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コネタ


コネタ227
 
ホームメイド使い捨てカイロで温泉卵

携帯用カイロが普及し始めたのは私が小学生の頃だった。
みんなが使っているのは使い捨てカイロ。振るやつだ。揉んでもいい。
しかし私が父に買ってもらったのは、ベンジンをしみ込ませて、何度も使う金属製のやつだった。

…私も揉みたかった…。

そんな渋い幼少期を送った私の、今だ残る使い捨てカイロへの僅かな憧憬。
その壁を乗り越えるべく、ついに手作りに踏み切った。そしてその行動力は温泉卵まで羽ばたいた。

佐倉 美穂

本日の主賓たち。頑張れ。
袋の中身を打つべし打つべし
塩水ティッシュはプリティにピンクで
黒い炭に黒い鉄粉を入れます
鳥の巣のようですが、カイロです
ちょうどいい温度に期待大

まず材料

必要なのは、
・鉄粉
・活性炭
・塩水
終わり。なんて簡単なのでしょう。

そう思ったのは手に入れようと行動を始るまでだ。鉄粉なんてそうそう売ってない。
「鉄粉 通販」で検索したら出て来たのは「鉄粉ぬか床」。
いや、ぬか床は今回はパスの方向で。

DPZの駆け込み寺、東急ハンズで鉄粉をなんとか手に入れたが、次に困ったのは活性炭。
ハンズですら園芸用のものしか売ってない。
私が欲しいのは松、杉、檜の粉末状活性炭なのだが、しょうがない、ここはヤシガラ活性炭のノンスメルにお願いしよう。
でもそれだと粒が大きいので、叩いて叩いて粉にして使うことにする。

塩水はティッシュに含ませて軽く絞り、ちぎる。


第2の目的

しかしカイロを作っただけではちと物足りない。
手作りカイロはうまく作ると70℃を超える高温を維持するらしい。
その熱で何かできないか、と思った瞬間にキュピーンと頭に浮かんだのは温泉卵だった。

天啓を得たのかもしれない。

温泉卵の作り方を調べたところ、60℃〜70℃をうまくキープさせるのが成功への鍵なのらしい。
しかし皆様いろいろ工夫して作ってらっしゃる。卵を凍らせたり、電子ジャーを利用したり。

でもさすがにカイロを使って、というのは見つからなかった。ふふ、もしかして私は第一人者か?
うまくあのとろとろの優しい食感に出会えるだろうか。


実験開始

ちぎった塩水ティッシュを容器に入れ、そこに叩いても粉にならなかった活性炭60g、そして鉄粉200gを投入。
混ぜると、おお、表面がほんのり暖かい。
そこにムリムリと普通の卵と、中まですぐ熱が通るであろうウズラの卵も埋め込む。
さあ、発熱と加熱の始まりだ。

最初は50℃台だった。
カイロは鉄が空気に触れて錆びる時の熱を利用している。これは空気に触れさせねばと、容器の中をかき混ぜる。
かき混ぜるといったらぬか床か。「鉄粉ぬか床」はこれの暗示だったのか?

カイロの表面を触るとしっかり熱く、触っていた指を離してもじんじん痛い。
これは低温火傷?れっきとした火傷になりそうな熱さだ。

温度が上がりすぎたら卵を底の方の空気に触れないところにもっていく。
大体70℃弱と理想的な温度を維持している。
ああ、もうすぐ会えるんだね、大好きな温泉卵君。

温度を気にしつつ、しばし待ちます。その間うちのフェレットに別の卵をご対面させてみた。


「なんだこりゃ?」
「別に面白くないな…」
「トンネルの方が楽しいや」

絵に書いたような温泉卵
うまうま。

できたー?

卵を埋め込んでから40分で出してみる。
ウズラの卵は…ありゃりゃ、普通の半熟ゆで卵になってしまった。
小さくて熱の通りがよかったのか、上の熱いところにあったのがいけなかったか。
でもうまい。

さて本命のレグホン卵。
割ってみると…これぞ温泉卵だ!
とろり具合といい、申し分ない。温泉卵ツウに言わせれば、ちょっと柔らか過ぎなのかもしれないが、私には十分だ。めんつゆを少量たらし、いただく。うまい。

もう一つのウズラの卵がなかなかみつからない。ずっと下に潜んでいたようだ。
これを割ってみると、底にあったという低温状態がよかったのか、これもまさに温泉卵。白身もぽちゃぽちゃ、黄身がトロ〜リ。
これも美味しくいただいた。

もう使い捨てカイロという壁を乗り越えた。
高温カイロの作成、それを利用しての温泉卵トロリまで大成功なのだから。
小学生の頃の私に教えてあげたい。お前はこんなことをやる大人になるんだよ、と。
最高で85℃を超えた。すごい。

 

 

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