石川 タマちゃんの最初の報道は、富山かどこかに旅行にいっているときに旅館で観たんですよ。まさか仕事になるとは思ってなくて(笑)。
石田 なんとなく世間が夏休みモードだったっていうのもあって、ニュースのソースが少なかったっていうのもあるんですよ。そうこうしているうちにフジテレビに川の取材をしたいからロケハンに付き合ってくれって言われていて。
石川 タマちゃんが発見されて4日目くらいですかね、その時に実際にみたんですね。その頃はまだテレビカメラも1台か2台は来てたんですけど、観客もそんなには多くなかったんです。
で、その日の夜に鶴見の養老の滝で呑んでて(笑)、ホームページを作ろうかと。みんななんでアザラシがいるのか不思議だろうから、Q&Aを考えようと。どこにいるのかもお知らせして。まあ2、3日したらいなくなるかなっていう位 の軽い気持ちで。だからあんなに大袈裟になるとも思ってなかったし、話題にもなるとは思わなかったんです。
石田 まあちょうど夏休みモードでまったりしている時期だったんで助かったんですけど、あれだけ話題になって一番大変だったのは電話応対だったんです。鳴りやまないんですよね。
石川 でもホームページで情報を発信するとピタッと止まるんですよね。ホームページの力っていうのはすごくて。例えば、目が赤いけど大丈夫かって、心配した人から問い合わせが結構あったんですけど、ホームページで専門家に「目が赤いのは異常じゃありません」って言ってもらうと、そういう電話は収まるんですよね。
石田 そんな中でも電話で印象的だったことがふたつあって。
ひとつは「タマちゃんを助けてください」っていう内容の電話だったんですけど、どんどん高ぶっちゃって、そのうち泣き出しちゃったんですよ。「お願いだからなんとかしてください」って。
あともうひとつは、障害あって言葉が不自由な人が、辿々しい言葉で切々と「なんとかして欲しい」って訴えかけるんですよ。
それくらい、みんな「タマちゃんかわいそうだ」って電話してくるんですよね。
石川 タマちゃんのために甘い物を絶ってますっていう女性もいましたよ。ちょっと笑っちゃいましたけど(笑)。
工事を止めたりとか、巡視を増やすとか場合によっては柵を設置したりとか、 専門家が健康状態を確認するためにビデオを観たいっていえば、巡視員にビデオを持たせたりとか、全国の水族館に電話して問い合わせたりとか、ぬ かりのないようにしましたけどね。 もし仮にタマちゃんになにかあったら、全部京浜河川事務所の責任になりかねない勢いがありましたからね。
京浜河川事務所では、タマちゃんを巡って大変だったようだ。そんなタマちゃんは、やっぱり憎たらしかったりするのだろうか?
石田 憎たらしいっていうのはなかったですね(笑)。
日々の対応に追われながらも、どこかで愉しんでいる部分というのは多分ありましたから。
僕らが川の管理をしている上で、これからまたアザラシがでてきて大変な騒ぎになるっていうことはないだろうけど、何か事件が起こったときに、世の中から特に反響を呼んで、問い合わせが沢山来ることがあるかもしれないじゃないですか。
その時に、ホームページっていう武器を使って情報発信するっていうことを学んだりとか、今思えばそういうトレーニングが出来たのかもしれないって思ってるんです。
タマちゃんの騒動を振り返って、石田さん達はこう話す。
石田 あの騒動を振り返ると、彼ってすごく役者なんですよ(笑)。夏休みのほんわかしたときに出てきてさあ……(笑)。
石川 クリスマスに出て、流行語大賞の時に出て、って、節目には必ず姿を現してるんですよね。
石田 花火大会のときにいなくなって、「どうしたのかなあ」って思ってたらひょっこり出てきたりして。それからもしばらく姿を見せないときがあると、結構証言する人が出てくるんだよね(笑)。「猛烈な勢いで海に泳いでいくタマちゃんを見かけた」っていうオヤジが出てきたりとか(笑)。
石川 まあ亡くなってたらどうしても目立っちゃうはずなんで、どこかで元気にやってるんだと思います。
他にも、「タマちゃんは電車に乗って移動する説」など、色々と面白いお話を聞いたんですが、スペース上割愛させていただきます(ごめんなさい)。
続いて、最後にタマちゃんが目撃されたスポット、荒川・秋ヶ瀬橋にいってみました。 |