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コネタ


コネタ473
 
対談・「WCピクト」を鑑賞する
こういうやつ

赤が女性で、青が男性。

公共のトイレの入り口に掲げられている、男性用/女性用の区別を表すピクトの色分けはたいていそうなっている。また、形としては女性はたいていスカートをはいている。

また一方で、そういうオーソドックスなピクト以外にも、男性は「シルクハットをかぶった紳士」女性は「つばの広いピクチャーハットと呼ばれる帽子をかぶっている淑女」を描いたような、ひとひねりしたピクトも見かける。

ちょっと見渡せば、実にさまざまなWCピクトが街にはあふれている。千差万別、十人十色。中にはいかがなものかと思うものもある。トイレの数だけピクトがある、と言ってもいいだろう。そりゃそうか。

今回は、おなかの急降下に注意散漫になっている緊急時にあっても、的確にあなたをその性別に合わせたトイレ空間へと導く「WCピクト」を鑑賞しよう。

(text by 大山 顕

■WCピクトの第一人者に会いに

初期ルネサンスの天才アルベルティは「どんなに些細なことであっても、それに卓越しようと思えば一生を捧げるしかない」と言っている。

WCピクトを収集すべくいつものように街に出たぼくの脳裏にそのアルベルティの言葉が響いた。もしかしてすでにWCピクトに一生を捧げんとしている人がこの世にはいるのではないか。だとしたら、ぼくがここで中途半端に収集し考察を加えるよりも、その方に教えを請うたほうがよいのではないだろうか。

そして、確かにいるのです。WCピクトの第一人者が。一生は捧げないと思うけど。

今回は膨大な数のWCピクトが公開されている「ぱんだ印」の運営者、macoさんにWCピクトの紹介とその見所を解説していただいた。

 

■まずは現物のWCピクトを見に

実はぼくは以前からmacoさんの「ぱんだ印」のファンだった。2000年ごろにすでに人気個人サイトであったので、ご存知の方も多いと思う。女性でありながら率直かつさわやかにトイレおよびその周辺の営みを語るmacoさんにファンはメロメロだ。たぶん。

そんな彼女に、いままで集めたWCピクトの写真を見せていただき、いろいろとご教授願いたいと連絡を差し上げたところ、まずは実物を見に行きましょうということに。WCピクトは足で稼ぐ。現場の主義、というわけか。さすがだ。

候補に挙がったのは2箇所。池袋サンシャイン国際水族館と東京タワー。池袋で待ち合わせることになった。

初めてお会いするmacoさん。どんな方なのだろうか。「トトイレおよびその周辺の営みに興味津々」。この条件で思い浮かべる女性像。失礼を承知で言わせていただければ、それは「どんなのが来てもおかしくない」というのが率直なところだ。ぼくに言われたくないと思うけど。

しかし、なんと待ち合わせ場所にいらしたmacoさんは、実にきれいな女性だった。正直、びっくりした。

 

素敵な笑顔、すらりとしたスタイル、清楚なファッション、そして、WCピクト好き


このような美しい女性が、WCピクトの第一人者。いい時代になったと思う。時代は関係ないか。

若干緊張しつつさっそくサンシャイン国際水族館へ向かった。

 

■サンシャイン国際水族館

サンシャイン国際水族館のWCピクトは、ここの看板スターの一人(というか、一匹)であるマンボウをかたどったものだという。

 

このかわいらしいマンボウWCピクトが僕らを待っている。だが、色以外では男女の区別がつかないのはいいのか


いったいどこらへんが「国際」なのだろうと思いながらチケットを買って水族館へ入ると、そこに衝撃のメッセージングが。

 

確かに「ご迷惑」だが、われわれにとってはその重みが違う

 

心底がっかりするmacoさん。そんなにがっかりしなくても


なんたること。なんのためにここまで来たのか。(トイレを見るためです)。
しかし、改装の段階によってはまだWCピクトは残っているかもしれない。あるいは、マンボウもリニューアルされてよりWCピクトとしてパワーアップしている可能性だってある。あるかな。

チケットも買ってしまったことだし、とりあえず中へ。

 

色とりどりの魚たちには目もくれずトイレへと急ぐ


親子連れや恋人たちが楽しげに水槽を覗き込むのを尻目に、険しい表情でトイレを探す二人。べつに尿意をもよおしているわけでもないのに。

そして2階に「安全第一」の文字も鮮やかにシートで囲まれた一角を発見。やはりだめか、とがっかりするぼくをおいてけぼりにしてやおら内部へもぐりこむmacoさん。妙齢の女性がやることじゃない。

 

macoさんのWCピクトへのただならぬ情熱を垣間見た、最初の瞬間

 

ぼくもおそるおそる中へはいる。改装の真っ最中。残念ながらマンボウは影も形もない


何のためらいもなくシートをかき分けWCピクトをめざすmacoさんの姿に感銘を受けたぼくだが、マンボウWCピクトが無くなっていたことに彼女はとてもがっかりしていた。ほとんど涙目だ。そんなにショックを受けなくても。

「macoさんの持っているマンボウWCピクトは貴重な画像になったってことですね」とわけの分からないフォローをするぼく。傍目には普通にワケありのカップルだが、その内実は「マンボウピクトがなかった」である。

 

サンシャイン展望台で沈むふたり。「なかったですね、マンボウ」「なかったですね…」

 

本物のマンボウもWCピクトの代わりにはならない

 

■東京タワー

気を取り直して、もうひとつの見所候補である東京タワーへと向かった。

 

なんか普通にデート中の記念撮影みたいだが、実は二人の頭の中はWCピクトでいっぱいだ


「東京タワーのはどういうものなんですか」
「タワーの形をモチーフにしていながら、なおかつ男女の区別も分かりやすいという、WCピクトの名品です」
「今度はちゃんとあるといいですね」

チケット売り場に行って見ると、嫌な予感。久しぶりに来てみたらなんかこぎれいにリニューアルされている。もしやここのトイレも改装されてしまったなんてことは…

 

東京タワーらしからぬこぎれいなリニューアルに嫌な予感

 

夜景など目もくれずトイレを探す


はやる気持ちをおさえ、WCピクトの名品があるはずの展望台トイレへといそぐ。
上へ上がってみると展望台の雰囲気自体もかなりこぎれいに改装されており、はやくもmacoさんは涙目だ。

泣くな。トイレを信じろ。

 

あった!

 

確かにタワーの形だ。それでいて男女の区別もばっちり。名品の名にふさわしい


「大山さん!ありましたよ!」
「ほんとだ!」
襟首と肩の微妙な造形の違いがしっかりと男女感を表現。確かに良いWCピクトだ。

 

感激のあまりピクトを撫で回すふたり。30代。


トイレも全面的に改装されていたが、ピクトは健在だった。やはり、真の名WCピクトとは時代を超えて受け継がれていくものなのだと思う。

「カッティングシートで貼られていて、手作り感があります。東京タワーのWCピクトには愛を感じますね」とmacoさん。そのはれやかな笑顔は、何かを成し遂げたもののそれだった。

 

だんだんとWCピクトの魅力にはまっていくぼく。あやしい


次ページから、いよいよmacoさんのWCピクトコレクションをご覧いただきます


 

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