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コネタ


コネタ019
 
ニコタマがツタに飲まれていく
謎の塔を車窓から見たところ

東急大井町線に乗った。あまり乗ることのない路線で、窓から沿線の風景を眺めていると、二子玉川駅に近づいたあたりに、異様な建造物があるのを目にして、しばし釘付けになった。

「なんだ、なんなんだあれは。」

緑色のもこもこした塔が見える。よくよく見ると、それがいったいなんなのかは想像はできるが。ちょうど二子玉川に用事があったので、少し足を伸ばして、そこまで歩いてみることにした。

行ってみたら、他にもニコタマは大変なことになっていた。

乙幡啓子



おもちゃやの軒のビニールボールが泣かせる。

駅を降りて、 あれの立っている方面に足を向ける。ハイソ感のある山の手と化した高島屋方面とはうって変わって、懐かしい感じの商店街が続く。

ぶらぶら歩きながら、ふと脇道を見やると、そこにも緑色のもこもこが。「?」

吸い込まれるように近づいてみたら、駐車場の奥で家が一軒、飲み込まれていた。

駐車場の生垣と続いちゃってる。
カッコイイ車の下にも・・・と思ってよくよく見ると・・・

 


「!」 怖さを感じる。地を這ったツタはよりどころを果てしなく求めて、ついに車の心臓部にたどり着こうとしている。しかし持ち主はどこで何やってるのか。

同じ駐車場から、この家も包囲されてしまった。 ここまで来るとなにがなんだか。

梅雨前の酷暑の日だというのに、背筋の凍る思いをしながらニコタマの町をさまよった。そしてついに、立ち並ぶ家々の向うに目標物を見つけたのだ。


家々の間から、不自然な形の緑が突き出る。

あとひとふんばり。なんとしてもあのふもとに立ってみたいのだ。そこには何があるんだろうか、あるいは何もないのか。




だんだん、「ツタに侵食された隣国に姫を助けに向かう王子」の気分に、私はなっていた。そんな目にあったことはないが。

よくわからないが義務感のようなものさえ感じてくる。暑いせいだろうか。
そして、やっと全貌が見えてきた。


これか・・・

逆方向から。ヒロ帽子店、なぜか「電話(銀座)・・・」となっている古い電柱看板と共に。

写真に収めるのは大変でした。

長いこと、下から見上げていた。夕方が近づいて、風が出てきた。風が吹くと、何層も重なっているツタがいっせいになびいて、波打った。


きれいに層状に取り巻いているツタ。

ザーッと風が吹くと、葉の間から何かパラパラと落ちてくる。風が吹くたび、かなりの量がいっせいに落ちてくる。

そばを通りかかった地元の人に聞いてみた。




「ここは、お風呂屋さんですよね?いつ頃から閉めてしまったんですか?」
「そうねえ、1年くらい前からかな・・・」
「え!1年でこんなにツタがからんじゃうものなんですかね!」
「そうよぉ、ツタは成長が早いんだから」

確かに、道中で見た繁茂の様子を見ればうなずける。

「あー、こんなに芽吹いちゃって・・・」

え?このパラパラ落ちてくるの、芽なんですか?

「そうよー。あ、煙突の壊し方って知ってる?人が上に乗っかって、ガシガシ手で割っていくの、昔はね・・・」

他にもいろいろ話が出てきてしまった。


「パラパラ」の正体。ほんとだ、芽だ。 そして当然家屋もツタだらけ。

文明の生んだ建造物にツタが絡んでいるのを見ると、なんだか宮崎アニメを思い出す。ラピュタとか。廃墟を植物が覆うと、「おろかな人間の所業を悠久の時が包み込む」という、厳粛だがやさしい光景になるのだなと思った。

所業といったってまあ、もとは風呂屋なんですけどね・・・。


 

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