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コネタ


コネタ266
 
秋の鎌倉・おみくじ調べ
ちょっとお腹が出過ぎじゃないかい!?

私は、その魅力にどうしても抗うことができないでいる。

おみくじ。それは占いの神秘性と、何が出るかわからないゲーム性、万葉集などから引かれた箴言などが一体となった、極めてハイブロウなものだといえよう。

と、気取った調子で始めてみましたが、占いなんて信じない人でも、おみくじだけはつい引いちゃう、そんな人も多いのではないのでしょうか。
そこで、秋も深まり、木の葉もほんのり色づきはじめた今日この頃。行楽にはもってこいの鎌倉に行って、おみくじを引きまくってきました。 それではいざ、鎌倉へ!!

(text by 宮崎 晋平

と、本題に入る前にまずはおみくじの起源について。
そういうことならと、まずは神秘関係に強い雑誌「月刊ムー」編集部の方に電話で問い合わせてみた。 が、さすがにちょっと分からないようなので 、ネットで調べた諸説あるうちの一説だけを紹介したいと思います。それによると、900年代に元三慈恵大師良源上人という偉い人が観音菩薩に祈念して偈文(げもん・辞書を調べたけど載っていなかったのですが、恐らくご神託みたいなものだとおもいます)を授かった観音籤が起源とのこと。

ちょっとよく分からないながらも、なんだか掘れば掘るほど深みが出そうなおみくじですが、今回はそういった主旨ではないので純粋におみくじそのものを楽しみましょう。
また、箴言の部分も趣があってなかなかいいのですが、今回はスペースの都合上割愛させていただきました。

それでは「秋の鎌倉・おみくじ調べ」、早速いってみましょう。


1.本覚寺

まず一軒目は、1436年に建立されたという本覚寺へ。



いきなり大吉ということで、かなり幸先のいいスタート。いいことばかりが書かれており、嬉しい気分にさせられるおみくじだ。
しかもここのおみくじ、オマケに小さな七福神のお守りがついているのもちょっとお得な気分です。


これは七福神の中でも金運を司る神、恵比須様(直径1.5cm位 )。通帳残高が85円しかない筆者には嬉しい限りだ。

2.八雲神社

二軒目は、鎌倉一短いことで知られる祇園山ハイキングコースの入り口にある八雲神社へ。ここは小さなところで、観光に力を注いでいるというより地元に密着している神社といった感じだ。今回はハイキングコースには行かなかったが、神社の人の話ではきれいな景観を望むことができるということ。時間に余裕があれば行くと良いだろう。
さて、気になる文面はこちら。



大吉から吉へと降格しているのが少し悔しいが、書かれている内容のニュアンスは大体一緒だと考えていいだろう(特に信心が大事とか)。
このおみくじ、本覚寺のものとはバリエーションが違い、吉凶の書いてある下にイラストと漢文が書いてあるのだが(上は編集したモノ、以下同)、そのイラストがこちらである。


のどかに囲碁をする人たち。

このどことなくとぼけた味わいが、のんびりとした趣を感じさせて楽しい。特に右側の坊主の人の表情が、ちょっぴり情けない感じでたまらないものがある(劣勢なのかな?)。 こういうイラストが描かれているモノなら、仮に凶が出たとしてもあまりイヤな感じはしないのではあるまいか。そんな風に想像してみるのだが……。


3.鶴岡八幡宮

さて、続いては鶴岡八幡宮にやってきた。鎌倉といえばまずはここ、といっても良いくらい代表的なところだからか、この日も参拝客で大賑わいだ。こういう有名な神社仏閣は大抵そうだが、やはりここも少しだけ商業っぽい香りが漂う。ここでは「参拝」というよりも「観光」といった方が適切な気もする。 おみくじの自販機などが置いてあると、その印象は強まるばかりだ。


THE OMIKUJI VENDING MACHINE!!

