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コネタ


コネタ518
 
プロの心理療法士に心理テストとカウンセリングを受けてみた
心理療法の秘密に迫ります

プロの心理療法士として働いている友人がいる。

ただ、心理療法士というのは今ひとつよく分からない仕事である。「あの人たち、一体どんなことやってんの?」「カウンセリングって何するわけ?」という疑問もときおり耳にする。

そこで今回は、心理療法士の謎に迫るべく、プロとして働いている友人Aさん(仮名)にインタビューしてみました。後半は、実際に心理テスト&カウンセリングを受けてみた体験レポートも掲載しています。

Aさんのプロフィールは下記の通り

  • 30代女性(既婚)。
  • 関西在住。
  • 週に2日、総合病院の精神神経科に心理療法士として勤務。
  • 週に1日、某中学校にスクールカウンセラーとして勤務。
  • 本名と顔写真はNG(なのでモザイクを入れてます)。
  • 趣味は飲酒。

なお、本文中の「赤文字」はAさんのセリフ、「青文字」はぼくのセリフです。

(text by ステッグマイヤー名倉

街中で堂々と白衣姿
白衣姿でAさん登場

今回取材をお願いしたAさんには、あらかじめお願いしてあったのだった。

「仕事してるときの格好で来てほしいんだけどいい?」
「えーっ、白衣だよ。恥ずかしいよ」
「白衣で来てくれたら飲み代おごるし」
「うーん…。分かった、着てくるわ」

そして当日、約束どおり白衣を着て登場してくれたのでした。

「遅れてごめーん!」
場違いな白衣姿だというのに、全く物怖じせず行動するAさん。それどころかさらに…

「ねえねえ、せっかく京都まで出てきたんだし、ちょっとデパート寄ってもいい?」
「え? いや、ぼくは構わないけど…」
「デパ地下で何か買っていくわ」
「ど、どうぞどうぞ」

のっけから豪快な人である。こういう勇気はぼくも見習いたいところだ。

白衣のままデパートに闖入するAさん
デリの惣菜コーナーを物色。まるで衛生検査の担当者みたいです。

 

さらに薬局にも立ち寄る
居酒屋に向かう道すがら

通りがかった薬局にも立ち寄るAさん。

「あ、この洗剤安いわ!」
「そんなの地元で買いなよ」
「そうだ。今日は飲むし二日酔いのクスリも買っておかなくちゃね」
「……」

白衣姿で薬局をウロつくAさん、どうみても薬剤師にしか見えません。

薬局の店員はただポカーンと。

 

ビールで乾杯!

居酒屋に到着

座敷席にてインタビュー開始。とりあえずはビールで乾杯する。

当然ながらAさんはずっと白衣姿である。

「ところで素朴な疑問だけどさ。心理療法士ってなんで白衣着るわけ?」
「そうやねえ…。まあ病院のルールってとこかな」
「でも医者とか看護師と違って、血が飛んできたりはしないんでしょ」
「そりゃそうだけど。でも、白衣があったほうが患者さんとも距離もとれるからね」
「ジャージの上に白衣着たりはしないの?」
「しません!」 

 

ウコン飲みながらビール
とりあえず基本的な質問から

「じゃあ色々聞いていきますよ」
「うん、なんでもいいよ」
「えーと、まずは心理療法士と精神科医の違いについて。…これ、ぼくは知ってるけど、よく分からないって人が多いみたいだし」
「OK。精神科医と違って、心理療法士は診断を下せないし、クスリも処方できない。給料も精神科医の半分以下」
「なるほど。ちなみに給料ってどのくらいなの?」
「スクールカウンセラーは時給5200円。病院は時給2000円」
「ふうん、結構いいじゃん」
「でも、どちらも非常勤だし。スクールカウンセラーは年間35回までって決まってるし。厳しいよ現実は」
「カウンセリング受けようと思ったら値段どのくらいかかんの?」
「医療機関なら無料のとこもあるけど、だいたい一回5千円くらいかな」

「そうかァ。ところでカウンセリング中とかに、オナラしたくなったらどうするわけ?」
「そういうのは事前にちゃんとしとくよ。…でも、予約が入ってないときにオナラこいてたら、飛び入りの患者さんが来てあせったことはある」
「そのときはどうしたの?」
「アロマテラピーでもしましょうか? って言って、お香でごまかした」(笑)

心理療法士もいろいろ大変である。
 

 

料理も到着しつつ
失礼な質問をさらに続ける

「カウンセリング中に眠くなったりすることはない?」
「それはあるよ。二日酔いの朝とか。机の下で自分の手を思い切りつねったりして乗り切ってる」
「途中であくびしちゃったらマズそうだよね。患者さんがトラウマ経験とか告白してる最中にあくびしたらズッコケるだろうねえ」
「確かにねえ…。あくびは我慢するけど、うまくかみ殺したつもりが、ちょっと涙出ちゃったことはあるよ」
「それ、やばいんじゃないの」
「つい涙ぐんでしまったってコトにしてごまかしたけど」
「なるほどねー。うまいね」
「ただ、そのとき患者さん、最近食べすぎちゃって困るって話してたのね。急に私が涙ぐんだもんだから、相手のほうが困惑してたかも」
「アハハ、そりゃそうだ」
「ま、だからこの仕事、体調管理には気を使うかもね」
「ぜんぜん治らない患者さんはどうするの?」
「そりゃあ、しょうがないでしょう。最近、自分は神社みたいな存在だと思うことにしてる。治らなくても相手がお参りしてくれるうちは話聞 かせてもらうし」
 

