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コネタ


コネタ503
 
成田空港へ徒歩で入場できるのか?
この先が空港か……。

成田空港は陸の孤島のようになっていて、歩いて行けない場所だという話を聞いた。(まあ歩いていこうとなんてあまり思わないけど)空港の利用者はどんなに近所の人間でも電車か車・バスで入場するのだ。

本当にそうなんだろうか? 地続きの場所に歩いて行けないなんてなんだか変な話だ。
近所の住民のために徒歩の入り口があって、高島屋やパルコに行く感覚で空港に歩いて行けたら、なんだか楽しい。

そんな折、ライターの住さんがメキシコに行くと聞きつけ、見送りのために徒歩で空港を目指してみる事にしました。

梅田カズヒコ

空港の一駅手前の成田駅から電車を使わず空港に向かう。

「遅れないでね」

前日の電話でwebマスターの林さんとのやりとりはこんな感じだった。

林「明日住さんがメキシコに行くから見送りに行かない?」
梅田「いいですね。時間は何時ですか?」
林「3時に空港で」
梅田「了解です」
林「遅れないでね」
梅田「大丈夫ですよ。でもちょっと試したい事があって。徒歩で行ってみようかと」
林「徒歩?」
梅田「ええ。空港は陸の孤島になっていて、歩いて……(冒頭の文章の内容をそのまま説明)」
林「ふうん。まあ、なんでもいいけど遅れないでね。電車のほうがいいんじゃない?」
梅田「任してください! 住さんを見送ると同時にコネタも一本書けますよ。一石二鳥です」
林「うん、わかった。任せたよ」


バスで空港の近くまで接近する。
バスで見かけた美人。

小春日和の成田を満喫。

そんなわけで待ち合わせの3時の1時間前、2時に成田空港の一駅手前の成田駅に降り立っていた。この日は快晴の小春日和。旅に出るのにこれほどふさわしい日はない。メキシコに行く住さんをうらやみつつ自分もなんだか楽しくなってきた。春の田園地帯は最高に風が気持ちいい!

さっそく歩いて! と思ったものの、一駅と言っても歩いて空港に向かうにはかなり遠い事を知りバスで手前まで向かう事に。
バスは田舎の路線という事で乗客は3,4人だったが、美人の乗客が一人乗っていてなぜかドキドキした。都会で美人を見かけるよりこういう場所で美人を見かけるとなぜか異様に浮き足立つのはなんでだろう? 時計は2時20分。余裕で間にあいそうである。

 

バスでもっとも空港に近いバス停に着いたのが2時半。バス停について最初の風景がこれである。
遠くに見えるJALの文字。開発される前のお台場を見るようだ

だだっぴろい道と永遠に続く塀を見て少々不安になったものの気にせず入り口らしきものを探してみる。タイムリミットは30分だ。
しかし歩けど歩けど入り口がない。そして、30分歩いた僕が見た風景はこれだ。


 

塀の色が変わっただけ……。

と、そこに林さんから電話が。
林「もしもし、今どこに居る?」
梅田「く……空港ですよ
林「僕は今第2ターミナルの搭乗ゲートのそばだけど、梅田君は?」
梅田「ちょっと分かりません。迷ったみたいで
林「空港の中も意外に迷いやすいからね。近くに何が見える?」
梅田「み、みどりの……
林「緑の? 看板かなー。」
梅田「緑の塀です
林「“みどりのへい”? ちょっとわかんないなー。誰かに聞いてみれば?」
梅田「はい」
林「じゃあ待ってるから」

林さんには、結局空港は空港でも、空港の外で迷っている事を言い出せなかった。そして、誰かに道をたずねてみようにも、誰もいない。

誰かいないかな? まわりをキョロキョロする。そして僕がこの場所で初めて見た人間はこんな車を運転していた。


護送車。

そういえばさっきから僕は護送車としかすれ違わない。なんだか不穏な雰囲気だ。下手すれば怪しい人物だという事で職務質問を受けてしまうかもしれない……。

その頃林さんと住さんは……。


 

あの飛行機に住さんが乗ってるかもしれない。申し訳ないのでここから手を振った。

一方こちら梅田は……。

時計を見ると3時20分。すでに20分遅刻だ。というか見送りには行けそうにない。さっきは林さんに言えなかったが社会人として素直に現状を報告しよう。昨日の電話の「遅れないでね」を思い出すと胸がしめつけられるようだ。

梅田「あ、梅田です」
林「あ、どこに居るの? 住さんもう行っちゃうよ」
梅田「それなんですが、どうも行けないみたいです」
林「え、なんで? 空港にいるんでしょ」
梅田「空港が見えてる場所にいるんですけど、空港に到着できなくて」
林「え?」
梅田「たぶん展望室から僕が遠くに見えるかもしれません」
状況を察した林さんは展望室にのぼって僕を探してくれた。


空港内の林さんのカメラから。

おそらくこの塀の向こうのどこかに僕がいます。
どこだ?

林「近くに何がある?」
梅田「ずっと道路と塀ばっかです」
林「この辺かなぁ、(パシャッ!)このあたりかなぁ(パシャッ!←シャッターを切る音)」
梅田「今日はすみません」
林「いえいえ、気をつけてね。あと、予報では雨降るみたいだから。早めに屋根のあるところに行ったほうがいいよ」

林さんは終始優しく対応してくれた。こんな時に優しくされるとよけいに申し訳ない気分になる。ほんのわずか数時間前が夢のようだ。なんで徒歩で行こうなんて思ったんだろう。
とりあえず徒歩での入場をあきらめバス停でバスを待つ事に。しかし、本当の不幸はこれからだった。


バスの時刻表。1時間に1本。しかも4時で終わりだ。もう終バスが行ったあとだった。
今にも雨が降り出しそうな雰囲気。
何も書いていない標識。なんだか世界の終わりを歩いているような気分だ。
雨が降ってきた。この時はまじでへこんでます。メガネもずれずれ、情けない表情だ。
僕はいったいどこに居るんだ?
だんだんとあたりが暗くなってきた。

もうこのままのたれ死ぬんじゃないか、と思ったその時!

都会育ちのもやしっ子である僕はこういった何もない雰囲気にすごく弱い。心細くやるせない気分になってくる。もうこのまま僕はこの地で歩き疲れて死ぬんじゃないか、とさえ思えてくる。そのとき……


駅だー!! 芝山鉄道だー!
駅を見つけた瞬間の僕。うれしい表情というよりは驚きと安堵の表情が混ざった複雑な表情です。

まとめ
・空港に徒歩で行こうなんて思わないこと。
・見送りがある場合は素直に電車か車で行きましょう

もうそれぐらいしか書くことないっすよ……。


とは言ったものの、自主制作映画の撮影場所としてはいいかもしれません。比較的行きやすい場所にあるのに僻地のような絵が撮れます。

 

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