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コネタ137
 
夫婦二人の手作りマンション
沢田マンション外観。

以前から、高知県の沢田マンションに行ってみたくて仕方がなかった。

テレビ番組や書籍で何度か紹介されているのでご存知のかたも多いだろうが、この沢田マンション。ただのマンションではない。

設計から基礎工事、配管、塗装にいたるまで全て夫婦二人の手だけで手作りされた、世にも珍しい「セルフビルド建築」なのだ。にわかには信じがたいけれど本当の話であるらしい。

そこで今回は、夏休みを利用して高知の沢田マンションを訪れてみたレポートを紹介したいと思います。

一体どんな建築なのか? どんな人が住んでいるのか?

(text by ステッグマイヤー名倉

一見どうってことない普通のマンションなんだけど……。

ついに対面

JR高知駅から高速道インター方向へ車で10分程度、高知市薊野(あぞの)の国道沿いに沢田マンションを発見した。おおっ、これだ!!

が、表通りからざっと見渡してみても、変わったところはとくにない。夫婦二人だけでこれを作ったのかと思うと確かにとてつもないけれど、「手作り感」があまりないのでちょっと拍子抜けである。

…と油断していたのが間違いだった。内部に進むにつれて、その個性をまざまざと見せつけられることに。


沢田マンション入口。左側の微妙なスロープが手作りっぽさを醸し出す。

内部に入ってみる

周囲に誰もいないのを見計らって、入口からマンション内部に入ってみる。

無許可なので下手すりゃ住居侵入罪だよなァ。…とおびえながら、辺りをキョロキョロうかがいつつ素早く移動。ますます挙動不審で怪しさ全開である。

建物の左側を取り巻くスロープが妙にでこぼこしていて手作りっぽい。ちょっと心が和む。


廊下に直接、部屋が面している。

一階の廊下

一階に足を進めると軒を連ねる部屋にさっそく遭遇した。

ただ気になるのは、ガラス張りの部屋がそのまま廊下に面している点。カーテンを開けたら廊下から中が丸見えではないですか!?

でもこれは、「住人同士のコミュニケーションを促進させるため」という設計思想であるらしい。ううむ……。

誰かに見られたら顔から火が出そうなことばかり部屋でやっているぼくなどは、生き方の転換を求められそうだ。


廊下を歩いてるだけでこの光景。

二階にてお部屋拝見

もちろん無許可である。というか、廊下を歩いていたら、おのずと部屋の中が見えてしまうのだ。

洗濯物もご覧のごとく、お互いに公開し合ってるようなエキシビジョン状態(写真には撮ってないがブラジャーやショーツも平気で干してあった)。

…洗濯物くらいで騒いでるようなヤツは、ここ沢田マンションに住む資格などないのでしょう。


ハ、ハダカだっ!!

三階で全裸に出会う

あまりにプライバシーのない構造に眩暈を感じながらも3階まで到達。

すると今度はガラス越しに、全裸で部屋をねり歩くオジサンの姿が目に飛び込んできたのでした。うわっ!

なんだかものすごく申し訳ない気分になってくる。すみませんすみません。 でも一枚だけ撮らせてもらいます。ああ、すみません!!

でもオジサンはまったく意に介すことなく。ぼくのような闖入者なんて、住人にとってはハエみたいなどうでもいい存在なんだろうなァ。


この写真だけ見てマンションの4階だと思う人は果たしているだろうか。

四階はふたたび地上?

さらに4階にのぼって唖然とした。けっこう大きな庭に、木々が何本も植えられているのだ。

あれ、ここって4階だよな? それとも地上に出てしまったのか? ここはメビウス構造なのか!?

しばらく観察していたら事情が分かった。廊下&ベランダ部分がすべて土で埋められ、あたかも地面のようになっていたのだ。

スウィフトの思い描いたラピュタは、こういう感じだったんだろうか。


夫婦二人だけでこんなものを作ろうとする情熱はいったいどこから…。

廊下に壁画を発見

廊下に突如出現した大きな壁画。高さは身長くらいある。

おそらく沢田マンションの完成予想図なのだろう。このマンションは1971年に着工されて以来ずっと増築され続けており、30年以上経った今でも建て増し中だというのだ。

夫婦二人だけでこんな巨大なマンションを作ろうとして、実際にほぼ作り上げてしまった驚くべき情熱。

それに引きかえ、部屋の掃除さえもおっくうで放置してしている我が身の情けなさ。


空中菜園

屋上にのぼってみると

こんなことになっていた。ネギにナスに大豆に……。

これって畑じゃありませんか。マンションの屋上でまさか本格的な農業が行われていたとは。

でも考えてみりゃあ、マンションの屋上を放置してるなんて勿体ない話だ。今後は首都圏のマンションでも、小松菜とかどんどん栽培すればいいのにと思 います。


マンション専用バス

最後に駐車場

駐車場にはこんなバスが。

もう何年も使われていない雰囲気だったが、マンション専用のバスである。以前は住人たちがこれに乗ってバカンスに出かけていたという。ご主人がみんなを引き連れて。

「観光バス付きマンション」、こんなの聞いたことがない。とにかくここ沢田マンションは、浮世離れしてとてつもないのでありました。





というわけで、急ぎ足で紹介させていただいた沢田マンションでありますが。

100部屋以上あるマンションを二人で作り上げたという眼前の事実。とにかくこれが途方もなくて、途方もないことがあるから世の中オモシロイんだなあという当たり前のことをずっと考えてました。だって普通、こんなこと考えないですよ。

あと取材中、住人のかた数人とすれ違ったり、部屋の中にいらっしゃる姿を目撃したりした。半数くらいはお年寄りのようだが、あとはサブカルチャーっぽい若者や、ごく普通の家族の姿も。こういうマンションに住めるおおらかさが、正直ちょっとうらやましく思えた。

ちなみに施工主の沢田嘉農(ご主人)は昨年度、他界されたようです。現在は奥様がこのマンションを切り盛りなさっている模様。

この素敵なマンションが今後も末永く存続してくれることを願いつつ、今回はこのへんにて失礼します。

※もっと詳しく知りたいかたは〜
 『沢田マンション物語』 (古庄弘枝/情報センター出版局)をどうぞ。

沢田マンションの公式サイト



 

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