 

資格証明書
職場で使っているグッズ拝見

話を聞くだけでは実情が分からないとか思い、仕事中に使っているグッズを持ってきてもらったのだった。

まずは心理療法士の資格証明書。

「ふーん、正式には臨床心理士っていうのな」
「心理職にはいろんな資格があるんよ。認定心理士とか医療心理士とか10種類以上あるんじゃないかなあ」
「Aさんがこの資格を選んだのはどうして?」
「いちばん世間で通用してるからっていうか…」
「そうなんだ」
「どれも国家資格じゃないから立場は弱いんだけどね」
「国家資格じゃなかったら何なわけ?」
「学会の認定資格っていうのかねえ。ま、華道の免状みたいなモンかな」

ちなみに現在、この資格は、指定された心理学系の大学院を出ないと取れないそうです。  

Aさんが使っている職場グッズたち。
次に見せてくれたのは文房具一式。
  • バインダー
  • 筆記用具類
  • 修正液
  • ホッチキス
  • ハサミ
  • 彫刻刀

バインダーと筆記用具は、患者さん(or 生徒さん)の話をメモするため。修正液は主治医への報告書を訂正するためとのこと。

なお、カルテに修正液を使うのは厳禁なんだそうで(診療記録の改竄にあたる)。カルテに記入するとき間違えたら、二本線で修正するのが鉄則らしい。ふーん。

「ところで彫刻刀は何に使うの?」
「消しゴムでハンコ作るが趣味でねえ」
「仕事中にそんなことやってるワケ!?」
「い、いや。ごくたまにだよ!!」
 

色鉛筆&色紙
中学のスクールカウンセリングでは、おりがみと色鉛筆もよく使うと話すAさん。

自分の気持ちを言葉にするのが苦手な生徒さんでも、おりがみ&色鉛筆で絵を描いてもらったりすると、感情が豊かに表現されることがあるんだとか。

また、絵に表現した気持ちを改めて眺めることには、自分を客観視するという治療的意義もあるんだそうで。

ぼくも上司との会話には、おりがみ&色鉛筆を使いたいところです。

生徒の名前の下にイラスト。
ノートも少しだけ拝見させてもらった。

「あ、中身は個人情報だから見ちゃダメだよ。インデックスだけね」

インデックスには生徒さんの苗字と妙なイラストが。ギターや顔、ネコなどなど。

「このイラストは何なの?」
「担当してる生徒のイメージをイラストにしてるの。覚えやすいように」
「アハハ、いいよねそれ。ぼくも顧客の顔と名前を一致させるのによくやる」
「歳のせいか名前がなかなか覚えられなくてねえ」
「ところで、ぼくをイラストにしたら何になる?」
「ひょうたん」

そうですか。邪悪なひょうたんを目指します。
 

何かと思えばサインの練習。

「このページなら見てもいいよ」とAさんが言うので、見せてもらったところ。

用紙一面にサインの練習が並んでいた。

「サインの練習ってするよね?」

ぼくも中学時代はよく練習したけれど…。

心理療法士にはこういう伸びらかな人が向いているのかもしれませんな。
 

 

「ここに木の絵を描いてください」
心理テストをお願いしてみる

職場では心理テストも行うことがあるというので訊ねてみた。

「せっかくだから何か心理テストやってよ」
「えーっ。検査道具持ってきてないから無理だよー」
「簡単なのでいいからさ。ほら、木の絵を描くやつとかあるじゃん」
「ああ、バウムテストね。うーん、まァあれならやれるけど…」
「じゃあお願い!」
「名倉くんだって大学で心理学の勉強してたんでしょ。自分で勉強して解釈しなよ」
「自分でやってもつまらないしさ」
「分かったよ。じゃあ…。ここに木の絵を描いてください」

…というわけで急きょ、バウムテストをやってもらうことになったのでした。

とりあえず描いてみる。
「ところでコレは何?」
「…覚え書き。資料のコピーとお金の振込みと」
 

 

なにも考えず描いた木
バウムテストその1

なにも考えずに描いてみた木がこれであります。

「どう? 解釈教えてよ」
「そうだねえ…。全体にバランスが取れてるっていうか、しっかりしてるっていうか。うん、ちゃんとしてるよ」
「えっ!? それだけ??」
「まだ言わなきゃダメ? うーん。まあ、攻撃性とかも持ってるけど、うまく適応できる力がありそっていうか」
「もうすこし何かないの?」
「正直よく分からないんだよねー。あ、でもちょっと一匹狼っぽいところがあるかも。あと、ちょっと寂しげかも」
「なるほどねえ。でも、そういうのって、どんな根拠から言えるワケ?」
「ぐっ…。まあその…教科書通りの解釈と、あと私の直感、かな」
「直感かよー。じゃあ、同じ木でも心理療法士によって解釈が異なるわけ? それってどうなの?」
「ほら、そういうとこが攻撃的」(笑)
「むーっ」

 

奇を衒って描いてみた
バウムテストその2

なんだか煙に巻かれたような感じだったので、もう一枚描かせてもらった。

今度はAさんを困らせるべく、わざと奇を衒って、妙な木を描いてみることにした。さあて、どんな解釈が下されるんだろう?

