６号通り商店街にあります

先日、知人にいきなり「あなた納豆好きだったよね？」と聞かれた。
--- ええ、それはもう。
「幡ヶ谷に納豆丼の専門店があるの知ってる？」
--- へ？ 納豆を売る店じゃなく、丼？ 専門？
「そう。たまたま店の前を通っただけだけど、珍しいなーと思って覚えてる」

いや、珍しいどころの騒ぎじゃないと思う。そんな店、聞いたことがない。しかも水戸じゃなく、東京で。

これは行かなきゃダメでしょう。行くべし！

（高瀬 克子）

どれもおいしそうです

その店は、京王新線幡ヶ谷駅から徒歩５分程のところにあった。名前は「ねばり屋」。なるほど納豆の店にふさわしい店名です。

てっきり、自然食に重きを置いた堅苦しい雰囲気のお店かと思っていたら、予想に反して思いっきり明るい。看板だけを見ると、まるでチェーン店のようでさえある。いや、ちょっとホッとしました。

券売機の横には写真入りのメニューが貼ってあり、それを参考に選べるのだが、種類が多すぎてなかなか決められない。正直、全部食べたい。

喫茶店のような店内

なんとか食べるものを決めて食券を買い、それを店の方に渡してからカウンターに座った。
客は私ひとり。

店内はまるで喫茶店のようだ。雰囲気が、ではなく構造が。以前は喫茶店として実際に営業していた店を買い取ったのかなぁと思う。まるで物静かな女性がひとり、文庫本片手にコーヒーでも飲んでいるのが似合うような店なのだ。でも、出てくるのは納豆。

店は、年輩の御夫婦が切り盛りしていた。この方たちの対応が、なんというか、ものすごく気持ちがいい。朗らかというか爽やかというか、とにかくニコニコしている。

「毎日納豆食べたら、こうなるのかな」と思うくらいにニコニコで、こういう人に出されるごはんを食べていれば、たとえそれが納豆じゃなくても健康になれるんじゃないかと思った。

おいしいおいしい

ほどなく、お盆に乗って納豆丼がやってきた。

納豆は別盛りで、ご飯には乗らずに登場。 なるほど「納豆は自分好みのやり方＆味付けで混ぜたい」という納豆好きの気持ちを考えれば、これは当然の配慮かもしれない。さすがです。

ガシッと椀をつかみ、ワシワシと食べる。…うまい。納豆が大粒で、とってもマメマメしい。
炒り玉子との相性もバツグンだ。納豆の味を邪魔していない。家で食べる時もたまにタマゴを入れるが、そういえばいつも生だった。火を通したタマゴも合うんですね。

あっというまに完食。
どうしてももう一杯食べたくて、再び券売機に走った。

…うん。これも納豆と合います。おいしい。

--- あの、やっぱり、納豆好きだからお店を始めたんですか？
「そうなんですよ。この店は、いわば私の道楽ですねぇ」

唐突な私の質問に、ニコニコと答えてくれるご主人。

--- 納豆の店って、珍しいですよねぇ。
「そうですねぇ。おそらく、太陽系でもここだけだと思いますよ」
-- た、太陽系ですか！
「ふふ。水戸あたりに行けば専門店はあるかもしれないけど、こういう形態の店ではないんじゃないかしら」

他にも、納豆は北海道十勝のものを使っているとか、その納豆への思いとか、聞いているだけで嬉しくなるようなお話をしていただいた。いやー、ほんとにいいご主人、いいお店です。