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コネタ


コネタ421
 
ゼリーのレンズで物を見る

よく「フィルターがかかって見える」などと表現する。抽象的な表現でいうならば、頭が常にそっち寄り、といったところだろうか。
しかし現実ならどうだろう。常に目の前の何かを通して物を見る。そこから見える世界は、いつもと少し違うかもしれない。

よし、それじゃあ、やってみようじゃないの。

ということで、フィルターではないけれど、レンズを通した世界をお届けします。
レンズもただのレンズじゃないですよ。

佐倉 美穂

レンズはゼリー

まずはレンズ作りから。
目をつけていたのですよ。缶ビールの裏。
この凹み具合、このカーブ。「オレを凸レンズの型にしてくれ!」という声が聞こえてきそうだ。
ここに濃度の濃いゼリーを流し込み、冷蔵庫で固める。
小さいだけあってすぐ固まった…が、困った。ゼリーが外れない。そっとまわりから空気を入れてゆくが、あっけなく失敗。ぼろぼろゼリーになってしまった。


オレにまかせろ!
ぼろ…

それならば、缶を温めれば外れやすくなるはずだ。
というわけで、ビールを燗にしてみた。
あり得ない図だ。熱々のビールなんて飲みたくない。ぬる燗だって遠慮だ。


「ビール温まってます」なんて言葉もみたことない

さて、温まった!ゼリーも溶けた!溶け過ぎて、液体に逆戻り。とほほ…。

しょうがないので、缶のうらにラップを敷いて、そこにゼリーを流し込むことに。

やっとできたレンズは、ラップのしわこそ入っているものの、透明で向こうが見える。上等だ。


しわも再現。ゼリーで足形もとれそうだ

レンズ越しに見てみよう

手でレンズをつかんでは、体温で溶けたりレンズが歪んだりするのでビニールテープに乗せて使用する。
なんだか急にメカニカルに見えやしないかい?


レンズ装置のできあがり

そのレンズを使って、どんどん見てゆきます。

地味なマウスパットの文字は
拡大され、不思議な模様入りに
身近にあった朴訥なみかんも
ヘタの部分がちょっと大きく、輝いて見える

家の中の物を見るのにも飽きたので、ちょっと外に出てみよう。


電柱のお願い。左に潜むレンズ
覗くと、文字が巨大化

おっ、犬を散歩している人に遭遇。これは見せていただかなくては。

--かわいいですねー。写真撮ってもいいですか?
「えっ、わっ、本当?嬉しいんだけど! ほら、パンチ、ステイ! あらあら、喜んじゃって、飛びついちゃうかも。大丈夫かしら?」

テリア系の小型犬だ。飛びつかれてもどうってことない。よし、止まったぞ、チャンス。


おじいちゃんみたいな顔と言われるワン。ひげのせい?

飼い主さんは「写真が欲しい」との申し出にとても喜んでくださっている。

--あの、これ、ゼリーのレンズなんですけど、これでもう一枚撮ってもいいですか?
「えっ、あっ、はあ…」
飼い主さんから笑顔が消え、明らかに不審そうだ。
そりゃそうだ。私だってこんな人に対面したら「ややこしい人相手にしちゃったな」と思うだろう。

--パンチくん、かな?かわいいですねー、ちょっとじっとしてくれるかな〜?
「パンチちゃん、です」
なんとか会話をつなぎながらちょこちょこ動くワンコの写真を狙う。飼い主さんとの空気も微妙なので早くなんとかしたいところだ。

おっ、動きが止まった、今だ!


イヌッパナー!

虫眼鏡と同じ凸レンズなので、そのレンズ越しに見たものは少しだが巨大化している。
しわの入った手作りレンズで見た世界は、意外と綺麗に見えたり、面白く歪んでいたりした。
こんなレンズを持ち歩くだけで、世界は少し変わって見える。
そして細かい発見もあるかもしれない。
ぶらり散策のおりには、持ち歩くのも面白いですよ。

買物の時にもさりげなくレンズが。


 

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