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コネタ


コネタ400
 
Aランチ、Bを飛ばしてCランチ

沖縄の定食屋にはAランチというメニューがある。まあさほど珍しい話でもないだろう。何種類かあるランチメニューの中のAということなのだろうか。

そう思って注文してみたらえらいことになっていました。

安藤 昌教

貫禄のある店構えです。

久しぶりに行く定食屋です


定食屋、以前はよく通っていた。学生の多い町だったので近所には汚いけどうまい店がいくつもあったのだ。いま思えばなんだか店構えが汚い店ほど味はうまかった気がする。無口で頑固そうなおやじが厨房に立っていたりするとなおさらうまい可能性が高い。そして貧乏学生にとってはやはり安さと量の多さも定食屋を選ぶ大きな基準となっていた。

今回伺ったお店もかなり歴史を感じる外観だった。見た感じアパートのようにも見えるが、そんな控えめなたたずまいの割りに駐車場には車が満車状態だ。この時点ですでにうまそげな雰囲気がぷんぷんする。


修学旅行生のようです

駐車場にはタクシーも止まっていた。見てみると高校の修学旅行生を連れてきた車らしい。おそらく県外の高校生が「沖縄の典型的な食堂に連れて行ってください」とか運転手さんにお願いしたのだろう。タクシーの運転手さんが連れてくるお店に外れはない、という法則からもがぜん期待は高まる。


Aランチが全メニュー中最高額でした。

Bはどこだ

入店すると正面の壁に影絵みたいなフォントで書かれたメニュー表が貼られていた。あった、Aランチ。沖縄のランチで800円は少々高いような気もするがそれでもきっと金額に見合うだけのうまいランチが出てくるに違いない。

だけどCランチもあるではないか。というかAの次がいきなりCだ。Bはどうした。

欠番のBランチを思いながら筆者はAランチを、同行した妻はCランチをそれぞれ注文した。


定食屋とは思えないライスとスープ。

期待しながら待っているとまずライスとスープが運ばれてきた。順番に料理が運ばれてくる定食屋なんて初めてだ。しかもライスはオムライス形に形成されて皿に盛られていた。

不思議な感じはしたがまあここは沖縄だ、筆者も一年くらい住んである程度免疫ができているつもりなので多少のことでは驚かない。余裕のふりをしてスープとライスをつつきながらまたしばらく待っていると、おもむろにメインディッシュのプレートが運ばれてきた。

一目見てやばい、と思った。


鳥ももの乗せ方が間違っているような気がします。

肉、てんこ盛り

お待たせしました、Aランチの方。

・・・。

あ、はい僕です。

目の前に運ばれてきたAランチが放つ怒涛のインパクトに一瞬我を忘れた。K−1とかでノックアウトされた選手が「どうやって倒されたのか覚えていません」とか言うが、こういう感じなのかもしれない。で、なんだこれは。トンカツとポテトフライとハンバーグと玉子焼きの上に鳥もものフリッターがずんがと乗っている。そしてそれらどれをとっても単品ですら大きすぎるくらいの大きさなのだ。鳥なんてクリスマスの七面鳥くらいある。


海賊の宴会みたいな食卓です。

比較のために携帯電話と一緒に撮影してみた。奥に写っているのが一緒に注文したCランチ。Aランチとの違いは鳥が乗っていないこと。それからハンバーグとトンカツも心なしか小さい気がする。だけどどちらにしろ尋常でない量なことは確かだ。


肉を前にどうしたらいいのかわからない。

肉と闘う

驚いてばかりはいられない。食べなきゃ。

まずはやはり上に乗っている鳥から手をつけることにした。衣と皮がぱりぱりしていてうまいのだが、本丸の肉にたどり着く頃には軽く満腹になっている。筆者は結構大食いの方なのだが、鳥の半分も食べきる前に敗北を意識した。まだ後にトンカツとハンバーグとポテトと玉子焼きが残っているというのに。

こういう状況を見越してか、沖縄の定食屋にはたいてい持ち帰り用のパックとビニール袋が用意されている。もちろん持って帰ることにしたが、晩御飯もまったく同じメニューになると思うと少し怖かった。

タクシーの運転手さんに連れてこられたらしい修学旅行生もAランチを注文していた。いい思い出になっていればいいと思う。



ウーロン茶に刺さっていた棒。ストローだと思い吸うとそれが棒であることに気付く。

ランチのAではなく、Aランチです

後でわかったのだが、どうやら沖縄で言うAランチというのはランチメニューのAというわけではなく「Aランチ」という独立したメニューなのだ。その証拠に朝でも夜でもAランチ、多くの定食屋でレギュラーメニューとして注文できる。

Aランチという名前の由来までははっきりしていないようなのだが、外国人にもわかりやすいメニューにするためという説がある。要するに肉盛り合わせ定食、とか書かれていても日本語の読めない外国人にはなんのことやらわからず注文できない。しかしA、Cと書かれていればわからなくても注文できるというわけだ。ちなみに他の定食屋でAランチを注文しても内容はやはり揚げ物が中心だった。それに皿に盛られたライスとスープが付く。外国人にも親しみやすいように洋食メニューを意識しているのだろう。

それからこの食堂のおばちゃんにBランチがない理由も聞いてみた。

「どうしてAからBがなくてCなんですか」
「そういえばそうよね。ははは。昔からそうだから特に理由なんて考えてもみなかったわ。」

昔Bランチを頼んだお客さんが次々と奇怪な死を・・なんていういわくつきの理由でもあるのかと期待したがそんなこともなかった。ちなみに他の定食屋にはちゃんとBランチがあったりします。ごちそうさまでした。


 

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