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コネタ


コネタ176
 
レアな鹿を探しに

 沖縄本島の西に位置する慶良間諸島には野生の鹿がいるらしい。おお鹿すげえ、しかも野生。奈良と動物園でしか生きた鹿を見たことのなかった筆者は、興奮を抑えつつ鹿についてあれこれ調べてみた。

すると意外と野生の鹿って日本全国で見られるらしいじゃないですか。それどころか大阪とかでは増えすぎて農作物を荒らしてるらしいし。つまり筆者が鹿の存在に気付かずに今まで生きてきただけだったのだ。

しかし下がり調子のテンションを再燃させる情報も見つかった。なんと慶良間の鹿は天然記念物なのだという。ようするにレアなのか、それは見に行かねば。揺れる心にピリオドを打ち、フェリーを予約して行ってきました。

安藤 昌教

たとえ近場でもフェリーの旅は非日常という感じがします

フェリーに乗っていざ出発

沖縄本島と慶良間諸島の阿嘉(あか)島を結ぶフェリーは1日4便。うち1便が高速艇なのだが、なにしろ思いついたのが直前だったため高速艇はすでに予約でいっぱいだった。

高速だろうが低速だろうが着くところは同じなのだ。それならば長い時間乗っていられるノーマルフェリーの方が逆に得ではないか。どうせ船内でビールとか飲むんだし。と、くじかれかかった出ばなをポジティブに修正し残された選択に従うことに。


くつろぎモードの乗客たち

ノーマルフェリーは予想通りゆるい感じだった。船内には靴を脱いでくつろぐ空間があり、外のデッキでは風に当たることもできる。どうだ高速艇、このリラックスムードは低速ならではだろう。

フェリーは離島への生活品を運搬する役目もあるようで、デッキには泡盛と米が箱積みされていた。泡盛と米、まあそれさえあればあとはなんとかなるのかもしれない。


青い海と明るい島の人に迎えられ上陸

鹿のいる島に到着

フェリーは約1時間半で慶良間諸島の阿嘉島へ到着。本島からちょっと離れただけなのに海の色が違う。極めて青い。

船着場には予約していた宿の方が車で迎えに来てくれていた。

「いらっしゃい、お疲れさまー」

筆者は島生まれではないのだが、こうやって出迎えられるとなんだか久しぶりに故郷に帰ってきたみたいな感動がある。ただいまー今帰ったよー、母さん鹿どこ。


小さな島とは思えない深い森

さっそく鹿探し開始

阿嘉島は沿岸部にある少しの集落をのぞいてほとんどが木々の茂る深い森。いかにも鹿がいそうではないか。しかも人に媚びない野生の硬派なやつらが。出て来い鹿。期待は高まる。


鹿のインフォメーションとせんべい

えさもあるよ

今回持参した鹿のえさ。

調べたところによると鹿は雑食らしい。だけど筆者の中では鹿のえさ=せんべいという図式がどうしても拭いきれなかった。ということで鹿にはやっぱりせんべい、しかもおにぎりせんべい。これは筆者も好きだからだ。


ぎりぎり舗装された小道が森へいざなう

森へ向かう細い道の両側には密度の濃い緑が鬱蒼と茂っていた。沖縄に来て思うのだが、こちらでは日光がパワフルなせいか本土に比べて葉っぱに勢いがあるように思う。おれがおれが、という勢いでわしわし生えているのだ。


鹿マンホール。本物への想いがつのる

ちらほらと鹿の足取りが

おっとマンホールの蓋に鹿のレリーフが。鹿を探してすでに1時間くらい歩いていたところにうれしい発見だった。ディズニーランドで隠されたキャラクターの足取りを見つけたような感じ。

ところで本物の慶良間鹿はどこにいるんだろうか。


なぜだかわからないが、懐かしさの漂う校舎


すてきな風景が広がります

阿嘉島唯一の学校。幼稚園から中学校までが同じ敷地内にある。高校は島内にはないので本島へ行くことになるが、それまでのあいだ島の子供は5歳くらいから中学卒業するまでここに通うのだ。すごい硬い絆が出来上がるに違いない。ぐれるんならたぶん高校からだろう。


透き通る水と白い砂浜。こんなビーチにも早朝には誰もいない

それからこの阿嘉島、とにかく海がきれいなのだ。夏場にはダイバーの憧れマンタも見ることができ、冬場には鯨の親子がやってくる。

で、鹿ですが

そろそろお気付きだろうか、筆者が意図的に鹿の話題から遠ざかっていることに。そうなのだ、いないのだ。実は今回、島に一泊して夜も次の朝も島内をおにぎりせんべい片手に鹿を探してふらつきまわった。人口の少ない島なので確実に話題になっていたことだろう。しかしいないのだ。さすが天然記念物、やっぱりレアなのだろうか、と思い宿の人に話を聞いてみた。

「鹿ってやっぱりめったに見られないんですか」
「いや、おれ昨日見たよ。裏でゴミあさってた」

鹿。


鹿の背中にはカラスが止まっていました

とにかく筆者の前には鹿は現れなかった。もう少し山の中を探し回りたいところだったが、帰りのフェリーの時間が近づいている。

フェリーのチケット売り場には幻の(実はそうでもないらしいが)慶良間鹿の写真が飾られていた。小型でかわいらしい鹿だった。


やっぱりうまいよおにぎりせんべい

いつかまた来ます

慶良間鹿はかつては慶良間諸島に多く生息していたらしいが、農作物を荒らすので捕獲され、現在では逆に数が減り保護されているのだという。なんとも勝手な話のように思える。

今回は出会うことができなかった天然記念物の鹿に思いを馳せつつ、おにぎりせんべいを食べながら帰ってきました。期待してここまで読んでくださったみなさん、ごめんなさい。

あ、それから帰りはまんまと高速艇が空いていたので乗って帰りました。すごい速くて乗り心地も最高でしたよ。




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