「どやっ! ハイ解釈して!!」
「……ええと、うん、おもしろい絵だね」
「で、解釈は? どんな性格?」
「まァ…これだけ見ると適応できてなさそうだけど。でも、孤独っぽいけど、自分で楽しんでそうな感じだね」
「もっと他にないの?」
「うーん。あとは…。柔らかい気持ちを持ってるんだけど、持ってない風に振舞ってるような印象かな」
「ほんまかいな」
「描線は硬いけど、全体的にはひょうきんな雰囲気だし、愛嬌もあるし」
「こんなのでホントに性格が分かんの? だって1枚目の絵 と違う解釈だしさあ」
「っていうか、平凡って言われたら、むきになって奇を衒いたくなるのが名倉くんの性格なんじゃないの?」

きーっ。やるんじゃなかった。

 

 

「えー、ホントにやんの?」
カウンセリングを受けてみる

カウンセリングって実際はどんなものなのか?

…という疑問を解決するべく、「ぼくが患者としてカウンセリングの門を叩いたらどういう風なやりとりになるのか」を再現してもらいました。

「じゃ、今からカウンセリングを再現するってことで」
「…ホントは居酒屋でやることじゃなんだけどね。あと知り合いには基本的にはしないんだけど」
「まあ、あくまで再現ドラマってことで。ぼくも症状とか誇張して相談するし」
「はいはい」

 

カウンセリングを受けてみる(なぜか揉み手)

【カウンセリング開始】

「あ、予約していた名倉です。よろしくお願いします」
「はじめまして。担当の○○です。よろしくお願いします。さて、今日はどういったことで?」
「あのー、ぼく、手を洗いすぎてしまうんです」
「ふんふん。手を洗いすぎる…どのへんで違和感を?」
「トイレの度に手洗いしますし」
「それはしますよね?」
「外から帰宅するたびにハンドソープで洗っちゃったり」
「はァー。外から帰宅するたびにね。で、今いちばん困ってるのは?」
「手を洗うことばかりに時間を費やすなんて莫迦らしいなあって」
「なるほど。手を洗っている一方で、自分でもどこか莫迦らしいって気もするんですね」

「ど、ど、どうすればいいんですか先生っ!!」
「キャーッ! な、何すんのよっ!?」

「…ど、ど、どうすればいいんですか先生っ! はうあっ!!」(身を乗り出す)
「キャーッ! な、何すんのよっ!?」
「ごめんごめん。いや、申し訳ありません先生。つい気が動転して」
「もー。びっくりさせないでよね」
「で、どうすればいいんでしょう?」
「…コホン。えー、具体的にはどういう風になりたいと?」
「必要以上に手を洗わずに済むようになりたいです」
「もう少し詳しくお聞きしないと断定はできないんですが、あなたの症状は強迫神経症の可能性があります。その場合、行動療法という手法が有効とされてますし、7割くらいが治癒すると言われています」
「そうなんですか」
「そうでない場合、他の治療法も提供できますし、別の医療機関を紹介することもできます。どうかご安心ください。今後さらに詳しく聞かせていただきながら、適切な治療法を行っていきたいと思います」
「はい。あ、もうこのへんでいいよ」
 

撮られるのを異様にいやがっていた、撮影係のMさん

カウンセリングを受けてみた感想は、「無条件に話を聞いてもらえるのって気持ちいいね」でした。

他人の手洗い話なんてどうでもいいはずなんだけど、それを全く感じさせない。「興味を持って聞いてくれてるんだ」と思うと、どんどん喋りたくなってきて、そのうち自分の話が整理されてくるような感覚に。

話を聞くプロなんでしょうねえ。

聞くことの大切さが何となく分かったような気がしたひととき。

すっかり酔っ払ったAさん

というわけで心理療法士の実情、いかがだったでしょうか?

取材の後半は当然のように飲み会となり、焼酎の応酬合戦のすえ全員グニャグニャになってしまったのでありました。

何を喋っていたのかよく憶えてませんが、「ウンコとかりんとうはどう似ているか」について30分ほど激論を交わしたのが印象に残っています。

「最後に、みなさんに何か一言お願いします」
「カウンセリングって恐いとこじゃないから気軽に来てねー。あ、追加でビールと焼酎お湯割!! あとコノワタひとつ!」


 

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