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コネタ


コネタ150
 
びっくりする花屋がある

看板に「びっくり箱設置」と書かれている花屋さんを見つけた。えーと、花屋、花、びっくり箱・・。どうしても頭の中で関係性が見出せなかった筆者はお客を装い店員さんに聞いてみた。そうしたら、びっくりした。

安藤 昌教

びっくり箱設置

いたって普通の花屋さんだ
店内はいたって普通の花屋さんだった。他の客に混じってぐるっと店内を一周してみたのだが、特にびっくり箱らしきものは見当たらない。

というかびっくり箱ってはじめからばらしてしまっていいものなのか。開けた時びっくりするからびっくり箱だろう。

待てよ、堂々と看板に掲げているからには前もってわかっていてもびっくりするような箱なのかもしれない。期待は高まる。


小さくていいんです、小さくて。としきりに繰り返していたお客
仕事の邪魔にならないようにと、他のお客さんの用がすべて済んでから店員さんに聞いてみることにした。

しかしこのお客、なかなか花が決まらない。聞くともなく会話が聞こえてしまった。

「えーと、100円とか150円とかで作ってほしいんですよね」
「そうなると一本きりになりますが・・」

というかそれは花束ではない。店員さんはお客の無理な注文にもいやな顔一つせずに対応していた。次のお客もたぶんやっかいだと思いますよ(それは僕です)。


これがびっくり箱。開けたら何が飛び出すのやら
店内に筆者以外のお客がいなくなったのを見計らい、店員さんに尋ねてみた。

「あの、表にびっくり箱設置と書いてあるのを見たんですが」
「あー、あれね。実はこれなんですよ。」

さっきまでテキパキと仕事をこなしていた店員さんがすこし照れくさそうに指を指した、その先には・・

机の引き出しのようなものがありました。え、これがびっくり箱なんですか。


じゃーん。え、あ、う・・
「開けてもいいですか」
「・・いいですけど」

お言葉に甘えていざオープン。びっくり箱というくらいだから、びろーんと何か飛び出してくるのではと身構えていたのだが、予想に反して中は空だった。なんだ、前のお客さんがすでに開けてしまった後なのか、それともはずれを引いたのか。


本当はこうなってるはずなんですよ
「実はこれ、出来合いの籠盛りとかを入れておく冷蔵庫なんですよ。今日は作り置きがないので、からっぽで・・すみません」

そう言いながら店員さんは籠盛りの花を一つびっくり箱に入れて見せてくれた。本来開けたらこうなっているはずなのだ。

店内にはいつの間にか「なぜびっくり箱なんですか」と直には聞けない空気が漂っていた。逃げてしまいたかった。しかし花屋さんをここまで追い込んだのも筆者だ。申し訳ないとは思ったがあえて聞いてみた。

「びっくり箱、ですか」
「ええ、なんとなく。ここから出てくるとは思わないから、びっくりするでしょう。」
「・・まあ」
「ええ・・」



ガーデニング、という商品名の木、盛り合わせ
びっくり箱設置、と高らかに宣言していた花屋さんはちゃんと普通の花屋さんでした。びっくりしないところがかえってびっくりする、という深い花屋さんだったとも言えます。店員さん、お仕事中面倒くさい質問をしてしまって申し訳ありませんでした。


 

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