普通のおみくじと自販機のおみくじ、両方引いてみたのだが、折角なのでここでは敢えて自販機で“購入”したおみくじを紹介しよう。



移動時間は5分程度だったのだが、その間にも運気が上昇!! 吉から小吉へのランクアップが嬉しいが、初めは「相当利あり」だった筈の事業(商い)が、いつのまにか「利益追求してはいけない」になっているのが悲しい。
そして、やはりというか、自販機で販売していたものには英文での記載がしてあった。こんなところにも忍び寄るグローバリズムの影。私はそれに断固として異を唱えたい(適当)。


なんかそういう事じゃない気がする……。

4.宝戒寺

宝戒寺は国宝や重要文化財の仏像が沢山ある、とても見応えのあるお寺だ。境内に入ると威厳のある仏像が多数置いてあり、基本的には無神論者の筆者でも思わず敬虔な心持ちになるほどだ。
それはさておき、おみくじを引いてみると……。



……凶である。凶を引いたのなんて生まれて初めてで少し沈んだが、気を取り直して内容をみてみることにしよう。




……さすがは凶だけあって、良いことがひとつも見あたらない。しかし、「よろこび事なし」にも「待ち人来たらず」にも「うせもの出がたし」にも「あらそい事はまけなり」(なりじゃねえよ!!)にもこの際眼をつぶるとしても、「生死は十に八九は死すべし」っていうのはちょっとあんまりじゃないだろうか……。念のために「べし」って言葉の意味を古語辞典で調べてみたら、「1. 当然の意、2. 予定の意、3. 必要・義務の意」って、なんだよ、俺、死ななきゃダメ!?

で、追い打ちをかけるようにこれだ。


いったい何が起きてるんだ!? 火事!? よく見ると子供を置いて大人が逃げているよ!!

なんかもうシッチャカメッチャカである。 さっきは微笑ましくすら感じられたイラストが、暗く沈む気持ちに更に拍車をかける……。いくら無神論者を気取ってる僕でも、なんだか本当に「死すべし」が正しいような気がしてきた。おかあさん、今まで育ててきてくれてありがとう。思わずそんな事を口走ってしまいそうにすらなる。ああ、神様を信じる強さを僕に……。

もうこんな忌々しいおみくじのことなんて忘れて、さっさと次にいってみることにしよう。


5.杉本寺

お次は杉本寺。苔むす階段を登っていくと仁王像が出迎えてくれる。本堂は割と地味で(マウスオーバーで画像が変わります)、あまり目立たないお寺だが静かな雰囲気がとても落ち着くし、高台にあるため見晴らしも抜群だ。割と穴場のお寺かもしれない。
そんなことより、さっきのおみくじを挽回しなければならない。もう、凶でなければなんでもいいから、さっさとおみくじをひいて前回のを無効にしよう。ということで、早速引いてみると……。



やった! 大吉だ!! これでもう死ななくても良くなった。 しかも「このくじにあたる人は、四季さく花のごとし、(中略)常にしあわせ絶ゆることなく」と、宝戒寺とはまさに雲泥の差だ。待ち人は仕合せを持ってくるし職業は何をしてもいいし、ハッキリいってパラダイスだ。さすがに大吉だけあって、添えてあるイラストもとてもかわいく感じる(何をしているのかはわからないし、やっぱりふたりとも情けない顔をしているけれど)。


大工さん? どうしてこのおみくじに書かれているのか全くの謎だが大吉なので許そう。

この後、鎌倉宮と荏柄天神社にも行ったのですが、おみくじの内容はイラストもオマケもなく極めてオーソドックスなものだった為、省略させていただきます(ちなみに両方とも「吉」でした)。
また、巡ったお寺のうち、浄妙寺と報国寺のふたつはおみくじがおいてありませんでしたし、お昼過ぎからレンタルサイクルを借りて駆け足で廻ったため時間が足りず、寿福寺と建長寺には一応行ってみたけどギリギリで間に合いませんでした(閉門は16時)。
でも、今回廻ったコースは、早起きして朝から臨めばおそらく徒歩でも廻ることが可能だと思うので、鎌倉詣の参考にでもしていただければ幸いです。

これを読んでいる読者の方も、せっかく年に一度の秋、こうやってお寺を巡ったりとかして(全然違うことでもいいんだけど)、有意義にお過ごしください。

最後に、おみくじをたくさん引いて思ったこと。それは、どうせそのうち“十に八九は死”んじゃうんだから(本当は八九じゃなくて十だけど)、それまでは、まるでノーテンキな大吉のおみくじみたいにして、暮らしていくことができれば素晴らしいですよね。
だけど、もちろん生きているかぎり、僕が引いた凶のおみくじみたいに、ありとあらゆる災難が降りかかってくるんだと思います。 でもそれは、「四季さく花のごとし、不仕合わせ来るとも又しあわせ来り」みたいなもので、なんていうか、生きてさえいればなんとかなる、そんな風に思いました。


神社の木にぶら下がってた木札。

※今回の記事作成にあたって、『てくてく歩き5 鎌倉 気ままに電車とバスの旅(ブルーバックス刊)』を参考にさせていただきました。


 

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