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コネタ


コネタ551
 
掘りごたつの不動産屋

おばあちゃんの原宿、といわれて久しい街、東京は巣鴨。情緒ある商店街がにぎやかに伸び、そこに住みたい人も多くいらっしゃるのでは、と思う。

そんな諸兄に一言贈ろう。家を探すなら、とげぬき地蔵をちょっと越えたあたりの不動産屋に行ってみな。

それこそまさに、「巣鴨の」不動産屋さん。なぜって店が、

「掘りごたつ」

だからさ。

乙幡 啓子

別の取材で店の前を通りかかり、数歩通り過ぎてから引き返し店の中をのぞいてみた。こんな不動産仲介業、見たことない。



さすが、看板のフォントも勘亭流。そして店内は・・・。



総・掘りごたつ。

 

あらびっくり。たまげたわー。

普通、掘りごたつ形式の店といえば、居酒屋など飲食業くらいしか思いつかない。居酒屋で掘りごたつの座敷に通されれば、その居心地のよさに長っ尻になってしまい、宴会の最後はグダグダ、誰がいくら払ったかわからない。

いや、宴会の話はどうでもいい。

不動産屋もお客さんの細かな要望を聞くのが仕事だから、ゆっくり話を聞くにはこういう形式もありかもしれない。さっそくあがらしてもらいやす。



「ここで はきものを ぬいでください」



繰り返すが、掘りごたつ!


その名も「リック住宅センター 巣鴨シニア館」だ。シさぞやニアの方が大勢ここを目指して来るのだろうと思いきや・・・「当初ここに店を開いたときは、45歳以上のお客さん限定にしていたんですが、今はこの地域限定で探しにくる若い人が結構いますね」とのこと。

それでも、お客さんの半数以上は40代以上ということで、かなり他店と毛色は違うかもしれない。求められる物件も、「1階・平屋・古くてもかまわない」だそうで、年配層を匂わせるリクエスト内容である。



奥のオフィスを隠す、食卓と茶箪笥、そして冷蔵庫。家か。


引き続き、若き取締役・大越さんに話を聞く。やはり掘りごたつは話題になりますか?
「インパクトはあるみたいですね。最初は、飲食店と間違って入ってくる人もいました。でも実際は、お年寄りには抵抗はあるみたいで・・・」

え、なぜですか?
「やはり、靴を脱いであがるのがおっくうみたいで・・・」

ガクッ。でも確かに、「よーいしょどっこーいしょ!」と上がり框に腰を下ろして、靴を脱いで、というのは、膝を悪くしたりしていたらちょっと上がりづらいかも。



上がり框(かまち)でよっこいしょ。


なので、最初から最後まで框に腰掛けて済ませてしまうお客さんもいらっしゃるそうだ。

そういえば私の祖父の家が酒屋で、昔の田舎の酒屋は皆、店先でコップについで1杯いくらで売って、客はそのまま框に腰掛けて飲んでいったものだった。そんなノリを思い出した。

「お客さんの細かな要望を聞くのが仕事」とはいうものの、ご年配の方の中には、たまに仕事とまったく関係ない話をしに来る人もいるそうだ。やっぱり。

でも掘りごたつで迎えられると、お年寄りじゃなくても関係ない話して長居したくなるかもしれない。だって最後に頼んだツマミがいつ出てくるかわからないじゃないか!



「東急沿線でぇ、シキレイ1・1でぇ、駅から5分くらいでぇ」と言ってるあいだもくつろいじゃってる。



ストーブもございます。


でもここだけの話、お店の皆さんはこのオフィスどう思っているのだろう。

「正直、通常のオフィスとしては使いにくい」そうです!あら!



床に座布団、箱ティッシュ。韓国料理屋っぽい気がする。

お年寄り向けの賃貸物件は諸々の事情により、なかなか増えないそうだ。物件提供してくださるオーナーさんがいらっしゃいましたらどうか問い合わせて欲しいとのこと。都内全域カバーしております。

リック住宅センター 巣鴨シニア館
豊島区巣鴨4-22-4 ヴェッセル巣鴨1F
03-3576-6668

https://www.ric-gr.co.jp


 

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