なんとしてでも都庁の居酒屋に行きたい。
結局この日は昼間だったので居酒屋は体験できなかったんですが、どうしても都庁の中で酒を飲みたかった僕は後日、夕方5時にもう一度あの場所へ向かう事にした。(今度は友達を無理矢理誘い出して)
都庁の無機質なリノリウムの床に突如現れる生ビール一番搾りの看板。わりとシュールな状況だ。そしてそこに私服で闊歩する僕と友達。これまたシュールである。ちょっと中に入るのが少し怖くなってきたが、タイムサービスで生ビールが半額だと知り、多少テンションを取り戻し、勇気を持って踏み込んでみることにした。
ドキドキしながらのれんをくぐり抜けた瞬間
店員一同に「いらっしゃいませ!」と大声で言われる。
時間が早く、客が少なかったおかげで店員の目線が僕らに集中しいらっしゃいませの大合唱になってしまったのだ。
どぎまぎしてる僕らに近づくダンディな店員
店員(ダンディ)「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
僕は彼のオールバックヘアーのポマードでかためてるあたりを眺めながらつぶやいた。
僕「に、2名です」
店員(ダンディ)「窓側の席が空いているのでそちらにしますか?」
僕「はい」
高層ビルの窓際というわかりやすい魅力に浮かれながらにこにこしていると店員(ダンディ)もにこにことほほえみかえしてくれた。
昼間は食堂だった場所を居酒屋チックにしているだけなので内装は社員食堂そのものだがのれんで居酒屋感を演出しているところがかわいらしい。
また、よほど大事な話をする職員がいるのかついたてが結構深くて、個室のように隣の会話はまったく聞こえない。まわりの職員は何か重大な話をしているのかもしれない。ひととおり店内を見回していると白髪の藤村俊二さん似のこれまたダンディな店員さんがやってきた。
店員(おひょいさん)「何にいたしましょう? 本日はビールが半額ですが」
僕「じゃあビールで」
友達「じゃあ僕もビールで」
“じゃあ”って枕詞をつけているけど、最初っからビールを頼む腹だった。人間は時に些細な抵抗を試みたくなるものだ。 |