ふらりと立ち寄った夕暮れのスーパー。納豆売場にひっそりとたたずむあやしい箱。そこには「テンペ」と書かれていた。「テンペ」って何だろう。私は惹きつけられるようにそれをカゴに入れ、家路を急いだ。
(上泉純)
さて「テンペ」だ。箱の説明によると、「テンペ菌」で大豆を発酵させたインドネシアの食べ物らしい。納豆菌で発酵させれば納豆、テンペ菌ならテンペ。単純明快だ。
早速箱から出して見る。パッケージの内側にはレシピが4つ。主役のテンペは真空パックで包装されている。見た感じ、まんま納豆だ。色はちょっと薄いけれど。
見た目まんま納豆、ということはニオうのか?私ははやる気持ちを抑えて、丁寧にパックを破った。くんくん。あ、普通に豆のにおいだ。煮豆の鍋のフタを開けたときのあのにおいに近い。
今日の晩ごはんは、パッケージの裏のレシピ集から、「テンペのサラダ」と「揚げテンペ」に決めた。サラダの方は、千切りにしたテンペをレモン醤油で下味を付けてからフライパンで焼き、千切り野菜と合わせてドレッシングをかける。「揚げテンペ」は薄切りにしたテンペをにんにくレモン醤油で下味を付け、油でフライにしてかりかりニンニクを乗せる。簡単そうだ。
あっという間にできあがり。サラダには、大根、キュウリ、タマネギ、人参の千切りを加えた。ドレッシングは、オリーブオイル、砂糖、醤油、こしょうを合わせたものと書かれている。ちょっとなめてみたら、まんま「みたらし団子のたれの味」なのでちょっと不安になった。お酢を加えたいが、これもインドネシア風なのだと自分を納得させる。
揚げテンペの方は、そのままだと大雑把な居酒屋風なので、ししとうの丸揚げとミニトマト、かりかりに揚げ焼きした目玉焼きを添えてみた。
まずサラダを口に運ぶ。む、意外なまでにうまい。味の傾向としてはちょっとえぐみのある大豆の水煮だが、件のみたらしのタレ風のドレッシングがよく合う。特にタマネギと一緒に口に入れるとおいしい。揚げテンペは文句なしに美味。サラダより高温で熱しているせいか、大豆の甘みと焦げた醤油の味がいい感じ。かりかりニンニクもよく合っている。目玉焼きのゆるい黄身をからめて口に運ぶと、これまたアジアなお味がなかなかよろしい。
かくして謎の食べ物「テンペ」はもっとメジャーになるべきポテンシャルを秘めた実力者であることがわかった。
旭松食品株式会社HP(「テンペ」も「カレーなっとう」も載っていません。何故?)