかかるものですね」
「今日はそれほど寒くなくて良かった」
「絶好のネギ日和ですな」

などと3人で悠長に会話を楽しんでいたら、


早速焦げた

早速、裏側を焦がしてしまった。

そうか。ネギは焦げやすいのだ。注意深く様子を見ておいてあげないと、すぐに真っ黒になってしまう。面倒な恋人みたいなものか。いや、それは言い過ぎか。

焦げた部分は剥がして中のネギにタレをつけていただこう。タレは3種類用意した。


焼き肉のタレ、ポン酢、味噌をご用意

焼き肉のタレも一応用意しておいたが、3人ともポン酢を選択した。

ポン酢でいただく普通のネギの味はどうだろう?


実食

1種類目、普通のネギをバーベキューした感想は以下の通りだ。

林「からみの中の甘みがツンデレですね」
ひよせ「デレの頻度が週1くらいでしょうか。ツンの割合が高い」
住「中が良く焼けていないから、僕のはツンツンです」
林「まぁ、ネギでの味ですよね」
ひよせ「どこまでもネギです」
住「だってネギですから」

続いて、下仁田ネギ、九条ネギを一気に焼いていく。


手前左:下仁田ネギ、手前右:九条ネギ、奥:普通のネギ2本目

林「下仁田ネギは辛さが一切ないですよ」
住「泥つきだったから期待してたんですが、裏切らなかったですね」
ひよせ「素朴な味わいが優しいですがやっぱりネギですね」

林「昔、蒲田の酒屋でお酒を買うとネギをくれる店がありました」
住「どういうシステムですか? それ」
ひよせ「サービスの一環で?」
林「多分、店主が畑を持っていたんじゃないかなぁ」
住「それはそうと九条ネギはどうですか?」
林「ちょっと分からなくなってきました」
ひよせ「どれもやっぱりネギだから」

3種類目にしてメンバーから弱音が出始めた。

後半戦は厳しい戦いに

しかし、林さんはアクティブに次のネギを手に取る。


4種類目:福じいさんのネギ

4種類目の福じいさんのネギは、

「これは有機無農薬で本当においしいから!」

とお店の人が自信満々で薦めてくれたネギである。
僕が色々なネギを集めているんです、と言うと

「俺も最近ネギが好きでねぇー、ネギはいいよなぁー」

としみじみ語っていた。

きっとおいしいに違いない。

林「うーん、ちょっと辛いかなぁ」
ひよせ「ネギ感が強いですね」
住「うん、ネギだ。ストイックにネギだ」

引き続き5種類目は、やっこネギである。


やっこネギ

根元部分を焼いてみる

住「薄々気づいてると思うんですが、これは焼いて食べるネギじゃないですよね」
林「ええ」
ひよせ「薬味的に使うものでしょうか?」
住「どういう食べ方が正解か分かりませんね」
林「焼かない、ってことだけはなんとなく分かりますが」
住「でも、今日は焼く」

そして、軽く炙ったやっこネギを食べて驚いた。もの凄く辛い。間違った食べ方をした我々を叱りつけるような辛さである。

6種類目のあじさいネギに優しさを求めてみよう。


エントリーNo.6 あじさいネギ

林「あ、普通にネギだ」
ひよせ「ネギ、ですね」
住「うん、ネギです」

もう、3人とも感想が「ネギ」しか出てこなくなってしまった。だって、全部ネギだし、どれもネギの味だし。

そして、2人には言えなかったのだが、6種類目のネギを口に入れた瞬間、軽く吐き気がしたことをお伝えしておこう。あじさいネギが悪いのではない。ネギを食べ過ぎたのだ。5センチずつ食べているから既に30センチ分のネギを食べた計算になる。ほぼ長ネギ一本分だ。今までの人生で、一気にこれだけの量のネギを食べたことがない。

気持ちを強くもって、最後に京丸姫ネギを食べてみる。


エントリーNo.9 京丸姫ネギ

きっとこれも間違っている

先ほどのやっこネギと同様に、この京丸姫ネギも焼くものではないのだろう。それを証拠に、網の上に置いた瞬間からチリチリと音を立てて縮まり始めた。

これはどう見ても細かく刻んで冷奴などにかけて食べるネギだ。築地で買った時から気づいていた。

林「あ、これは凄くおいしいですよ」
ひよせ「ええ、焼かなければもっとおいしいと思います」
住「本当だ! 生で食べたらこれだけでビールのつまみになりますよ」

そして、ネギを歌にする

ここまで7種類のネギを食べ比べてきたが、ネギの味の違いをうまく言葉にすることは難しい。だから、今日のバーベキュー体験を歌にすることにした。というか、最初から歌にするつもりでひよせさんを呼んでいたのだ。

7種類食べて感じたこと、思ったこと、みんなの感想をネギを焼きながら歌詞にしていたのである。

その結果が次の歌詞だ。


「ネギのうた」

どこまでいってもネギでした
初恋相手は猫でした
Uhー、長ネギ

下仁田ネギは泥つきで
昔のオイラはゴロつきで
Uhー、下仁田

食べるところが少なくて
京都のネギはせつなくて
Uhー、九条ネギ

福じいさんは賛否両論
正子の相対性理論
Uhー、九州(ネギ)

私はここにいます さがして
Looking for ネギ

いつも焦がしてゴメンね さがして
Looking for ねぇ、君

 

焼くもんじゃないやっこネギ
ひと皮剥いたらカーネギー
Uhー、やっこネギ


これを僕のラップとひよせさんの歌で表現していく。

ラップ部分のリズムトラックは林さんが作ってきてくれた。


リズムトラックを聞きながらラップ部分を収録

バーベキュー会場で、林さんのリズムトラックに合わせて僕のラップを吹き込んだ。

それをひよせさんが持ち帰り、メロディと歌を吹き込んでくれた。後日ファイルが送られてきたのが、ファイル名が「ネギのうた 23.mp3」となっていたから、23回目に完成したのだろう。前回のピロリの歌に引き続き、厄介なことを引き受けてしまったと思っているに違いない。

しかし、送られてきた「ネギのうた」はとても素晴らしく仕上がっていた。

 

ネギのうた

           

 

やはり、何事もバランスが大事だと思うのだ。肉があって魚もあって、そしてネギもある。ネギだけを一気に食べるとしばらくネギの顔を見たくなくなってしまう。だから、ネギとは今までと同じ距離感で付き合っていこうと思う。でも、今までみたいに焦がすようなことはしない。多分。

ネギだと思って買ったらウドだった

ライブ情報

ひよせさんの音楽ユニット「ひよげ」がライブに出ます。
12/7渋谷guest「GANBARA  NIGHT」
お誘い合わせの上、是非。


 

 
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