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コネタ


コネタ046
 
漁船に乗って夜光虫を見よう

夜の海で青白く発光する夜光虫を見るため、大島に行ってきた。今の時期、夜光虫が大量に発生しているという。
夜光虫観測ツア−の漁船に乗り、夜の海を沖合いへと向かっていきます。

住正徳


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この漁船で観測ツアーへ


19時30分、大島の岡田港から観測ツアーはスタートする。
14人定員の小さな漁船に乗り込むと、船長さんから簡単な説明があった。

「船で波をおこして夜光虫を刺激します。そうすると夜光虫が発光するんです。航跡に反射する夜光虫が見れるはずですよ」


そもそも夜光虫とはプランクトンの1種。分裂によって増殖していき、増え過ぎると赤潮となって昼の海を赤く染める。夜になると、そのプランクトンが波などで刺激を受けて青白く発光するらしい。


「周りが明るいと良く見えないので、街灯りのない沖合いまで行きましょう。フラッシュをたくと見えづらくなるので、たかない方がいいです」

という訳で、船上の様子は全て暗視モードにて撮影しております。ご了承ください。


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舵を取る船長さん 沖合いに向かう


船は結構なスピードでグングン沖合いを目指す。小さな船なので揺れが大きい。エンジンがごう音を上げている。


今回の取材に同行してくれた林さんが、隣りで不安そうにしている。船酔いを心配しているのだ。ツアーの予定は2時間。船に弱い林さんにとっては、かなりの危機的状況だ。


住「今気付いたんですけど、船の波を利用するって事は、走り続けるって事ですよね?」
林「僕もそれを心配していました」

この揺れで2時間。船には自信のある僕でも少し厳しいかもしれない。
しかし、夜光虫を見るためだ。これくらいのリスクは仕方がない。


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どこまで行くのだろうか?


30分が経過した。
まだ夜光虫は見えないが、ようやく街灯りが海面に反射しない所までやって来た。あとは月明かりがなくなれば完全に真っ暗になり、夜光虫を観測しやすい状況になる。
船はずっとノンストップで、僕たちは夜の海に出来ていく航跡をジッと見つめている。


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夜光虫のいそうなスポットを探す船長さん


船長さんは仲間の船と無線でやりとりしている。
「昨日は灯台の向こう側で見えたから、ジジ」
「今日もあの辺に行ってみる、ドウゾ」


右に左に蛇行しながら船は相変わらず揺れている。
航跡はいっこうに光らず、これはもう駄目なんじゃないだろうか。
船の中にそんなあきらめムードが漂い始める。船長さんは「毎回見れる訳ではないので」とか「やっぱり自然相手なんでね、絶対って事は…」とか、言い訳っぽい話をし始めた。


そして1時間が経過。
月が雲に隠れ、辺りは真っ暗に。


旅館に戻ってビールを飲みたい。
走り続ける船の上で、キンキンに冷えたビールの事を考え始めた頃、林さんから声があがった。



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身を乗り出して 光を見つけた!

 

林「光った! 光りましたよ、あそこ」
住「えっ? どこですか?」


僕も身を乗り出し、航跡を見る。


光っていない。
林さんも帰ってビールが飲みたいのだ。だから見えた事にして…


「あっ!本当だ!」
光った。航跡が光った。

 

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ちなみにフラッシュをたいて撮影してみるとこんな航跡。この航跡が青白く発光した。


そしてここから、夜光虫が続々と発生する。
船の脇の水しぶきにも、チラチラと光る夜光虫の姿を確認出来た。

 

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暗視モードでの撮影では夜光虫の発光が写らない。スローシャッターで撮影出来ればいいのだが、船が常に動いているのでそれも出来ない。証拠写真が撮れず残念でならないが、確かに夜光虫は発光していた。

 

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観測ツアーは予定通り2時間で終了した。
船長さん曰くいつもよりは少なめだったらしいが、それでも僕たちはしっかりと夜光虫の発光を見届ける事が出来た。

 

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ノックアウト

 

目的の夜光虫を見る事が出来たので、僕は早く旅館に戻ってビールを飲みたかったけれど、林さんはそれどころじゃなかったようだ。


今度は船の上でビールを飲んで先にお酒で酔ってしまう、っていうのはどうでしょうか?
夜光虫を眺めながらのビールなんて、いい感じだと思います。

 

※夜光虫観測ツアー 1人2,000円(秀作丸 tel:04992-2-8746)


 

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