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コネタ


コネタ639
 
数学の文章題を体当たりで解く
毎分120mで弟を追いかける兄

中学生のころ、数学の文章題が苦手だった。

7%の食塩水500gに水を加えて4%にしたいと思う人は本当にいるのか。
なぜ毎分80mで歩く弟は、毎分120mで追いかけてくる兄を待とうと思わないのか。

だけど、理不尽な設定に疑問を持っていては文章題を解くことはできない。

むしろ積極的にその設定を受け入れて、問題文の通りに実際に行動してみたらどうなるか、やってみた。

(text by 三土たつお

問題

兄は半蔵門からスタートする
800m地点で出発を待つ弟役のN西さん

舞台は皇居外周

というわけで、兄が弟に追いつくまでの時間を求めるというオーソドックスな問題をとりあげてみる。

もちろん、計算で答えを出すようなヤボなことはしない。あくまで実際にやってみて時間を計るのだ。

信号のない皇居外周を舞台に選び、半蔵門を出発点として、桜田門方面に向かって追いかけることにする。なお、兄は弟の忘れたお弁当を届けるために追いかける、という設定を追加してみた。

半蔵門から800mの地点、ちょうど三宅坂の最高裁判所を過ぎたあたりに弟を待機させ、携帯電話で連絡を取り、タイミングを合わせて出発することにする。


 

待ってろよ、弟

ということで、お互いに合図をしていよいよスタート。800mというのは意外と遠くて、半蔵門からは弟の位置はさっぱり見えない。


ぜんぜん見えません

それでも、がんばって追いかけていく。その際の速度は常に一定でなければいけないので、自転車につけた速度計に注意して時速7.2km(=分速120m)を保つようにするのだけど、これがすごく難しい。


上半分が時速。7.2km/hぴったし。
経過時間は2分18秒。


いろいろなものに出会う

最初に弟がいた800m地点を過ぎても、弟の姿はさっぱり見えてこない。そのあいだ、皇居周辺のいろいろなものに出会った。

最高裁判所の脇を通ったり
マラソンランナーに抜かれたり
国会議事堂を振り返ったり
警視庁をながめたり

しかし弟はいない

桜田門をくぐり、内堀通りに入って大手門を過ぎても、弟の姿はいっこうに見えてこない。もしかして弟は道を間違えてるんじゃないのか。ちょっと不安になってきた。

桜田門の向こうにも弟の姿は見えない
すでに10分31秒経過
内堀通りに入ってもまだ見えない


ついに弟を発見

大手門を過ぎ、気象庁の前にさしかかったあたりで、ようやく弟の影が見えてきた。

むむ、もしやあれは・・。
ちょっと拡大。
さらに倍。 弟だ!

この姿は、自転車につけた速度計を見ながら時速4.8km(=分速80m)で進む弟に間違いない。さっきまでは道に迷ってるんじゃないかと思ったけど、どうやら杞憂だったみたい。

よし、いま行くぞ弟よ。



そして感動の再会

ほどなくして平川門付近でついに弟に追いついた。忘れ物のお弁当を渡し、かかった時間を記録する。


ようやく渡せた
お弁当を受け取って喜ぶ弟役のN西さん
かかった時間は26分53秒

というわけで、この問題に対するぼくたちの答えは26分53秒になった。これを、計算で求めた答と比べてみる。

ぜんぜん違う

兄と弟の毎分の速さの差は 120-80 = 40 だから、二人の距離の差は1分ごとに40mずつちぢまっていく。最初の距離の差は800mだったから、それがゼロになるまでの時間は 800/40 = 20分 というのが計算で求まる答えになる。

それに対して今回かかった時間は26分53秒なので、実際には計算よりおよそ7分も遅れたことになる。

これは第一に、たとえ速度計を見ながらとはいえ、常に同じ速度で移動するのはとても難しいということと、第二に、兄が途中で写真を撮りまくっていたために、弟を追いかけるのが遅れた、という二つの原因によるのだろう。

世の中、計算どおりにはいかないものです。

答:ふつうの兄弟は一定の速度で移動しない。


(出典:理社出版「文章問題のにがてな人へ」p.19)


 

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