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ベスト・オブ・「青に、なりました」

歩行者用の信号が青になる時、音やメロディでそれを知らせる交差点がある。「カッコー」とか「ピヨ・ピヨ」とか「とおりゃんせー」などそのラインアップはさまざまだが、私は「青になりました」とアナウンスしてくれるタイプのものがいちばん好きだ。

「青になりました」はさまざまな場所で聞くことができるが、ぜひここで聞いてくれ!と声を大にして叫びたいスポットがある。今回は、田中が個人的に厳選する、とっておきのベスト・オブ・「青になりました」を発表しちゃいます!

(text by 田中あずさ

なぜ「青になりました」が好きなのか。

約10年前のこと。長野の高校を卒業したあたしは、その春休みを利用して車の免許を取るべく教習所に通っていた。当時の記憶はもうおぼろだが、そのときの筆記で青信号の本当のサインを知ったことがそもそもの始まりである。

それまで、青=「すすめ」・黄=「注意」・赤=「とまれ」だと思っていたのだが、青は「すすめ」ではなく、「進んでもいい」というサインなのだそう。青信号になったからといって進まなければいけないというわけではなく、進まなくてもよいのだ。

「青信号ってはっきりしているようで、言ってることは意外とどっちつかずなのね〜。」と思ったことを、今でも覚えている。


国立代々木競技場前の交差点は「青になりました」タイプですよ

「青になりました。もしあなたが行きたいのなら行ってもいいけれど、行かなくてもいいんですよ。決めるのは信号じゃなくて、あなたの意思なのですから。前へ進むのも、そこへ留まるのもあなたの自由。さあ、好きになさい」

青信号が示すサインはいつだって曖昧だ。あたしの背中を押しているのか、何かの忠告を含んでそこに留まらせようとしているのか。はたまた・・・。そんなことを考えて、交差点を渡れなかったこともしばしばだ。うそ

「青になりました」のアナウンスを聞くたびに、妙に後ろ髪がひかれる思いがしてならない。そんな切ないニュアンスに惹かれるんです。

 

ふたりだけに聞こえる「青になりました」。

私は学生時代をダラダラと中央線沿線ですごした。国分寺と吉祥寺のカレー屋さんでハシゴのバイトをして、休日は荻窪の焼き鳥屋で一杯ひっかけ、友人のライブに出かけるとかそんなかんじだ。その日も高円寺の「稲生座」というライブハウスで友人が歌うというので、彼氏と一緒に出かけた。北口の交差点を渡っていると、彼が「青になりました」というアナウンスのマネをした。

「『青に・・・なりました』。どう?似てない?なんか哀愁ただようよねー、このアナウンス」。

あはは、と笑いながら、あたしは内心すごくドキドキしていた。「私もそう思ってたの〜!」と言いたかったけど、なんかとって付けたみたいで言えなかった。


JR高円寺駅北口交差点も、代々木と同タイプですよ。

「青になりました。あたしはオールオッケー、渡ろうよってかんじですが、あなたはどうですか?大事なのは信号が青かどうかではなく、渡りたいと思うかどうかなの。ふたりが渡りたいと思わなければ、この信号を一緒に渡る意味なんてないんだから。」

青信号が示すサインはいつだってはかない。早く渡らないと赤になってしまうけど、一度渡ってしまったら何か忘れ物をしてしまうような気もする・・・。そんなことを考えて、交差点を渡れなかったことがたくさんある。うそ。

まあそんなかんじで、今でも「青になりました」のアナウンスを聞くたびにちょっとした切なさを感じているんです。

 

ベスト・オブ・「青に、なりました」

待ってないかもしれないけど、お待たせしました。秘蔵のベスト・オブ・「青に、なりました」をお届けします。

先にも書きました、杉並区はJR高円寺駅北口交差点のものです。

なぜここがベストかというと、街の雰囲気に「青に、なりました」という切ない響きがしっくりくるから。駅周辺の商店街を中心に漂う、エキゾチックでやる気があるんだかないんだかわからないアジアならではの空気がなおさらその切なさを助長する。そういえばみうらじゅん氏も「今もなお 日本のインド 高円寺」という名句を詠まれていらっしゃるぞ。




<音を聞いてみる>

→ 青に、なりました
→ 信号が、かわります

 

どうですか。

あたしには「青に・・・なりました」 「青に、なりました(泪)」 「青に、なりました(悲)」「青に、なりました(さめざめと)」そんなかんじに聞こえてならない。この際「青に、なりました orz」でもいい。(orzとは、「がっくりマーク」だそうです。しらなかった。)

決して、「青になりました♪」「青になりました(笑)」「青になりました(曝)」「青になりましたぁぁぁ!」とかじゃない。


「青になりました」が聞きたくなったら、迷わず杉並区高円寺北口を訪れていただきたい。あの界隈はおいしいお酒が飲めるお店もたくさんあるので、ほろ酔い気分で耳を傾けるのもまた一興である。

「青信号 ちょっぴり切ない 高円寺」おあとがよろしいようで。


 

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